2008年台湾総統選挙の見通し (X:完結編)
― 民主の蝶ははばたくか? ―

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  • 終盤の情勢:民進党
  • 終盤の情勢:国民党
  • 対照的な光景
  • 投票行動を見る視点
  • 民主の蝶

東京外国語大学
小笠原 欣幸

フリー素材柚莉湖♪風と樹と空と♪  台湾総統選挙は,いよいよ今週土曜日に投票日を迎える。すでにあと4日となってしまったが,投票10日前の終盤の情勢について,雑駁な感想を込めてまとめてみた。1年にわたり執筆してきた「2008年台湾総統選挙の見通し」は今回で完結とする。 (2008.3.18記)
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フリー素材柚莉湖♪風と樹と空と♪  終盤の情勢:民進党

 3月中旬の台湾は汗ばむ陽気であった。わずかの滞在であったが,駆け足で台湾の政治家,新聞記者,学者らに,投票10日前の情勢を聞いてきた。民進党については,立法委員A氏,県市長B氏,県党部主任委員C氏,県市長D氏から話を聞いた。共通していたのは,謝長廷の選挙情勢が非常に厳しいという認識と,謝長廷の選挙戦術はこれら党内の重要人物もよくわからないでいるという状況であった。謝長廷派のA氏は,過去の選挙でも謝長廷は最後の最後で逆転しているのでそれに期待していると話してくれたが,心なしか元気がない様子であった。A氏は謝に非常に近い人物であるが,謝が最後の10日間でどういう方策を出すのかは自分にもわからない,謝は1人で決める人だと話した。
市民団体との座談会で発言する謝長廷候補
2008年3月10日筆者撮影
謝長廷候補:筆者撮影
 B氏は「国連加盟公民投票」への支持を訴える苦行行進の最中であったが,自嘲的に,4年前の今頃は(陳水扁の応援で飛び回り)本当に忙しかったと語った。B氏は,しばらく前に,台湾の南端から北端までの大行進を企画し建議したが,謝長廷選対本部に却下されたという。選挙を応援しようにも選対本部からは何の要請も指示も来ず,居ても立ってもいられず,県内で行進を始めたようである。C氏も謝長廷の選挙戦術が理解できないという様子であった。馬英九・蕭萬長の両岸共同市場論を批判するよう各県の地方支部が何度も選対本部に訴えたが,採用されなかったという。先々週になって,突然謝長廷が取り上げ始め,この県でも反応がよいことを説明してくれたが,もっと早く取り上げてくれていればというC氏の感嘆が伝わってきた。目前に迫った3月16日の活動についても,4年前の228活動のように盛り上がることは難しいと話していた。
 筆者は昨年の段階で雲林県の県長と立法委員(その後落選)に話を聞いている。雲林県の現場の選挙戦術は,両岸共同市場の批判と「国連加盟公民投票」とを連動させて中国との距離を農民に訴えていくというものであったが,その後謝長廷は,公民投票をほとんど強調せず,中台経済関係の強化につながる政策を次々に発表した。候補と現場とで選挙戦術の齟齬をきたしたわけだが,他県のB氏,C氏の話からも,その齟齬が投票10日前まで続いていたことがわかる。
 D氏は,民進党の選挙情勢を率直に話してくれたが,そのとき涙ぐんでいるように見えた。D氏に馬英九の台湾化路線をどう思っているのか聞いた。D氏は,馬英九は台湾の民主化のプロセスで常にそれに反対し妨害する側にいた人物であり,その台湾化路線は選挙で勝つための手段に過ぎず,まったく信用できないと語った。国民党の権威主義体制と闘い投獄された経験を持つD氏は,民進党がもし敗北すればこれまで築いてきたものが水泡に帰すかもしれないという認識であった。なぜこのような事態に至ったのかについても見解を尋ね,D氏による分析を聞いた。なお,これら人物の発言については,選挙直前なので,詳細を紹介することは控えたい。
 『中國時報』の民進党担当として1996年以来総統選挙を取材してきた記者にも話を聞いた。この記者は,これほど疲れない選挙は初めてだと語った。2000年と2004年は陳水扁が連日朝から晩まで台湾中を駆け巡る選挙戦を展開したので,それを追いかけていくのが本当に大変だったという。ところが,謝長廷は行程が少なく台北で記者会見を開くというのが基本スタイルなので取材が楽だというのだ。謝長廷には,街頭での握手よりも座談会などの場を使いメディアを通じて自分の理念を訴えていくという独自の考え方があるようだがあまり理解されていない,とのことであった。この記者は,民進党が敗北した場合,支持者が30年間の成果が8年でなくなったと考えることは避けられず,その動向を注視していると言っていた。

