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の本
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について

ギニア湾の悪魔ーキリスト教系新宗教をめぐる情動と憑依の民族誌

刊行
著者等
村津 蘭
出版社
世界思想社

内容の紹介

――序章より 「悪魔」とは、多くの場合、アフリカの在来の神格や霊的存在、または妖術師である。…… 人々に憑依してその姿を現し、現実へと介入してくる。その中で人々の身体は、悲鳴を上げ、汗を散らし、目に見えない鞭で打たれ、涙を流す。手足を震わせ、身体を反らして、叫び、倒れ込む。立って走り、暴れつくした後に、床に寝そべり、うめき声を上げる。 それは、「人々は悪魔や妖術師を信じている」という記述にはとても収まらない、情動や身体など様々なものが絡まり合う中で起こっている出来事だ。神や悪魔といった人ならざるものたちが、いかに人々の間に立ち現れ、複雑に呼応しながら生が紡がれるのか。本書は、出来事が生起する場を起点として、このような問いを探究していくものである。

著者のコメント

村津 蘭(現代アフリカ地域研究センター/特定研究員)

西アフリカ、ベナンで急速に広まったキリスト教系の宗教を対象に した民族誌です。教会の主眼は「悪魔と闘う」 ことにあるのですが、それはこの教会に限ったことではなく、 1980年代以降、アフリカで急速に拡大したペンテコステ・カリ スマ系と呼ばれる教会に共通する主張です。ですので、対象として は西アフリカ・ベナンの一の教会に焦点をあてていますが、それだ けではなく近年のアフリカのキリスト教の動きについて理解を深め ることを本では目指しています。この本は、学術的とされる記述・ 分析がメインになっていますが、そこから零れ落ちる、しかしフィ ールドの経験を描き出すためには不可欠であるイメージや感情の震 えを帯びた言葉、映像を織り交ぜながら、マルチモーダルな民族誌 を編むことを試みています。一見、ただ途方もない話でも、実は人 々の生活や人生の切実な問題と深く絡まり合っている、そうしたフ ィールドのあり様を様々なレイヤーで伝えることができれば幸いで す。


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