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 東京外国語大学「日本専攻」の歩み

3-1. 特設日本語学科の時代T

目次
特設日本語学科の設置
特設日本語学科の研究・教育目的
特設日本語学科のカリキュラム
特設日本語学科と教材開発



・特設日本語学科の設置

 文部省は、1968年留学生課程を廃止し、予備教育としての日本語教育は1年制に戻し、本学の留学生課程は日本語専攻の学生を受入れる4年制の学科へと発展的に解消する形で、 留学生受入れ体制の再編を図ります。結果、本学には1968年、4年制で留学生30名を定員とする「特設日本語学科」が設置されるとともに、1970年には留学生課程の1年次に相当する予備教育を担う 1年制の東京外国語大学外国語学部附属日本語学校(府中市、定員60名、現留学生日本語教育センター)が設置されます。
 この特設日本語学科の設置は、現代日本語学の学士課程を持つ、「国語・国文科ではない『日本語学科』という四年制の学科が、日本の大学制度のなかに初めて位置づけられたことを意味」し、 「その後の留学生教育のあり方の反省材料となると同時に、日本語の研究・教育の新しい発展を促す画期的な改革」(『東京外国語大学史』1146頁)となりました。


・特設日本語学科の研究・教育目的

 特設日本語学科の研究・教育目的は、「言語学的基盤に立って日本語の研究と教授の理論と実践をめざす」ことにありました。「外国語としての日本語の研究・教育」を行なうことで、 言語学上「研究の必要性のある事項」が多数見えてきます。特設日本語学科では、日本語を研究対象とすることで、言語学の理論を探究し、かつ教育実践により検証することが志向されました。 この研究姿勢は、留学生別科・課程の15年間の教育実践のなかで、日本語の言語学上の研究課題に直面していた教員たちの内発的要請に応えたものでした (窪田富男「特設日本語学科の歩み」『特設日本語学科年報』1号、1978年)。


【コラム】学園紛争の影響と留学生課程・特設日本語学科
(クリックすると別ページが開きます)

1969年度学園紛争の影響が色濃い学内での
オリエンテーション風景


・特設日本語学科のカリキュラム

 特設日本語学科は、来日前の日本語能力が全く要求されなかった留学生別科・課程の時代とは異なり、「国費・私費同条件の入試により1年またはそれ以上集中的に日本語を学んだ一定の水準に達したと判断される学生を入学させる」という入学の条件を課していました。これは附属日本語学校終了時の水準を目安としており、「入学時に要求される水準は相当に高いもの」であったようです。
 特設日本語学科の1978年時点の履修単位数は表3のとおりです。入学後1-2年次には日本語の授業(専門教育科目)が1年次18単位(週18時間)、2年次12単位(週12時間)課されますが、「一般教育科目」、「一般語学科目」、「保健体育科目」はすべて日本人学生と一緒に履修し、同程度のスピードで単位取得をしていきました。
 他方で、「日本人なら当然知っている事柄でも外国人であるが故に知らないこともある」ため、基礎教育科目(12単位)が設けられ、日本語学基礎・日本地理基礎・日本文学基礎・日本史基礎の4科目が置かれ、1・2年次に3科目以上の履修が課されました。これは日本語・日本文化研究に必要な基礎知識を修得させ、専門教育の基盤形成が意図されていました。専門教育科目としては、日本語学第T(語学)、日本語学第U(文学)、日本事情(地域事情)、言語学の4講座に15授業科目が置かれました。言語学的基盤から日本語を研究するとの学科の目的から「言語学講座」が置かれるとともに、本学の地域研究の伝統にならい言語・文化の背景を知るために地域事情の講座も開講されていました。


(表3)特設日本語学科のカリキュラム
他学科(日本人学生) 特設日本語学科(留学生)
一般教育科目 36 20
一般語学科目 8 8
保健体育科目 4 2
基礎教育科目 12
専門教育科目 92 98
合計 140 140


(表4)特設日本語学科の専門教育科目の講座・授業科目
講座 授業科目
日本語学第T 日本語学概論・日本語史・日本語学特殊研究・日本語学演習
日本語学第U 日本文学概論・日本文学史・日本文学特殊研究・日本文学演習
日本事情 現代社会・伝統文化・日本研究演習
言語学 言語学概論・言語学特殊研究・言語学演習


【資料】特設日本語学科の講義内容 (1984年度) (『特設日本語学科年報 八』より一部抜粋)
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1968年授業風景(1年生LL)


・特設日本語学科と教材開発

 特設日本語学科では、日本語を勉強し始めて1-2年目の留学生に日本語・日本事情の基礎教育が必要でした。そのため、「ほどほどに易しく、日本人が中学・高校で学ぶ程度のテキスト作製が必要」となります。 そこで特設日本語学科の教員たちは、読解教材の作成を進め、読み仮名をつける等、留学生用の工夫を凝らした教材が誕生しました。また留学生と日本人学生には語彙の点で差がつきやすく、 いくら優秀な学生でも3年目で専門課程の内容を理解するには語彙が足りないと考え、語彙を学ぶための参考図書リストの作成も進められました。
 特設日本語学科ではこうした学科内での教材開発など、留学生への日本語教育のための学科としての活動が数多く実施されました。


特設日本語学科『日本地誌ノート』

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