フリー素材柚莉湖♪風と樹と空と♪  終盤の情勢:国民党

 一方,国民党は,政権交代の訴えが選挙民に受け入れられつつあると自信を示していた。馬英九がアメリカのグリーンカードを保持していた問題をはじめ両岸共同市場論などで,謝長廷陣営から波状攻撃を受けているが,有利な情勢は変わっていないという認識であった。国民党は,馬英九候補と呉伯雄主席との主軸体制でここまで選挙戦を闘ってきた。最後の10日間は,決して気を緩めないよう陣営を引き締め,突発的な事態への警戒を高めるとのことであった。
 この間,馬=呉体制の主導権を見ていくうえで興味深い動きが進行していた。国民党中央は,公民投票問題に慎重に対処してきた。民進党の「国連加盟公民投票」については反対しボイコットすることで党内は一致していたが,国民党が自ら提出していた「国連復帰公民投票」の扱いについては党内で異論が噴出していたからだ。連戰,宋楚瑜,新党が,民進党案・国民党案の両方ともボイコットするよう要求し,馬英九への圧力を強めていた。ここに,費鴻泰ら外省系立法委員,台中市長,退職外交官グループ,学者グループも加わり,馬=呉体制に対する最大級の揺さぶりが発生した。これらの人物は,もともと公民投票に反対であったが,選挙に勝つための方便として国民党案の提出をいったんは受け入れた。しかし,選挙情勢が有利になってきたので,ここで反対論を再度持ち出し,馬の台湾化路線を軌道修正し,選挙後の主導権を確保する意図があったと思われる。
 国民党が自ら提出した公民投票をここで否定することになれば,馬英九の唱える台湾化路線も説得力を失う。呉伯雄は公民投票を延期する方向で陳総統と駆け引きをし,ボイコットした場合の批判を軽減する一方,党内の足並みの乱れが拡大しないようタイミングを見計らっていた。国民党は,3月12日の中央常務委員会において,@民進党提出の「国連加盟公民投票」をボイコットする,A国民党提出の「国連復帰公民投票」を支持する,B両方とも拒否するという主張を理解し尊重する,という方針を確認し,Aの部分を守った。このように不満派の揺さぶりを堅実にはね返したことで,選挙後も,当面は馬=呉体制の党内掌握力が維持されると見てよいであろう。なお,国民党の「国連復帰公民投票」の発案者は蕭萬長と報じている新聞もあるが,実際は馬英九である。これは,馬英九に傷がつかないようにするカムフラージュであろう。
 行政院長を含む新政権のポストは関心の的であるが,緘口令が敷かれている。2000年も2004年も,1月から3月にかけて国民党内は勝ったつもりになって人事情報が駆け巡っていた。しかも,ある情報が流れるとそれをつぶす情報が流れるという具合に,当選前から内輪のポスト争いを展開し,みっともない姿をさらしていた。今回は,馬陣営・国民党の幹部クラスは,人事についてまったく語っていない。○○○氏が行政院長になるらしいという類のうわさをたまに聞くが,その出所は国民党の中枢とは無関係な人物がかってに言っているだけである。この人事緘口令も,馬=呉体制の党内掌握力が高いことを示している。選挙戦を闘っているチームが新政権の中枢となるのであるから,選挙民はどちらに政治の運営を任せるのがよいのか,選挙を通じてじっと観察している。

