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2021年度世界史セミナーのお知らせ 終了しました!

東京外国語大学 夏期世界史セミナー ―世界史の最前線XIII―

(海外事情研究所主催・高大連携事業)

開催日時:2021年8月2日(月)・3日(火) 両日とも午前・午後の予定

実施方式:オンライン方式(Zoom Webinarを利用してのリアルタイム配信)
(※なお、セミナー実施後に講義動画を限定的に配信する予定です。)

参加費:無料

申し込み: こちらからお申し込みください。
(Google Formが開きます。)

プログラム(※変更になる可能性があります。)

8月2日(月)
9:20 開会の挨拶(海外事情研究所所長 岩崎稔)
9:30~10:45 講義1 第二次世界大戦・イタリアの戦後処理と歴史認識(小田原琳)
10:55~12:10 講義2 中世ヨーロッパにおける土地制度を再考する(千葉敏之)
12:10~13:30 昼休み
13:30~14:45 講義3 「東ヨーロッパ」再考(篠原琢)
14:55~16:10 講義4 歴史学における動物的転回(伊東剛史)

8月3日(火)
09:30~10:45 講義5 ロシア革命とモンゴル(青木雅浩)
10:55~12:10 講義6 歴史画の読み方(久米順子)
12:10~13:30 昼休み
13:30~14:45 講義7 中央アジアのイスラームと聖者信仰(木村暁)
14:55~16:10 講義8 高大連携による歴史教育の課題と大学入試―「歴史総合」を手がかりに―(鈴木茂)

参加条件

日程 2021年8月2日(月)3日(火)(2日間)

オンライン・セミナー(zoom webinar)として開催

対象
1.高等学校・予備校の世界史担当教員
2.世界史教育・研究に携わる出版関係者
3.教員免許取得を目指す本学の大学院生

受講料 無料

申し込み方法: こちらからお申し込みください。new!!
(Google Formが開きます。)

講義概要

小田原琳:第二次世界大戦・イタリアの戦後処理と歴史認識
 第二次世界大戦において、イタリアは三国同盟のなかでいち早く、1943年9月に連合軍に対して無条件降伏した。しかしイタリア国民の期待にもかかわらず、戦争は終わらず、イタリアは連合国の 「共同参戦国」として、ドイツ軍に宣戦布告し、戦争は1945年4月末まで継続された。一夜を境にした敵と味方の逆転は、イタリアにおけるファシズム−ナチズムからの「自力解放」という状況をつ くる一方、戦後処理にも大きな影響を与えた。世界史的には、ファシズム諸国の敗北から戦後の新しい国際秩序の形成へと至る時期を、イタリアはどのように経験したのだろうか。イタリアの自己 認識と、国際社会のイタリア認識を検討し、その固有性と比較可能性を考えたい。

千葉敏之:中世ヨーロッパにおける土地制度を再考する
 世界史教育においては現在でもなお、中世ヨーロッパの社会は封建制(封建社会)の概念を用いて説明される。しかし、国際的な中世史研究の現場では、すでに20年以上も前から封建制概念の見直しや 撤廃が叫ばれ、撤廃論への賛否は別として、同概念を中世社会の説明に利用する研究者は激減している。本講義では、世界史における封建制の成り立ちについて短く回顧したのち、その原点に立ち返り、 土地を媒介として人と人、組織と組織とが相互に関係を結ぶその形式について考えてみたい。中世の都市ローマにおける土地の賃貸、クリュニー修道院における土地の聖ペトロへの寄進など、具体的な事 例に即して検証しつつ、土地が結ぶ豊かな中世ヨーロッパ社会の紐帯の実態に迫りたい。

篠原琢:「東ヨーロッパ」再考
 ヨーロッパで「現存社会主義」体制が崩壊してすでに30年以上となる。社会主義体制崩壊前後から、社会主義圏の異論派にオーストリアの知識人を交えて「中央ヨーロッパ」論が盛んに論じられた。現在、 「中央ヨーロッパ」という地域概念は、学術制度、国際関係のなかにも充分に定着しているように思える。ところが日本の高校世界史では叙述のなかに「東欧」概念が構造的に組み込まれている。まずその 構成を批判的に検討し、「中央ヨーロッパ」を組み込んだ場合、どのようなヨーロッパ史叙述が可能か提示する。さらに「東ヨーロッパ」という概念の起源を考え、なぜ生命力を持っているのか検討したい。

