フリー素材柚莉湖♪風と樹と空と♪
馬英九政権論 (その3)

東京外国語大学  小笠原 欣幸

フリー素材柚莉湖♪風と樹と空と♪

1.金溥聰秘書長辞任
2.党内の後継序列
3.副総統候補
4.王金平問題
5.台南高雄補欠選挙
 まとめ

国民党は2010年11月の五都市長選挙において三都で当選したものの得票総数で民進党に敗北した。高雄市,台南市,および台中市での得票状況は国民党にとって非常に厳しいものであり,中南部での集票能力の低下は深刻である。来る立法委員選挙と総統選挙において国民党の苦戦は必至となった。馬英九は,国民党秘書長(幹事長に相当)の交代という思い切った政権与党人事を行なった。馬英九政権論3回目の今回は,この政権人事と五都選挙後の国民党内の権力関係について考察してみたい。(2011.2.1記) フリー素材柚莉湖♪風と樹と空と♪
フリー素材柚莉湖♪風と樹と空と♪ 1.金溥聰秘書長辞任
 2011年1月19日,国民党は金溥聰秘書長(54歳)の辞任を発表した。後任の秘書長には総統府秘書長の廖了以(63歳)が任命された。金溥聰は馬英九にとって最も重要な側近にして盟友である。1998年台北市長選挙,2005年国民党主席選挙,そして2008年総統選挙で金溥聰は選挙参謀を務め馬英九を勝利に導いた。馬政権発足後,金は政権入りしなかったが電話で馬の相談役を務めていたとされる。2009年12月の県市長選挙で苦戦したことを受け,馬英九は,国民党の態勢建て直しと再選戦略を指揮させるため,金を国民党秘書長に任命した。金は,就任の際の『聨合報』インタビューで,馬の再選を助けるという目標のもと,五都選挙と党務改革の二つが自分の任務だとしていた(「推動黨務改革 協助建立黨政溝通平台」『聨合晩報』2010.1.7)
 金秘書長は,地方組織の建て直しのため県市の党支部主任委員クラスを大幅に入れ替え,同時に党組織効率化のため党職員多数の引退を進めた。しかし,県市長選挙・立法委員補欠選挙で負けた主任委員を次々と更迭する懲罰人事と人員削減は党中央への不満・不信を高め,現場の活動能力も低下することになった。国民党組織を動かすには「ニンジンと棒」が必要というのは呉伯雄前主席の考えであった。このような手法に不満であった馬英九は,呉伯雄に代わって党主席に就任し,国民党を効率的な選挙マシンとして戦闘力を高める改革を金溥聰に託したのである。
 金溥聰は地方支部に対し従来型の恩顧主義的・金権的組織から脱却を求め,党中央から提供する「ニンジン」特に資金を大幅に減らした。いまの国民党にはかつてのような党資産はなく,手持ちの現金は大幅に減少しているので,ない袖は振れない状況にもある。代わりに金は,馬政権が台湾の将来のため正しいことをしているという理念を党組織の原動力にしようとした。一方,金秘書長は,強いパーソナリティで党務の処理に臨んだ。従来の調整型とは異なる金のスタイルは各地でいろいろな摩擦を生み出し,党中央と地方の人間関係,党内外の人間関係が各所で凍りついてしまった。改革の対象にされることは誰にとってもおもしろい事ではない。馬=金の思惑に反して,地方組織の士気・活動力は高まらず,地方幹部の党中央に対する不満は国民党系の新聞にも掲載された。その結果が五都選挙での事実上の敗北であり,台中市・台南市・高雄市の選挙結果は,地方派閥を改革しようとする馬=金のやり方が中南部で通用しないことをはっきりと示した。
 秘書長交代は,馬および金本人が地方組織改革路線の行き詰まりという現実を重視し,党指導部体制のリセットに踏み切ったためと考えられる。それは,後任が廖了以であることからも読み取れる。廖了以は台中県紅派のボスで,県政府所在地の豐原市が地盤である。廖は,台中市長選挙で胡志強の旧台中県地区の選対責任者であった。にもかかわらず,自分の足元の豐原市で胡志強の得票率は台中県で下から二番目に低かった。豐原市は人口が比較的多いので,ここでの票差が旧台中県地区で胡志強が民進党の蘇嘉全に負け越す原因となったのである。本来なら廖の責任を追及してもおかしくなかったのに秘書長に据えたということは,馬金路線を大きく軌道修正し,今後は低姿勢で地方派閥と関係改善を図るという意思表示である。
 台湾メディアでは,金は五都選挙前から辞任を考えていたという説が流れているが,これは煙幕であろう。金は,五都選挙で3勝できなかったら責任をとって秘書長を辞任すると宣言していた。3勝したので辞任の必要はない。もともと辞任のつもりがあるなら,まったく意味のない約束を公言していたことになる。筆者は五都選挙前に金秘書長とじっくり話をする機会があったが,この説は成り立たないと考えている。また,秘書長交代は金が馬再選のための選対本部を立ち上げ指揮するためという説明も流れている。これは事実であろう。しかし,この説では辞任のタイミングと必然性に疑問が生じる。現職大統領の再選戦略は,新人や野党候補の選挙戦略と異なり,行政機構を使って実績を自然にアピールするのが有利である。与党は党組織を通じて行政の成果が上がりそれが選挙民に認知されるよう支援する役割がある。それが再選戦略そのものである。いずれ選対本部が立ち上がりその指揮をとる人物が必要になるが,それは選挙が本格化する夏や秋以降でも十分である。選対本部の責任者を閣僚が兼任するのは問題であるが,与党幹事長が兼任することに支障はない。
 交代劇の背後には,金の傷がこれ以上広がるのを防ぎ,金を温存するという意図も感じられる。スジを通そうとする金は,友党である親民党の宋楚瑜主席を名誉毀損で訴えた。このままでは国民党と親民党とは決裂である。また,台南の市議会議長選挙で党中央の指示に従わなかったとして党所属市議10名を除名した。そのため台南市の国民党市議はたった3名になってしまった。台南市の党組織はガタガタである。そして,これは辞任を決めた後と思われるが,立法委員補欠選挙の出馬要請を拒否した閣僚を公然と罵倒した。『中國時報』は社論に準じるコラムでこのような金の手法を批判した(「短評−人和才能政通」『中國時報』2011.1.5,「短評−少些氣吧!」『中國時報』2011.1.18)。金の敵はじわじわと増えていたのである。
 さらに,3月5日には台南市と高雄市で立法委員補欠選挙が行なわれる。国民党の大敗は確実で,メディアで金溥聰の敗北と書かれることも確実である。馬英九としては,剛腕,こわもて,選挙に強いという金のイメージを守っておかないと,後日金が選対本部を動かすにも支障が出ると考えたのではないか。交代劇は,金の失脚というよりは,金の威光が下がるリスクを回避するための温存策と見ることができる。
 廖了以が率いる国民党新指導部の構成も検討してみたい。すでに触れたように廖は台中の地方派閥出身の本省人である。副秘書長には,洪秀柱と林鴻池の2人の立法委員が起用された。洪秀柱(62歳)は当選7回の大ベテランで,外省人で地方派閥出身ではないが王金平に近い。林鴻池(55歳)は台北県板橋市の地方政治家族出身の本省人である。廖の元のポストであった総統府秘書長には,屏東の地方派閥とつながりのある本省人の伍錦霖(63歳)が就任した。今回の政権人事は地方シフトが鮮明である。金が仕切るはずであった立法委員選挙の公認候補決定問題は,地方の現実を重視し現職立法委員の意向に配慮しながら進めていくことになるであろう。この人事を聞いた立法委員や地方派閥関係者から「ほっとした」という声があがったという記事は,党内の雰囲気をよく表している(「大讚王牌布局 藍委、派系『鬆了一口氣』」『聨合報』2011.1.20)

