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平和の実現を求めて ~スウェーデン出身 博士前期課程2年 サラ・ヴァーレンベリさんインタビュー

外大生インタビュー

2004年度、東京外国語大学大学院にPeace and Conflict Studiesコース、通称「PCS」(平和構築・紛争予防のコース)が開設されました。本プログラムでは、紛争地域などから学びにくる留学生も受け入れられるよう全ての講義が英語で実施され、平和構築・紛争予防に携わる専門家の育成を目的としています。

今回インタビューを引き受けてくださったのは、博士前期課程(修士)PCSコース2年のサラ ヴァーレンベリ(Sara Wahrenberg)さんです。日本への留学は3回目だと言う彼女。堪能な日本語をどのように身に着けたのか、なぜ遠く離れた日本の大学院に進学しようと思ったのか、インタビューを通してその経歴に迫ります。

取材担当:堀 詩(ほり うた):言語文化学部 英語専攻2年、広報マネジメント・オフィス学生記者

TUFSでの勉強

–––なぜ日本への留学を決めたのですか

小学生の時にいとこから借りた「ドラゴンボール」が日本に興味を持ったきっかけです。最初は日本の漫画が好きだったのですが、そのうち漫画雑誌の特集で見つけた「モーニング娘。」の音楽も聴くようになり、中学生の時にはJロック、いわゆるビジュアル系バンドの曲をよく聞いていました。

日本語学習はインターネットを使った独学から始まりました。中学生の頃から週に1回学校外の教室で日本語を習い始め、そこで日本語を集中的に勉強しました。高校生の時には熊本県に1年間留学をしましたが、当時は周りにスウェーデン語はもちろん英語が話せる生徒がいなかったため、必然的に日本語に浸る経験をしました。その時の経験が日本語の上達につながったと思います。大学進学後「もう一度日本に行きたい」という思いから10か月間東京外大に留学し、さらにスウェーデンの大学を卒業してから本学の大学院に進学することを決めました。

–––東京外大ではどんな勉強をしていますか

大学院博士前期課程の世界言語社会専攻 Peace and Conflict Studiesコースに所属しており、国際関係や平和構築論などを広く学んでいます。最近では、現在のヨーロッパにおける極右のポピュリズムの流行に焦点を当て、アンケート調査やインターネット上の書き込みを手がかりに調査を進めています。ポピュリズムの流行の理由を突き止めることはできても、思想の流行を阻止することは非常に難しい課題だと常々感じています。

–––卒業後(留学終了後)の目標について教えてください

実は、現在絶賛就活中です! 外資系日本企業への就職を目指していて、しばらく日本で働いた後スウェーデンに戻るか、また他の国に移って国際関係に関わる仕事をしたいと考えています。スウェーデン語・英語・日本語を話すことができるという強みを活かしてグローバルに活躍することが目標です。

東京での生活

–––ここでは普段どんな食事をしていますか

スーパーのお弁当やお惣菜に頼ったり、自炊したり、その日によって変わります。家で作る時は、調味料の使い方がわからないためやはり洋食が中心になります。伝統的なスウェーデン料理を作ることはあまりないので、私もスープやパスタ中心の一般的な洋食をよく作ります。日本の食べ物で苦手なものはゴーヤ、ネバネバしたもの(納豆やオクラ、山芋)ですが、それ以外は基本的においしく食べます。一番好きな日本食はお寿司で、スウェーデンでも食べることがあります。

–––所属しているサークルやアルバイトについて教えてください

大学院に進学してからはスーパーマーケットの品出しのアルバイトをしていましたが、今年から自分の住んでいるシェアハウスで英語の授業を行っています。シェアハウスには60人くらいの人が生活していて、年齢もバラバラです。授業ではYouTubeの動画を見ながら、単語の紹介やディスカッションを通して英語を勉強します。週に1回、多い日は6人くらいの人が集まり、楽しみながら英語を学習できるように工夫しています。

