本研究の学術的な特色・独創的な点及び予想される結果と意義 of EUおよび日本の高等教育における外国語教育政策と言語能力評価システムの総合的研究


3. 本研究の学術的な特色・独創的な点及び予想される結果と意義

 本研究の第1の研究対象地域は、2011年以降第2期のボローニャ・プロセスへと展開し、多言語・多言語・多文化社会の中で高等教育の統合を進めつつあるEU諸国である。EUでは言語政策・外国語教育政策として史上初で最大規模の試みが構想され、すでに通算15年以上も実施への施策がとられている。言語教育分野でこのような大規模な実験をしている例はEU諸国を除いて存在しない。EUという国家・言語文化の枠を超えた統合体形成の成否は、教育の再編、とりわけ言語教育政策の実効性にかかっている。本研究組織は、EU各地域専門の言語研究者であるとともに外国語の教育現場に従事し、同じ問題意識を共有する教員を中心として、学外の研究分担者・協力者を加えて本課題に特化している。

 本研究ではボローニャ・プロセスとの整合性からくる外国語教育の変格を、上記国際研究連携の枠組みであるCAAS参加大学であるSOAS、INALCO、ライデン大学文学部、およびカナダ等の複数言語併用大学等で調査する。特に、外国語教育制度と教育方法の研究に向け、言語能力評価基準の策定(カリキュラム・教材を含む)のきめの細かな現地調査を行うことで、EUを中心とする高等教育機関での施策と、日本の高等教育機関での現実との対照研究への発展させることができる。この結果を、研究会や国内外の学会で成果発表を行い共有する方針である。

 外国語能力評価方法の研究対象地域として、EU諸国を中核として、スラブ語圏(ロシア語等)・カナダ他の地域の高等教育機関を包括しうる柔軟な研究組織を持っている。また、通言語的透明性の検証のため、上記CAASの協力に加え、アジア諸語教育の専門家を適宜共同研究に迎え、欧米言語以外の諸言語の教育法の改善と共通的評価システムの開発に進展する可能性を持つ。この将来の展開が期待される機動性は、本研究グループの特色である。

 EUの言語教育政策・能力評価方法との対照研究から日本における言語教育政策への寄与:

 (1) 日本における中等・高等教育機関の外国語教育の改善は緊急の課題である。本研究は成果の一環として、EUの高等教育機関の外国語教育施策とその実効性を検証することにより、日本での言語教育が抱えている問題に対して信頼できるデータ提供と助言的機能を持ち、日本の外国語教育の改善に寄与しうる。

 (2) 世界の到達度評価方法との対照研究により、日本の外国語検定試験(英検や仏検等)の能力評価システムとしての実効性の検証に方法論的な根拠をもち、より透明性と通言語的共通性の高い外国語能力検定制度への改善に向け貢献できりう。また、これにより、日本の高等教育機関での信頼度の高い多様な活用と、中等・高等教育の外国語教育における連携の促進が期待できる。


「2. 研究期間内に何をどこまで明らかにしようとするのか」へ


「1. 研究の学術的背景」へ