フリー素材柚莉湖♪風と樹と空と♪ 2.党内の後継序列
 五都選挙は表面的な勝敗だけではなく,国民党内の権力関係に興味深い変化を生じさせた。2009年以降,県市長選挙,立委補選,五都選挙と国民党苦戦の趨勢が続いているが,馬の党内基盤は逆に強まっている。連戰系は早くに排除され,王金平は押さえ込まれ,呉伯雄は追い落とされた。全国的に人気があった胡志強(62歳)が五都選挙で没落したことで,潜在的に馬を脅かす人物はまた1人減った。一方,まだ先のことではあるがポスト馬英九を展望する動きも見えてきた。
 五都選挙前は,馬英九(60歳)の有力後継者は朱立倫(49歳)ということで衆目が一致していたが,そのポジションは微妙に変化した。馬が再選された場合,国民党内は2016年を目指して水面下で動き出す。新北市長に就任した朱は,総統選挙に出馬するなら2014年の初めに市長再選を目指すかどうか態度表明をしなければならない。今回蘇貞昌が市長に当選した場合総統選挙に出馬するのかどうかしつこく問われたのと同じことが起きる。2014年の初めは,党内でまだ誰も総統選挙の出馬表明をしていないであろう。その状況で自分が口火を切るのはリスクが大きい。朱が圧倒的な政治力を有していれば新北市長で再選を果たし任期途中で総統選挙出馬という選択肢もあるが,任期途中で市長を辞めることに党内外の批判が高まり政敵に利用される可能性があるので慎重にならざるをえない。
 一方,時間的に有利なのが郝龍斌(58歳)である。郝龍斌は2014年12月に2期8年の台北市長の任期を終える。郝の政治手腕に対する評価は高くはないので現在はそうは思われていないが,馬と同じように台北市長2期8年を全うすることで,党内でかなりの政治力を蓄積することができる。その時朱立倫は新北市長1期目で,馬の意向が働いたとしても十分な政治力を蓄積しているかどうか疑問がある。今後,馬に不満な勢力は郝の周りに集まるようになるであろう。ちょうど2000年の前に李登輝に不満な人たちが連戰の周りに集まったのと同じような状況が生じる可能性がある。ただし,郝は台湾語で演説ができないので,党内の実力と総統候補としての実力は必ずしも一致しないであろう。
 もう1人,馬の後継を狙う可能性がある人物は呉敦義(62歳)である。このまま行政院長を続ければ,呉敦義は2009年9月の就任から2012年5月まで2年半の時間があるのでかなりの政治力を蓄積することができる。しかし,行政院長をいつまでも続けていると,いつ大災害で責任を負わされるかわからないし,そもそも馬に切られるかもしれない。したがって,呉敦義にとって最も望ましい位置は副総統である。副総統はたいした実権はないが,国民党内の序列では重みを持つ。総統選挙の準備に都合がよいポストである。
 呉敦義は一匹狼的存在で明確な支持グループを持たないが,風向きを読むのは巧みである。呉はいま,郝龍斌は4年後も人気はたいして上がらず,朱立倫は新北市で塩漬けになるという読みをしているであろう。朱はこの展開を読んだからこそ,新北市長選挙の出馬を当初躊躇したのである。朱にとっては行政院副院長(副首相に相当)のポストはいつでも呉敦義に代われる有利なポストであり手放したくはなかった。しかし,党中央による周到な周錫瑋降ろしが展開され朱の外堀も埋められた。周錫瑋台北県長が再選出馬断念を発表したのが2010年2月であったので,多くの人が周降ろしを仕掛けたのは金溥聰だと思っているがそうではない。金が秘書長に就任するはるか以前,すなわち呉敦義が秘書長の時から仕掛けは始まっていたのである。
 五都市長選挙と総統選挙は,この1年数カ月という中途半端な時間間隔が維持される。五都の市長に当選することは総統に近づく道ではあるが,途中で転進すれば市長の補欠選挙が必ず行なわれるので,これがネックとなり個々の政治家は時間と年齢の複雑な計算が必要になる。例えば,今回当選したョ清徳(51歳)は,2期8年市長を務めてちょうどよく2020年総統選挙にチャレンジできる。朱立倫も2020年にはちょうどよいが,2016年だとそう簡単にはいかないのである。メディアでは「馬英九の有力後継候補」という枕詞がつく朱立倫であるが,五都選挙後は状況が変化している。