現在サークルには所属していませんが、前回東京外大に留学していた時は茶道サークルに入っていました。元々お茶が好きだったので茶道を選びましたが、ちょうど新型コロナウイルスの流行と重なったことで活動が思うようにいかなかったことが心残りです。しかし、外語祭の時には着物を着てお茶出しをするなど貴重な体験をすることができたので良い思い出です。

–––大学が休みの時はどのように過ごしていますか

友だちと過ごすことが多いです。外にご飯を食べに行ったり、カラオケやボルダリング等をすることもあります。運動は正直あまり好きではないのですが、ボルダリングは楽しく体を動かすことができるのでお気に入りです。また、一人でいるときは映画を見たり音楽を聴いたりしてゆっくり過ごします。元々何か調べることが好きな性格なので、ポッドキャストを聞いて色々な分野の情報を集めることもよくあります。特に「Ologies」というポッドキャストはさまざまな学問についての情報を得ることができるのでよく聞いています。

また休日は旅行をすることもあります。自然が好きなので、奥多摩や高尾山にもよく遊びに行きます。さらに、去年の夏は北海道に旅行したので今年の夏は沖縄への旅行を計画中です。

私と日本、変わった習慣

–––母国に帰国する際に家族や友達に買っていく(もしくは買っていきたい)お土産は何ですか

お菓子をよく買っていきます。日本のお菓子は味も種類も多く面白いので、スウェーデンの家族や友だちにも好評です。私は和菓子も好きで特に京都の八つ橋がお気に入りですが、スウェーデン人には好みが分かれます(笑)。私も最初「なんで豆が甘いの?!」と、餡子が苦手だったのですが、今は慣れてしまって好きになりました。また日本に興味がある友達や妹にはポケモンのお菓子などキャラクターものをお土産に持っていくこともあります。食べ物以外だったら、派手な柄がプリントされた靴下をお土産として買っていったことがあります。

–––日本でおすすめのところはどこですか

おすすめの場所はたくさんありますが、私が好きで、かつ思い出の深い場所は熊本県です。高校生の頃初めて日本に来た時に滞在した場所で、都会ではありませんが、ご飯が美味しく人も優しくてとても好きです。また、東京近郊だと江の島がおすすめです。美味しい海鮮料理のお店や美しいガラス作品のお店もあり、自然を感じながら楽しめる素敵な場所です。

–––日本に来てから変わった(自分の)習慣はありますか

日本的なコミュニケーションの仕方が染みつきました。例えば、ちょっとしたことで会釈をすることも増えましたし、スウェーデンに帰っても「ごめん」「すみません」という日本語がとっさに出てきます。スウェーデン語と比べて日本語では「ごめん」という言葉を日常生活の中でかなり使うと感じます。謝罪すると言うよりとっさに出てくることが多いですよね。多分私もその習慣に慣れてしまいました(笑)。

また、日本で暮らす中で考え方や価値観の違いにたくさん触れることがあり、そのような経験を通して多様性をより深く考えるようになりました。具体例を挙げると日本のタテ社会はスウェーデンにはないシステムです。特に就職活動をしている時に強く感じます。面接の際にスーツが必要であるとか、髪の毛の色や化粧の規定があることはスウェーデンでは考えられないので、最初は驚きました。海外の生活で価値観の違いに困ることや、受け入れ難いことに遭遇することはどうしてもあると思います。しかしその違いを単に「違い」として排斥するのではなく、そういう考え方もあるんだな、と認めることで自身の安心や安定にも繋がると思います。日本留学を通して、いろいろな考え方を柔軟に受け止められるようになりました。

インタビュー後記

文化や価値観の違いを理由に相互理解を諦めるのではなく、そういう考え方もあるんだ、と柔軟に受けとめるサラさんから前向きなエネルギーをもらいました。「平和」という言葉は、口にすることは簡単でも、そう容易く実現できるものではありません。平和の実現に向けて今私たちに何ができるのか、身近なところから考えていきたいです。

堀 詩(言語文化学部 英語専攻2年)

本記事は本学の「学生取材班」により準備されましたが、文責は、東京外国語大学にあります。ご意見は、広報マネジメント・オフィス(koho@tufs.ac.jp)にお寄せください。

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