学部長メッセージ

真島 一郎

国際社会学部長

真島 一郎

 「わたしは東京外国語大学の学生です。国際社会について学んでいます」-そうした自己紹介を耳にしたとき、おや? と首をかしげる人は、まずいないでしょう。世界に開かれた伝統を誇る東京外国語大学であるだけに、「東京外大」と「国際社会」のキーワードは、ごく自然に繋がるように思えるからです。ただし、一見自明にみえるこの繋がりにこそ、わたしたち国際社会学部が掲げる教育方針のきわだった特長、そして東京外国語大学の一学部ならではの、力の源泉があるものと考えています。

 国際社会の動向に関心をもつみなさんは、世界各地で領土、資源、宗教や民族アイデンティティなどをめぐって頻発する社会対立や紛争に、あるいは経済移民、難民、貧困地域などの人々がさらされている生の苛酷さや、一部地域で組織的に展開される性暴力・児童労働の実態に、心を深く傷めているかもしれません。メディアと市場、平和構築と開発、民主主義とポピュリズムの関わりや、生物多様性の保全、性的少数者の人権をめぐる国内外の法整備が今後どのように進展するかを、真剣に考えようとしている人もいるでしょう。現代世界が直面するこれらいずれの問題に向きあうにせよ、二つの準備作業が必要です。

 第一に、対象地域に暮らす人びとの言語を精確に理解し、その地域がいかなる歴史的・文化的背景を有し、人びとがどのような価値観をもって生を営んできたかを、あらかじめ把握しておく必要があります。表面をなぞった現地情報や片言の言語能力では、地域の人びとの声を自分の耳で聴きとどけ、その場で率直に思いを交わしあうことなどできないからです。

 第二に、世界のさまざまな地域で生起している現象の間に共通性や関連性を見いだし、これを国際社会の、さらには地球規模の課題、グローバル・イシューとして位置づけながら、問題の核心に切り込んでいくための理論的な準備も欠かせません。それは、社会科学と関連諸分野の専門的な方法論を、段階を追って修得していく作業にあたります。

 このうち前者の言語・地域研究については、みなさんが専攻する言語で「読み、書き、話す」トレーニングを徹底させながら、専攻地域の歴史や文化にかんする専門的な知識を獲得するうえで、国内でも群を抜いた教育環境が本学部には整っています。後者の学術的な方法論については、政治学、国際関係論、国際協力論、経済学、法学をはじめ、歴史学、社会学、文化人類学、教育学、思想史など、人文社会系の各分野で、世界の地域情勢に密着しながら研究の先端を走る約60名の教員が、世界の現在(いま)に向きあうみなさんの実践的な分析力と想像力に磨きをかける態勢をとっています。

 言語・歴史・文化の森に深く分け入りながら、同時に個々の地域を超えた「世界」や「人間」の理論的な視野を拓いていくことは、口でいうほど容易ではありません。卒業後は国際社会を舞台に、すぐれた職業人として活躍したいと考えているみなさんに、この双方が偏りなく達成される環境をしっかりと提供していくことこそ、国際社会学部が掲げる教育方針の根幹にある目標なのです。

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