日本学術振興会
21世紀COEプログラム


21世紀COEプログラム
(文部科学省)


東京外国語大学
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掲載日:06.02.14

2005年東京外国語大学 アチェ文化財復興支援室活動報告
I. 支援室設立の背景
 2004年12月26日にスマトラ島沖で発生した大地震とそれにともなうインド洋大津波は、インドネシアのアチェ州を始めとして、タイ、マレーシア、ミャンマー、バングラデシュ、インド、スリランカ、アフリカ東海岸などに甚大な被害を及ぼし、30万人近くの死者・行方不明者を出した。被災地の社会の復興には長い年月にかけての物質的・精神的な支援が必要となることが予想されている。
 本21世紀COEプログラム「史資料ハブ地域文化研究拠点」では、活動の一環として2003年からインドネシアの現地研究者と連携して、現地の史資料の修復・保存にかかわる活動をおこなってきた。その関係から災害の発生の直後にインドネシアの文書舘、図書館、大学関係者から東京外国語大学に対して、アチェの史資料を中心とする文化財の復旧・保存に協力して欲しいとの要請を受けた。これを受けて、2005年3月に正式にアチェ文化財復興支援室開設をすることになり、史資料ハブ地域文化研究拠点とアジア・アフリカ言語文化研究所 (ILCAA) の協力によって、その活動を進めることになった。

II. 目的と活動
 アチェ文化財復興支援室では、アチェの貴重な文化財である史資料の復旧と保存のために、日本およびインドネシアの研究者、専門家の活動の調整を行うことによって、短期的には被災した史資料の復旧に対する緊急支援を、また長期的にはアチェに存在する史資料の全体的な調査・保存のための研究支援を進めていくこととなった。アチェの文化財が保全され、文化財保護に資するのみならず、歴史文書が広く利用可能な状況となることにより、アチェの歴史及び文化の研究の進展に寄与することを目的としている。
 上記の目的を達成するために、支援室で、具体的には以下の活動を現在順次遂行中である。@インドネシアの関係各機関間の連携を円滑化し、アチェの主要機関に残された歴史文書の調査を実施し、目録を作成する。A上記調査に基づき、必要なものについては保存、修復の措置を施す。B電子化等により文書の内容を記録する。C現地における文書取り扱い担当者の育成及び技能向上のため、研修を実施する。D現地における文書学専門家の育成に協力する。
 今回の津波によってアチェに保存されている史資料文化財の多くが被害を受けたが、その被害について十分な情報がもたらされていない。これはもともとアチェにおいて史資料文化財の正確なインヴェントリーが作られていなかったことにも一因があると考えられる。これまでアクセスが難しかったアチェ現地に残る重要な歴史文書の情報を開示し、研究の発展を促すためにも、また将来再び起こる可能性がある災害に備えるためにも、史資料文化財の正確なインヴェントリーを作成し、必要に応じてマイクロフィルム化・デジタル化などの手段によってバックアップの体制を取ることが必要である。
 また、現地には被災した史資料を修復し保存するための技術や資材が十分に確保されていない。このような問題を解消するための一環として、アチェの現場で働く史資料保存修復の担当者に対して適切な保存修復技術指導を行っている。研修によって短期的には被災した史資料に対する緊急処理の方法を学ぶと共に、損害を受けた史資料の修復技術、長期的な保存対策について学んでもらう予定である。

III. これまでの活動詳細
 これまで支援室がおこなってきた活動のうち、史資料ハブ地域文化研究拠点の支援を受けたプログラムは以下の通りである。
1. 2005年1月
インドネシア国立イスラーム大学 (UIN) ・社会イスラーム研究所 (PPIM) の研究者のアチェ派遣・文書被災状況調査
2. 2005年5月25日〜27日
歴史文書修復技術の研修実施 (ジャカルタ)
(Pelatihan konservasi naskah kuno, arsip, dan dokumen:
belajar dari kehilangan di Aceh)
共催: 文化財保護・芸術研究助成財団、C-DATS
協力: PPIM-UIN、インドネシア写本協会 (YANASSA) 、インドネシア写本学会 (MANASSA)
3. 2005年8月17日〜24日
アリ・ハシミ教育財団所蔵写本の調査ならびにカタログ作成 (2006年度出版予定) 、タノ・アベ・イスラーム寄宿塾図書館予備調査
協力: PPIM-UIN、MANASSA/YANASSA、アル・ラニーリ国立イスラーム高等学院講師
4. 2005年11月19日
アチェ史研究会の開催 (東京・府中)
5. 2005年12月14日〜17日
歴史文書修復セミナーの開催 (バンダ・アチェ)
(Pelatihan Konservasi dan Penyelamatan Naskah di Aceh Pasca Gempa dan Tsunami/ Conservation of Manuscripts, Photos and Archives post Earthquake and Tsunami disaster in Aceh)
アチェ文書修復セミナーの様子 (クリックで拡大)
アチェ文書修復セミナーの様子 1アチェ文書修復セミナーの様子 2
共催: 文化庁、C-DATS
協力: アチェ州立博物館、PKPM-Aceh, MANASSA, インドネシア国立公文書館、東京文化財研究所
6. 2005年12月25日〜31日
アチェ民間所有文書の予備調査
協力: アチェ州立博物館、アル・ラニーリ国立イスラーム高等学院講師

IV. 連絡先・その他
アチェ文化財復興支援室の活動は、以下のサイトで公開している。
URL: http://www.aa.tufs.ac.jp/~kmiya/aceh-project/index.html

■お問い合わせ
21世紀COE『史資料ハブ地域文化研究拠点』(東京外国語大学)
〒183-8534 東京都府中市朝日町3-11-1
電話  042-330-5540
e-mail:
■交通案内
1) JR中央線「武蔵境駅」乗換、西武多摩川線「多磨駅」下車徒歩5分
2) 京王線「飛田給駅」下車徒歩20分、
  又は「飛田給駅」北口より外語大循環バス「東京外国語大学前」下車すぐ

http://www.tufs.ac.jp/common/is/university/access_map.html(府中キャンパスMAPを参照)