フリー素材柚莉湖♪風と樹と空と♪ 3.副総統候補
 2012年総統選挙の焦点は馬英九そのものであり,副総統候補が誰になろうとも一般の選挙民はあまり大きな関心を抱かないであろう。しかし,国民党内の権力関係では影響は無視できない。馬英九の選択肢としては,@呉敦義,A王金平,B蕭萬長続投,Cサプライズ人事が考えられる。呉敦義を副総統候補にすれば後継レースで呉が台頭してくるので,宮廷政治が得意な馬が呉の注文どおりに動くかどうかはわからない。朱立倫が新北市長選挙に出馬せず行政院副院長のままでいたなら,呉副総統・朱行政院長という組み合わせ,逆に朱副総統・呉行政院長続投という組み合わせの複数のカードを使って宮廷政治を有利に進めることができたのだが,朱立倫カードは使えなくなった。馬としては王金平とは組みたくないが,足を引っ張られないように王を副総統に祭り上げる選択肢がある。現職の蕭萬長は,健康状態に問題があるが引退と決まったわけではない。調整がうまくいなかったときのカードとしてぎりぎりまで温存されるであろう。呉,王,蕭を排除してまで別の人物を起用する可能性は低いが,支持率が低迷している場合にはサプライズ人事を行なう可能性もある。その場合は,嘉義市長の黄敏惠(52歳,女性)の起用という選択肢がある。この人選は,中南部への友好的ジェスチャーとなるし,蔡英文対策の隠し球にもなる。

