日本学術振興会
21世紀COEプログラム


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(文部科学省)


東京外国語大学
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史資料収集−研究担当班


活動報告

2003年度

1. 研究会等の活動
以下のように、ほぼ2ヶ月に1回のペースで、学内外からゲストを招いて公開研究会を開催した。研究会は海外事情研究所で行った。学部学生・大学院生のほか、外部からの参加者も含め、ほぼ12、13名から20数名が参加した。

2003年4月25日 - 班打ち合わせ
5月開催の研究会についての打ち合わせと本年度事業計画を確認。各自の予定を確認したほか、3月15日に開催したシンポジウムの記録の原稿化について打ち合わせを行なった。以後、シンポジウムのパネリストの方々と連絡を取りつつ、本COEジャーナル第2号掲載のための準備を進めた。

2003年5月27日 - 第3回定例研究会
水谷尚子(中央大学非常勤講師)
「口述歴史と中国近現代史」
- はじめに
- 台湾における口述歴史
- 中華人民共和国における口述歴史
- 中台口述歴史の周辺
- 最後にー私の口述歴史体験
報告は上記の構成に基づき、多くの史資料を紹介しながらなされたが、中国・台湾における歴史学分野での口述歴史の試みを詳細に比較した、非常に興味深いものであった。台湾においては、政府下の組織だけではなく、庶民やマイノリティーなどを対象とする高等教育機関や民間団体・政治団体による聞き取り調査とその記録化(テープという形ではなく活字化され保存・公開)が進んでおり、口述歴史への取組みが日本・中国と比較すると進んでいるということであった。またオーラル・ヒストリーを「双方の知恵の結晶」であり、「インタビュアと聞き取り相手の合作」と位置づける水谷氏自らの口述歴史体験が語られた。

2003年6月13日 - Anil Sethi氏(本COE外国人フェロー)の報告
Anil Sethi氏より、Oral Archives Project on Partition of Indiaについての説明を受けた。インド・パキスタン分離の際に多くの人々が体験したさまざまな苦難の実相についての調査実施計画概要について説明を受けた後、質疑応答を行なった。

2003年7月22日 - 第4回定例研究会
河かおる(滋賀県立大学講師)
「録音資料の『活用』作業に従事して
―学習院大学東洋文化研究所所蔵『友邦文庫』録音記録を中心に―」

朝鮮総督府関係者への聞き取りテープ資料の活字化を体験された河かおる氏の報告は、本班の今後の作業にとって重要な意味をもつ「記録化」や公開などについて大いに参考になると思われる。なお、本報告はジャーナル第3号に掲載されている。

2003年11月18日 - 第5回定例研究会
蘭信三(京都大学大学院助教授)
「中国帰国者にとっての『祖国』の記憶 ―中国残留婦人を中心として―」
報告では、祖国の記憶を熱く語る」中国残留婦人との出会いにより、彼らにとっての祖国、「祖国の記憶」の意味を考察することになったという問題意識が述べられた後、「記憶、記憶の語り、記憶の語りの聞き取り」に関するスタンス(理論的立場)が提示された。続けて、中国残留婦人・中国残留孤児にとっての「祖国の記憶」とは何か、それぞれの特徴とその背景について、非常に詳細で緻密な報告がなされた。報告後、参加者から、残留婦人の聞き取りを行なった際に、「祖国」という言葉が実際に語られているのかといった興味深い質問も出され、活発な討論がなされた。

2003年12月8日 - 第6回定例研究会
佐藤宏(本学非常勤講師、本COEフェロー)
「バングラデシュ解放戦争と戦闘参加者・目撃者の記録
―解放戦争研究センターの『オーラル・ヒストリー・プロジェクト』―」

本COEではバングラデシュ解放戦争のオーラル記録編纂事業に協力し、作業委託覚書を取り交わしているが、本報告は、このバングラデシュにおけるプロジェクトの概要とその意義についてのものであった。プロジェクト立ち上げに至る経緯についても言及されたが、政治的背景を含め、きわめて興味深い内容であった。また編纂された資料についても具体的に取り上げられ、解放戦争への関与の仕方の異なる2地域について紹介がなされた。報告後、解放戦争への女性の関与の有無等についての討論がなされた。

2003年12月22日
来年度の活動計画について、班としての方針と各自の調査研究計画等について話し合った。

2004年2月10日 - 第7回定例研究会
石井傅(アジア・アフリカ言語文化研究所教授、オーラル・アーカイヴ班)
プルナ・ラタナ・サキャ(東京外国語大学学術博士、オーラル・アーカイヴ班)
「チベット交易とネワール人商人 ―チベット貿易の変容―」
研究会では、本COEプロジェクトとして2003年夏に行なった調査に基づく報告がなされた。最初に石井氏から、ビデオを活用しつつ、ネパール・チベット交易の担い手やネワールの特異性等について、歴史的視点に基づく説明がなされた。また研究史上におけるサキャ氏の研究の意義および聞き取り調査資料の内容の多様性についても説明があった。続いてサキャ氏はチベット交易を2タイプに分類し、従来、チベット動乱によって衰退したとされていた「ネパール・チベット間交易」だが、ラサ・カトマンズ間の幹線道路を通じた交易は継続していたことを示す貴重な証言を紹介した。またネワール人が交易によって得た利益で、文化財を構築・維持してきたことなど、興味深い論点が提示された。参加者から質問も活発になされ、最後に今後の調査への期待が述べられた。

2. 本班のテーマ(「移動」)にかかわる2003年度の調査活動の概要
当初の予定通り、班のメンバーにより以下の研究調査が実施された。

1) 石井傅、P. R. Shakya
時期: 2003年8月17日〜8月24日、
場所: ネパール、カトマンズ
ネパール、カトマンズの主にパタンの町において、1959年のチベット動乱前後に、ネパール-チベット交易に携わっていた(元)商人たちにインタビューし、当時の交易方法、生活・社会状況等について聞き取り調査、録画を行なった。順次、テープ起こしも続行中。

2) 今井昭夫
時期: 2003年11月14日〜11月25日
場所: ベトナム、ハノイ市とターイビン省
第二次世界大戦期の日本軍政下におけるベトナムでの日本軍政・日本軍についての聞き取り調査を行ない、7人の生存者の証言を録音することが出来た。

3) 寺内こずえ(本学博士後期課程)
時期: 2003年9月6日〜2003年9月28日
場所: カンボジア、プノンペン
カンボジアの同年生まれの女性に対する継続的なライフヒストリーの聞き取り調査を行なった。王宮の踊り子であった、現在芸術大学教授のある女性と、植民地期から踊り子であったその母親へのインタビューを中心に行なった。同インタビューにより、インタビューと身振りについての考察をより深めることを目的とした。

4) 張延紅(本学博士前期課程)
時期: 2003年9月2日〜9月22日
場所: 中国、吉林省延吉市
少数民族の女性のライフヒストリーの聞き取り調査を行なった。少数民族の女性の生活のなかでの地位や社会的地位、教育状況を探ることを目的としている。また、民族学校の学生たちの意識調査や学校文化の現状についても調査を行なった。

5) 野崎美穂(本学博士前期課程)
時期: 2003年4月13日、9月15日、9月23日
場所: 群馬県邑楽郡大泉町
(このほか、7月19日に江戸川区、8月4日に相模原市、8月30日に横浜市)
現在日本で生活する日系ブラジル人に聞き取り調査を行なった。移住サイクルと教育観・職業観とのかかわりを中心に調査を行なった。