フリー素材柚莉湖♪風と樹と空と♪  対照的な光景

親民党の集会であいさつする呉伯雄国民党主席
2008年3月10日筆者撮影
呉伯雄国民党主席:筆者撮影
 3月10日,台北市で親民党の地方幹部と親民党出身の立法委員を集めた小さな会合が開かれた。宋楚瑜は,この日初めて正式に馬英九支持を表明した。これ自体はニュース価値が乏しいが,ここに呉伯雄主席が出席したので,報道陣が多数訪れ,宋楚瑜に久々に脚光が当たった。宋楚瑜の声には張りがあった。呉は,ほとんど影響力のない親民党の集会にわざわざ足を運んで,立法委員選挙での選挙協定の合意に至る過程の秘話も紹介し,宋楚瑜を持ち上げリップサービスをした。上述のように,宋楚瑜は公民投票への呉主席の対応に不満であったが,持論を述べるだけで,それ以上の行動には出なかった。
 この集会への出席は,確かに些細なことであるし,選挙に何ら影響しないと思う人もいるかもしれないが,親民党のグループが投票直前に喜んで応援するのか,あるいは,馬英九も国民党も実は信用できないというようないやがらせの発言が新聞に載るのかで,陣営全体の雰囲気は変わってくる。昨年4月から立法委員選挙に的を絞り,党内調整と親民党との選挙協力に取り組んできた呉伯雄の読みと政治力の一つの成果である。このまま馬英九が当選した場合,最大の功労者は,候補本人を除けば呉伯雄であろう。
 同じく選挙協力が必要であった民進党と台聯との関係は冷え切ったままである。昨年,台聯の秘書長として民進党との交渉にあたった錢橙山は,2月29日,夫人で台聯前立法委員の錢林慧君と共に馬英九と面会し,馬英九支持を表明した。台聯は,錢夫婦の馬支持は個人的行動で台聯とは一切関係ないと発表した。筆者は錢橙山氏(ここからは公的人物ではなく私人であるので氏をつける)に面会し,馬英九支持の理由を直接聞いた。錢橙山氏は,立法委員選挙後に台聯秘書長を辞任し,台南の自分の病院に戻り医師に専念していた。政治活動からは完全に退いたという。
 錢氏は,やや疲れた様子で,馬英九を支持する理由をひと通り説明してくれた。これは新聞で報じられているものと同じであった。もし立法委員選挙で台聯と民進党との選挙協力がうまくいっていたならどうなっていたかと,踏み込んで尋ねてみた。錢氏は,謝長廷を支持していただろうと明言した。当時の民進党執行部に対する深い怨念も口にした。民進党は,台聯の人間が馬英九を支持するはずがないとたかをくくっていたのであろう。錢氏の行動についてはいろいろな議論が可能であろうが,民進党が緑陣営をまとめる力量と大局観を欠いていたことが,こういう形になって現れたことは否定しようがないであろう。錢氏の話しぶりからは,悔しさ,失意,寂寞の雰囲気が感じられた。台聯では他に,前立法委員の羅志明(高雄市選出),台南市党部主任委員の褚顯明も馬英九支持を表明した。背後には,やはり民進党に対する選挙の怨念があるものと思われる。

