平成24年度 of アジア諸語を主たる対象にした言語教育法と通言語的学習達成度評価法の総合的研究

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研究計画・方法

平成24年度

I. 研究計画について:

 平成24年度は本課題研究の遂行には、緊急度・重要度を考慮して、以下の優先順で企画し実施する。上記の研究班ごとに設定された研究計画を遂行する。

(1)アジア諸国における外国語教育法・外国語能力評価基準・測定方法に関する調査研究:(A班)
 本研究計画では、上記国際連携研究コンソーシアム(CAASとCAMPUS-Asia)参加大学及びアジアの諸大学で対照言語学的共同研究交流を行うとともに、現地調査により、Webや二次資料の情報では得られない信頼度の高い情報が入手できる。この計画には、アジア諸国の高等教育機関での外国語教育システム立案者や言語教育従事者(教師等)に対する聞き取り調査を含む。これをふまえ、次年度の研究準備が可能となる。
 各国担当者は、学習対象の「英語」(Englishes)及びアジア諸語の教材・シラバス・評価法等の資料を収集し、現場教員・学生のインフォーマントを用いてデータを集める。同様に、アジアにおける日本語教育における評価法の調査を行う。(この総括は、留学生日本語教育センターの藤森らが共同開発したJLスタンダードとの比較研究を行う。)

  藤森(国内外の日本語教育担当・CEFRの適用妥当性研究)、三宅(国内外の中国語教育担当)、南(国内外の韓国語担当:延世大学連携担当)、田原(立命館アジア太平洋大学、ベトナム語担当:ベトナム国家大学ハノイ校、ホーチミン校連携担当)、上田(カンボジア語担当)、野元(マレーシア語担当)、降幡(協力者:インドネシア連携担当)、ウントゥン・ユウォノ(インドネシア大学講師、インドネシア語担当)、岡野(ビルマ語担当)、萬宮(ウルドゥー語担当)、ウイチャイ(タイ語担当)、丹羽(ベンガル語担当)

(2) EU、カナダ、オセアニア圏諸国の外国語能力評価システムの最新動向調査と通言語的透明性の検証:
(B班)
 本研究計画全体の基礎的作業として、現在EUで進められている外国語能力評価基準CEFRの浸透度に関する高等教育機関等での最新の取り組み状況を調査する。中核的メンバーによる先行研究(2つの科研課題研究)を発展的継承しつつ、特に、ボローニャ・プロセス、学習者のモビリティー、単位互換制度上の要請等を要因とする外国語能力評価法の変革をEU委員会関係部局及びフランス国立東洋言語文化学院INALCO(富盛伸夫担当)のほか、複数言語併用大学等で調査する。Can-Do評価法の専門家である分担者根岸は特に英語リスニング評価におけるCEFRの適用可能性を調査研究する。国内調査としては、CEFRに準拠する能力評価基準を適用した大阪大学外国語学部の優れた取り組みを参照例としつつ、他の教育機関においてもCEFR基準の高等教育への適用について検証作業を行う。特に、CEFRに代表されるコミュニケーション達成能力の通言語的尺度と従来の言語構造の学習進度に即した基準との相関を研究する。
この調査結果をA班と共同の研究集会で精査した後、国内外の学会で成果発表を行う。

(3)中等教育及び社会的ニーズに対応した外国語能力到達度評価基準に関する研究: (C班)
 中等・高等教育機関でのアジア諸語を含む外国語科目の単位認定・教材・学習への活用実態などについて、研究班を組織して調査し、問題点を洗い出す。到達度を明記した学習者ポートフォリオの実施例を日本(東京外国語大学を含む)と海外の連携機関とで調査し、学習者の意欲、動機付け、到達度への影響などを調査する。また、シラバスへの明示など、可視化した評価基準の情報提示の方法などの調査研究を、分担して行う。

 並行して、EUが公開している学生・社会人を対象にしたCEFR準拠のオンライン言語能力自己評価システム(DIALANG)を活用し、CEFRの達成度評価基準と、EU諸国で実施されている語学能力試験における評価基準のアジア諸語への適用を検討する。東京外国語大学21世紀COEの成果として公開している「TUFS言語モジュール」の通言語的学習教材を活用し、多様な社会的ニーズに対応した学習目標と到達レベルの設定についても柔軟なモデルを開発する。

  まず平成24年度は、非公式教育サービス部門である語学学校や外国語検定試験の能力評価基準の実際を把握する。アジア諸語(中国語、韓国語、インドネシア語、タイ語など)を含む外国語能力資格試験について、具体的かつ網羅的に検証し、級別到達度評価の根拠、音声・文法・語彙項目ごとの学習進度との連関を精査し、この結果を、次年度の計画への基礎資料とする。調査の中間まとめができ次第、研究会や国内外の学会で成果発表を行う。

 担当者:富盛(生涯教育・非公式教育サービスにおける到達度評価尺度の研究担当)、
     山崎(協力者:フランス語能力検定試験と中等教育との研究連携担当)

II. 研究方法について:

(1) 研究計画に対応した3つの研究班を組織し、各分担者はより関係の深い研究領域において、計画遂行に向けて協働する。詳細は、上記の【研究体制】を参照。

(2) 基礎的現地調査の実施(必要に応じて研究協力者に依頼する):
 上記研究計画に沿って、研究連携関係諸国の大学等に研究分担者を派遣し、言語教育に関する情報収集と臨地聴き取り調査を行う。アジア諸国は教育制度が多様であるために、単純な地域グループで分割することはできない。このため、各国事情に対応したきめ細かな調査計画を立てる必要がある。また、政治的事情もあり、情報提供元の個人情報や調査者の情報の管理には細心の注意が必要である。この上で、

・平成24年度は、中国、韓国、ベトナム他、能力到達度評価方法を実施している機関に現地調査を行う。この調査結果を、研究集会や国内外の学会で成果発表を行い共有する。

・万一、分担者の事情や調査地の国情等により調査派遣の計画に変更がある場合には、全員の合意のもとで、調査対象の大学等を変更する。しかし、計画全体に延滞をきたさないように配慮する。総括責任は代表者が負う。

(3) 外国語能力評価方法とGPAの導入及びポートフォリオの授業等への活用及びその効果について、国内の国立大学法人、私立大学等に分担者・協力者を派遣し、聞き取り調査を行う。現地調査が不可能であった機関には通信アンケート調査を行う。並行して、多言語間コミュニケーション論・社会言語学・言語教育政策・言語能力評価法・語用論・談話分析などの関連分野で研究する国内の研究者に研究集会参加を呼びかけて研究の連携をはかるとともに、必要に応じて共同研究の企画を検討する。(根岸、成田、高垣、川上、協力者山崎)

(4) 国際研究連携組織 CAAS、CAMPUS-Asiaコンソーシアム等の参加大学を中心に、国際研究集会の企画・準備を始める。(富盛、拝田担当)