フリー素材柚莉湖♪風と樹と空と♪ 4.王金平問題
 国民党の内規では,比例区選出の立法委員は2期までとされている。王金平は現在比例2期目なので,このままでは国民党の比例区のリストには載らない。王は,立法院長を続けるためには選挙区で当選して立法委員の身分をまずは確保しなければならなくなる。王の出身地である旧高雄県では民進党が強く当選は難しい。他には,新北市あたりの安全な選挙区の現職を比例区に回して王に譲るという方法が考えられるが,難度は高い。それよりは党の内規を変更し現職の立法院長は3期も可とする方が簡単であるが,馬はこうした便宜的なルールの変更には抵抗感があると伝えられている。馬が王の法案処理のやり方に不満を抱いているのは間違いない。そのため,馬が王を立法院長の座から追い落とすという観測も絶えない。しかし,現職の立法院長をこのような形で追い込むのは冷酷な党という印象を与えるので好ましいことではない。王金平問題は馬の政権運営の刺の一つになっている。
 王金平自身は,総統選挙に出たいという気持ちがあるが,客観的には党内で馬に挑戦しても勝ち目はない。かといって,王は国民党を出て第三勢力の結集で勝負するという政治家でもない。立法院長も潮時ということになれば副総統で政治家のキャリアを終えることは悪くないと考える可能性もある。馬にとっても王を円満に立法院長から外すことができるのでこの人事は悪くはない。障害は,こうした利益交換・妥協の人事を嫌っている馬自身であるし,金溥聰もこのような妥協に反対であった。しかし,五都選挙で再選が危なくなった馬は,宮廷政治の手法で王を引退に追い込む作戦はあきらめたように見える。金溥聰が辞任,地方派閥の代表的人物廖了以が秘書長,王金平派の洪秀柱が副秘書長という布陣は,馬が王金平に妥協する準備と考えられる。

