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について

現代メディア哲学 複製技術論からヴァーチャルリアリティへ

刊行
著者等
山口裕之
出版社
講談社

内容の紹介

新しいウイルスの蔓延によってテレワークが普及し、余暇の時間もデバイスで好みの動画を視聴する人が急激に増えています。もちろん、これまでも新聞やテレビを通じて世界を知り、電話や電子メールを使って他の人とコミュニケーションを交わす、ということは行われてきました。しかし、1日の大部分をインターネットに接続された機器に囲まれて生活するようになったのも、それらの機器がAIの搭載によって「道具」と呼べないほど自立した存在になってきたのも、ここ十数年の変化でしかありません――最初のiPhoneが発売されたのは2007年なのです。
これほどの変化が私たちの生活だけでなく、私たち自身に何の影響も及ぼさないとは考えられません。では、それはどんな影響なのか? 新聞やテレビ、電話や電子メールから、スマホで見る動画、さらにはVRまで、これらはすべて「メディア」です。しかし、そもそもメディアとは何なのでしょう? 本書は、ヴァルター・ベンヤミン(1892-1940年)が残した複製技術論を梃子にして、メディアの本質は「複製(コピー)」であるという事実に基づいて、技術の進化とともにメディアが及ぼしてきた影響を考察するものです。メディアは「画像メディア」と「言語メディア」に分類されますが、両者は接合され統合されてきました。その過程でメディアが人間の身体と知覚に与えてきた影響、人間の集団編成のメカニズムにもたらしてきた変化、その結果もたらされた政治性の変容が確かめられます。そして、最終的にそれらの影響や変化はヴァーチャルリアリティに代表される最新のメディアにも見出されることが明らかになるのです。
(出版社HPから)

【目次】
第I章 メディアの哲学のために
1 メディアとは何か
2 メディアの転換
3 現代のメディア状況と「複製」
第II章 技術性と魔術性
1 メディアにおける世俗化
2 技術と魔術の弁証法
3 画像メディアと言語メディアの接合
第III章 メディアと知覚の変容
1 技術と知覚
2 新しい技術メディアによる知覚の変容
3 モンタージュと「リアリティ」
4 視覚と触覚の思想史
第IV章 メディアの政治性
1 社会を規定する技術性
2 知識人とプロレタリアート
3 映画を受容する「集合的身体」
第V章 ハイパーテクストの彼方へ
1 「技術的複製可能性の時代の芸術作品」の思考モデル
2 ハイパーテクストの思想とヴァーチャルリアリティ

著者のコメント

山口裕之(大学院総合国際学研究院・言語文化学部/教授)

現代の技術メディアは、圧倒的に技術系の人たちによってデザイン され、実現されている。しかし他方で、そういった高度な技術によ って私たちの文化や社会がどのような変転を遂げてきたのか、そし ていまどのような方向に向かいつつあるのかを人文学的・社会科学 的な視点から考えることが、決定的に重要な状況であるとも言える でしょう。そのような視点は、狭い意味での実用的なものの考え方 とは直接結びつかないように見えるかもしれません。
本書はこういった視点から、ベンヤミンの『技術的複製可能性の時 代の芸術作品』で提示されたいくつかの議論の軸に添いながら、現 代のメディア状況が置かれている現象や問題圏を考察しています。 例えばここでとりあげる「魔術」というキーワードは、一見、現代 の高度なメディアの対極にあるように見えます。しかし、そもそも 「メディア」とは何かを考えるとき、技術性の対極にある魔術的な ものにゆきつくということを、ここでは考えようとしています。 メディアは、単に人間の役に立つように人間の生活ののうちに据え られる道具に収まるわけではありません。メディアはそれ自体が人 間と世界とのかかわりを作り上げるものであり、 メディアによって人間は根本的に作り替えられていきます。本書は 、ベンヤミンの複製技術論の思考モデルをふまえながら、ヴァーチ ャルリアリティがますます高度に達成されてゆくメディアの状況に ついて考察しています。


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