フリー素材柚莉湖♪風と樹と空と♪  投票行動を見る視点

 《表1》は,前回2004年選挙の前に,台湾全体を4つのブロックに分けて,陳水扁と連戰の得票率の地域差を検討したものである。台北県と宜蘭県については,選挙民の支持構造を考慮し,地理的グループと異なるブロックに入れてある。左側の数字が,2003年2月の段階で筆者が提示した目安の数字である。右側の数字は,1年後の選挙結果である。
 今回も,各地域を見る目安として,前回と同じ数字を提示しておく。ブロック内の県市の動向は,やはり似た方向性を持つであろう。ただし,結果は前回とは異なるのではないだろうか。東部ブロックと北部ブロックの数字は,あまり動かないと考えている。注目は南部ブロックだ。謝長廷が選挙終盤で訴えた馬のグリーンカード問題や両岸共同市場問題に最も反応するのがこのブロックであろう。謝長廷は,ここで前回並みの60%近くを取らなければ,勝ち目はない。55%を取ったとしても当選に届かない。逆に,馬英九は45%でも,台湾全体である程度の差をつけて当選することができる。50%に近づいた場合は,台湾全体で馬の地すべり的勝利となるであろう。馬英九のロングステイに効果があったのかなかったのか,馬の台湾化路線が受け入れられるのか否か,これまで論争が続いてきたが,間もなくその答えが明らかになる。
 もう一つの注目点は,中部ブロックに入れた台北県である。台北県長として評価の高かった蘇貞昌の効果がいま現在どれほどあるのか,ふたを開けてみないとわからない部分が多い。台北県は台湾最大の人口を有するだけに,ここでの攻防も,謝が差を縮めるのか,馬が圧勝するのかの分かれ目になる。詳しくは,筆者作成のシミュレーターを使っていただきたい。
 さて,ここまでの記述は,3月12日の夕方までの選挙情勢である。この日の夜,謝長廷選対本部で衝突事件が起きた。国民党の4人の立法委員が,謝長廷選対本部の賃貸契約に疑義があるとして,調査と称してビルに立ち入ったところで,選対本部の職員や支持者に囲まれ動けなくなり,出動した警察と謝長廷の支持者が衝突したという事件である。これで,横暴な国民党というイメージが広まり,立法委員選挙後の「一党独大」に警鐘を鳴らしていた謝長廷陣営の主張が裏付けられる形となった。4人の1人は新党出身のうるさ型で倒扁運動でも活躍,1人は父親が本物のやくざ,1人は彰化県の地方実力者,1人はただの新人議員である。呉主席がこれら4名の議員を引き連れて謝罪会見を行なうと共に,党員停止1年の処分を発表し,事態の沈静化に努めた。馬英九も謝罪を繰り返した。この事件によって,謝長廷陣営は大いに意気が上がった。
 3月16日,今度は,謝長廷の応援演説をしていた教育部主任秘書が失言をし,謝長廷側が謝罪と沈静化に追われることになった。この人物は,もともと大学教員であるが,期間限定で教育部に出向した形になっていた。主任秘書という役職は日本にはないので説明が難しいが,あえて言うならば文科省の大臣官房の官房長くらいの役職であろう。この人物は,以前より下品な言葉で馬英九への個人攻撃を繰り返していたので,相手陣営および中間派選挙民から批判を浴びていた。

《表1》 2004年総統選挙の地域ブロック別得票率
フリー素材柚莉湖♪風と樹と空と♪2003年2月に筆者が
提示した目安の数字
2004年3月の選挙結果
陳水扁連戰陳水扁連戰
東部ブロック花蓮県30%70%31.6%68.4%
台東県
澎湖県
金門県
連江県
北部ブロック基隆市40%60%42.8%57.2%
台北市
桃園県
新竹県
新竹市
苗栗県
中部ブロック台中県50%50%48.9%51.1%
台中市
彰化県
南投県
台北県
南部ブロック雲林県60.05%39.95%59.1%40.9%
嘉義県
嘉義市
台南県
台南市
高雄県
高雄市
屏東県
宜蘭県
合 計50.00%50.00%50.11%49.89%