フリー素材柚莉湖♪風と樹と空と♪ 5.台南高雄補欠選挙
 春節明けの3月5日,台南市と高雄市で立法委員補欠選挙が行なわれる。台南はョ清徳が市長に転出,高雄は陳啓cが副市長に転出したことにより空席が生じたためである。立法委員の残り任期が1年を切ると空席ができても補欠選挙は行なわれないので,これが今期最後の補選となる。いずれも民進党の強い選挙区である。しかも民進党は,台南で前市長の許添財,高雄は前立法委員の林岱樺という実力・知名度共に十分の候補者を擁立し,党内の争いもうまく収めた。
 対する国民党は候補者を探すこと自体に苦労した。灰色の影のある人物を候補にしない方針を貫いたことは評価に値するが,南部での人材難を露呈する結果となった。台南では,比例区の現職立法委員陳淑慧(台南市選出の元国民党立法委員林南生の妻)がようやく立候補することになった。しかし,現職立法委員であるから,落選しても立法委員のままでいられる。日本でも2010年10月に比例区から選挙区へのくら替え立候補があり,北海道5区で自民党の町村信孝氏が当選した。しかし,比例区選出の町村氏は議員を辞職してから選挙区に立候補している。最近の補欠選挙で国民党は改革イメージを意識して学者候補を何度か立てているが,地元では,学者は落選しても大学に職があるから真剣さが伝わらないと揶揄されている。当選が難しいので有力者は出たがらない事情があるとはいえ,比例区議員の擁立は窮余の一策という感がある。これなら地元で元気な市議を立てた方がましと思えるが,党所属市議を大量に処分した後遺症でそれも困難になったのである。
 もう一つの高雄においても,国民党は適切な候補を擁立できなかった。結局,前回2008年立法委員選挙で民進党の公認争いに敗れ党規違反で出馬・落選した徐慶煌を公認した。台湾紙でははっきりとは書かれていないが,王金平系の地方派閥である高雄県白派が党中央に協力しなかった模様だ。このため,元民進党で最近国民党に入党したばかりの人物を担ぎ出すことになったようである。この人物は,父親が元民進党立法委員の地方家族出身なので多少の個人票はあるが,民進党に対抗して票をまとめていくのは難しいであろう。この結果,選挙戦が始まる前に,二つの補欠選挙での国民党の惨敗が早くも決まってしまった。どちらの選挙区も民進党が60%前後の得票率で圧勝するであろう。
 これは,強力な候補者の擁立に失敗し惨敗した五都選挙の台南・高雄市長選挙の再現である。選挙情勢が厳しい選挙区で,民進党はチャレンジする人材が次々に現れるのに,国民党は有力人物が嫌がって逃げてしまうという現象が生じている。困難であってもがむしゃらに進むのが好きな台湾人の価値観からすると,チャレンジさえしないのでは相手にされなくなる。台湾は交通網も情報網も発達し,北部と南部は新幹線で1,2時間の距離でしかないし,ニュースは全国メディアで即時に報道される。だが,政治的・心理的な隔たりは大きくなっている。馬英九ら国民党幹部が南部対策を強調すればするほど,当の南部住民には,国民党が北部と南部を区別し自分たちを特別視していると映り,反感・疎外感を募らせる。
 五都選挙と3月補選で浮かび上がる南部の選挙プロセスと投票行動から考えると,次の立法委員選挙・総統選挙においても国民党が南部で「ボロ負け」する可能性がある。2011年に入って最初の選挙は,1月8日に行なわれた南投県草屯鎮の鎮長の補欠選挙であった。鎮長・郷長の選挙は本来まったくのローカル選挙であるが,草屯鎮(人口約10万人)は呉敦義行政院長の故郷ということで注目を集めた。結果は,民進党候補が基礎票の劣勢を跳ね返し19票差で当選した。南投県は2009年県市長選挙で国民党が得票を伸ばした数少ない地区である。隣の台中県で蘇嘉全の得票が胡志強を上回ったことと合わせて考えると,「南部」の前線はじりじり北上しているようにも見える。

フリー素材柚莉湖♪風と樹と空と♪ まとめ
 党指導部人事をリセットし改革路線を軌道修正することで政権基盤は強化されるのか,現時点では判断が難しい。もし軌道修正がなされなければ,改革も進まず地方組織からはそっぽを向かれるという最悪の事態になりそうであったので,選挙に向け党内ムードを高める一定のプラス効果は出るであろう。また,馬政権は都合の悪いことをリセットする意思と能力があるということも示した。しかし,そもそも馬が改革を進めようとしたのは,前回の立法委員選挙後4名もの国民党立法委員が当選無効判決を受けたことに代表される党地方組織の問題が顕在化していたからである。改革路線の後退は,問題がそのまま残ることにつながり,それ自体がリスクである。改革理念の喪失と批判されるリスクもある。それに,地方のしらけた気分の根本原因は金溥聰ではなく馬英九自身にあるわけだから趨勢の逆転にはまだまだ策が必要と考えられる。立法委員選挙の公認候補者の選定が終わったあたりで答えが見えてくるであろう。 (2011.2.1記)
フリー素材柚莉湖♪風と樹と空と♪  

  馬英九政権論(その1)は こちら
  (その2)は こちら

OGASAWARA HOMEPAGE


   フリー素材柚莉湖♪風と樹と空と♪