伊東剛史:歴史学における動物的転回
 近年,とくに英語圏のアカデミアでは動物論的転回(animal turn)という認識論的,方法論的転回に関心が寄せられている.人文学・社会科学における人間中心主義(anthropocentrism)を再検討し, 各学問領域の研究対象の中に動物という存在や,あるいは動物の主体性(agency)をどのように組み込むことができるのかが,真剣に議論されている.その動きは,代替肉やエコレザーが推奨されるエ シカル消費の広がりとも無関係ではない.こうしたアカデミア内外の動向は,歴史研究にも影響を与えている.この報告では,報告者がこれまで取り組んできた動物園史研究を事例として,動物論的転回 による「動物史」(animal history)研究の隆盛を,帝国主義とナショナリズム,市民社会の形成と都市の発展など,世界史の諸テーマと関連づけながら紹介したい.

青木雅浩:ロシア革命とモンゴル
 本報告では、ソヴィエト・ロシア(後のソ連)がモンゴル人の政権に深く関わり始めた1920年代前半において、ロシア革命が外モンゴル情勢にどう影響したかという問題を検討する。この問題の検討を通じて、 ソヴィエト・ロシアへの反抗を期する反ボリシェヴィキ派、外モンゴル国内の反ソ・反政権派、彼らに対して懸念を抱くソヴィエト・ロシアの三者の関係が、外モンゴル情勢を形成する一要因であったことを解 明する。これにより、広域的に影響を及ぼしうる世界史上の大事件と、その影響を受ける個別の地域の関係を考えたい。

久米順子:歴史画の読み方
 日本の教育システムでは、中等教育までに美術史という学問領域に触れる機会がない。そんななかで世界史の資料集は、多くの学生にとって見知らぬ国や地域の美術・建築を知るための大きなイメージ・ソ ースになっているという印象を個人的に受けている。しかし学生と話していて驚かされるのは、彼らが往々にして歴史画という創作物をあたかも歴史的事実をそのまま描写したものであるかのように純朴に受 け止めているという点である。実際には歴史画は注文主や作者の意図・作為と切っても切り離せないところで成立しており、それを知ることで作品が制作された当時の社会をより深く理解することができる。 今回はナポレオンを描いた作品、ドラクロワの《民衆を導く自由の女神》、ゴヤの《1808年5月2日》《同年5月3日》といった著名な西洋の歴史画を取り上げ、美術史的な絵画の読み方を世界史の教育内容とど のように結び付けられるかを考えてみたい。

木村暁:中央アジアのイスラームと聖者信仰
 本報告では、イスラームと聖者信仰の関係性を理解する試みとして、中央アジアのスーフィー、バハーウッディーン・ナクシュバンド(1318-89)の墓廟への参詣を取り上げ、その意味を考える。この死せる聖者 へのお参りと祈願は、非神格の崇拝と紙一重でもあったが、教義に抵触しかねない危うさをよそに盛行をみた。当該慣行の現代に至る歴史的プロセスを検討することで、中央アジアのイスラームの特質の一端を明 らかにし、世界史におけるイスラームの多面性への理解の一助としたい。

鈴木茂:高大連携による歴史教育の課題と大学入試―「歴史総合」を手がかりに―
 高等学校の新学習指導要領の実施を来年に控え、歴史系科目の新しい必修科目「歴史総合」の教科書検定が終わり、現在、各高校で使用する教科書の選定が行われている。一方、本年3月、大学入試センターは、 2024年度から実施される新学習指導要領に基づく大学入学共通テストの歴史系科目を、「歴史総合・世界史探究」「歴史総合・日本史探究」とすることを発表し、合わせて「歴史総合」のサンプル問題を公表した。 本報告では、導入が具体化している「歴史総合」を手がかりとして、大学入試と関連させつつ、新しい段階に入った高大連携による歴史教育の課題を考えてみたい。

連絡先

お問い合わせ
東京外国語大学 海外事情研究所
ifa@tufs.ac.jp

企画・運営
東京外国語大学 海外事情研究所
http://www.tufs.ac.jp/common/fs/ifa/

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