 さらに,チベットでの動乱と鎮圧という事態も発生した。中国共産党の体制問題はこれまで影を潜めてきたが,選挙戦の最終段階で大きなイシューとして浮上してきた。今回の総統選挙の一つの軸は,馬英九の台湾化路線が信任されるかどうかであるが,本当に最後の段階で,その真価が問われることになった。
 選挙後のことも少し考えておきたい。仮に謝長廷候補が敗北した場合,立法委員選挙ですでに大敗している民進党への打撃は非常に大きい。民進党の支持者や活動家にとっては,長年の民主化の努力の成果をなくしてしまったという喪失感や,不安,怒り,不公平感に包まれるのは避けられないかもしれない。その痛みは察するに余りある。その感情をどこへ持っていくのか。陳水扁の責任を追及するのか,党をがたがたにした前執行部の責任を追及するのか,謝長廷の選挙戦術がだめであったと総括するのか,それとも,すべて馬英九と国民党が悪いとするのか。
 いずれにせよ,民進党は選挙後に陳政権の8年と党の路線を検討することになるが,どのように検討し,党として問題意識をどれだけ共有できるかが重要なポイントになる。党勢の低迷が長引くのか,あるいは,素早く回復するのかもそこにかかっている。民進党には台湾の民主政治をさらに成熟させていく責任があるし,その能力も力量もある。
 仮に馬英九候補が敗北した場合,直前まで優勢な状況が一気にひっくり返ったということになるわけだから,支持者の驚愕と落胆はとてつもなく大きなものとなるであろう。こちらも察するに余りある。しかし,冷静に考えれば,立法院の圧倒的多数を握っており,謝長廷は行政院長を国民党に渡すと言っているので,選挙後の主導権は国民党が持つことになる。
 馬英九は実に多くの公約をしている。当選した場合,今度はブーメランのように自分のところに戻ってくるであろう。馬は,台湾経済が悪くなったのはすべて陳政権のせい,とする選挙戦術を採った。しかし,国際金融情勢の混乱,ドル安,原油高などが続けば,馬政権の政策にかかわらず台湾経済が揺さぶられる可能性があり,前途は楽観視できない。また,1月に当選した国民党の立法委員の中には,とんでもない議員が少なからず含まれている。4年間に様々なトラブルを起こし,政権の足を引っ張ることは間違いない。支持者は議員に何を期待するのか考え直す必要がある。制度改正がなければ,4年後も1月に立法委員選挙,3月に総統選挙という日程になるが,国民党が次回の立法委員選挙で議席を減らすのは確実であり,今回とは歯車が逆に回ると見ておくべきであろう。

フリー素材柚莉湖♪風と樹と空と♪  民主の蝶

 比較政治学の観点からは,民主化を推進してきた政党が選挙で敗北したからといって民主の後退になるわけではない。また,半大統領制を採用している国家において,議会の多数を持つ政党の候補が大統領に当選したからといって民主の後退になるわけでもない。どうしても許せない政党や候補者が選挙で勝ってしまうことも民主主義の宿命である。自分たちの主張が4年後には多数になるように努力し続けるしかない。その努力を放棄したときこそ,民主の後退が始まる。諸々の問題を抱えていることは事実だが,他の民主主義国と同じように,台湾でも,野党,メディア,諸団体,市民社会が,新政権の権力行使を監視していくであろう。
 投票まで残り4日間,いろいろな出来事が発生するであろうが,選挙を無事に完了させ,どちらが当選しても,5月20日に予定通り新総統を就任させることが何よりも重要だ。海外の研究者がわざわざ指摘するまでもなく,両陣営ともそれが責務であることを認識しているはずだ。台湾の人々が培ってきた民主政治は,簡単に崩れはしないし,台湾という土地で,また一段,その足場を固めるであろう。
 先日,中国のある著名な学者が,台湾の民主を蝶に喩え,いまは幼虫かもしれないが美しい蝶に変身することを期待していると話してくれた。それは,台湾で民主の蝶がはばたくことが中国で民主化を願う人々への大きな激励になるというメッセージであった。試行錯誤を繰り返しつつ,台湾政治は,中国の人々がうらやむような活気にあふれ成熟した民主政治へと向かうであろう。2008年総統選挙も,そのプロセスの一里塚である。【完】(2008.3.18記)

※「2008年台湾総統選挙の見通し」はこれにて完結です。ご愛読ありがとうございました。

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