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東京外国語大学 小笠原 欣幸 |
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次の4年間の台湾政治の方向を決する総統選挙・立法委員選挙(1月14日投開票)までいよいよ30日となった。一対一の戦いになると見られていた総統選挙は,7月以降新たな展開があった。親民党の宋楚瑜も立候補に向けた活動を開始し,11月その立候補の届出が中央選挙委員会によって受理されたので,総統選挙は3候補の争いとなることが決まった。宋楚瑜に当選の可能性はないが,馬英九と蔡英文の得票に影響を及ぼす。台湾メディアの民意調査では,8月から10月上旬にかけて国民党の馬英九がリードしていたが,10月下旬以降民進党の蔡英文が追い上げ,11月には両者が並ぶ展開となった。12月に入って馬英九が再びリードしたが,その差はまた縮小している。馬英九,蔡英文ともに決め手を欠いている。現時点では,どちらにも当選の可能性がある。(2011.12.12記) |
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2012年台湾総統選挙の見通し(3)
(2012年1月追加)
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《表1》は,台湾のテレビ局TVBSが行なった7月以降の民意調査の数字である。3候補の支持率および馬英九の蔡英文に対するリード幅の推移が示される。3候補の支持率の推移をグラフにしたのが《図1》である。8月から10月上旬にかけて馬英九がリードしていたが,10月下旬以降蔡英文が追い上げ,11月には両者が並ぶ展開となったことが確認できる。
TVBSの民意調査では地域ブロック別の支持率も公表されている。それによると,台北市・新北市・基隆市のブロックは比較的安定しているが,それ以外の地域ブロックはいずれも支持率の変動が激しい。地域別の数字はサンプル数が少ないので変動が大きくなるのは必然であるが,地方は流動的な要素が多いというシグナルととらえることができる。地域ブロック別の馬英九の蔡英文に対するリード幅の推移を示すグラフが《図2》である。
7/21 | 8/15 | 8/30 | 9/22 | 9/28 | 10/6 | 10/12 | 10/20 | 10/26 | 10/31 | 11/3 | 11/10 | 11/16 | 11/23 | 12/1 | 12/7 | |
馬英九 | 38 | 39 | 40 | 42 | 40 | 40 | 38 | 43 | 42 | 39 | 38 | 39 | 39 | 40 | 40 | 41 |
蔡英文 | 36 | 35 | 32 | 32 | 33 | 35 | 34 | 35 | 33 | 33 | 35 | 38 | 39 | 38 | 34 | 37 |
宋楚瑜 | 13 | 16 | 17 | 15 | 14 | 13 | 15 | 12 | 13 | 9 | 14 | 9 | 9 | 7 | 7 | 8 |
未決定 | 13 | 9 | 12 | 11 | 13 | 13 | 13 | 10 | 12 | 20 | 13 | 14 | 12 | 15 | 19 | 14 |
馬リード | 2 | 4 | 8 | 10 | 7 | 5 | 4 | 8 | 9 | 6 | 3 | 1 | 0 | 2 | 6 | 4 |
画像の出所:2011年10月10日『聨合報』 |
民進党が作成したポスター。表題は 「ただ働きカレンダー」と書かれている。 |
蔡英文 2011年11月25日桃園県桃園市にて筆者撮影 | 馬英九 2011年11月26日新北市三重区にて筆者撮影 |
台湾の総統選挙は,過半数に関係なく1票でも上回った候補者が当選する。両陣営とも優勢な地区ではさらなる票の上積みを目指し,劣勢の地区では差を少しでも縮めなければならない。小選挙区制の立法委員選挙では手を抜ける地区,棄てる地区があるが総統選挙にそれはない。台湾全体が戦いの場であり,チーム力をよりよく発揮できた陣営が当選に近づく。(2011.12.12記)
・「2012年台湾総統選挙の見通し(1)」 ・「2004年台湾総統選挙分析 ― 陳水扁再選と台湾アイデンティティ」 ・「2008年台湾総統選挙分析 ― 政党の路線と中間派選挙民の投票行動」 ・「馬英九政権論」(その1) (その2) (その3) ・「2010年台北・新北市長選挙の考察」 (蔡英文の選挙戦を詳しく論じています) |
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