コロナ禍での救急蘇生法
2021.11.15
ほけせん便り 223号
東京外国語大学 保健管理センター
学校医 山内康宏
2021年11月12日
救急蘇生は、容態が急変した人の命を守るために必要な行動で、何よりも迅速に蘇生を始めることが大切です。救急蘇生により命を守るために必要な知識や手技を理解しておく事は大切ですが、実際にはその手順や手技の正確さよりも、急変した人に遭遇したら、躊躇せずに、覚えていることをわずかでも実施して、助けてあげるように行動することが大切です。
現在、新型コロナウイルスによる感染が不安な状況下ですが、厚生労働省から「市民による救急蘇生法」として、『コロナ禍における救急蘇生法の指針』が示されています。コロナ禍でも人の命を救うために、また自分の身を守りながら、少しでも救急蘇生を早く実施できるように、理解を深めましょう。
① 安全を確認する
誰かが突然倒れるところを目撃したり、倒れているところを発見した場合は、まず周囲の状況が安全かどうかを確認してください。自分自身の安全を確保することが優先されます。
② 反応を確認する
傷病者の肩をやさしくたたき、大声で呼びかけながら、反応を確認します。この時、傷病者の顔と救助者の顔が近すぎないことが大切です。
③ 119番通報をしてAEDを手配する
そばに誰かがいる場合は、その人に119番通報をする様に依頼します。また近くにAEDがあれば、それを持ってくるように頼みます。
④ 呼吸を観察する。
傷病者の胸と腹部の動きを見て、動いていなければ、呼吸が止まっていると判断します。
この時、傷病者の顔と救助者の顔が近すぎないように注意してください。
呼吸が止まっていれば心停止です。しゃくりあげるような途切れ途切れの呼吸も心停止と考えます。
⑤ 胸骨圧迫を行う
呼吸の観察で心停止と判断したら、ただちに、胸骨圧迫を行います。
エアロゾルの飛散を防ぐため、胸骨圧迫を開始する前に、マスクやハンカチ・タオル・衣類などで、傷病者の鼻と口にかぶせます。
圧迫部位:胸の左右の真ん中の「胸骨」の下半分です。目安は、胸の真ん中(左右の真ん中で上下も真ん中)です。
圧迫方法:片方の手のひらを胸骨の下半分にあて、もう片方の手をその上に重ねます。垂直に体重がかかるように両肘をまっすぐ伸ばし、圧迫部位の真上に肩がくるように姿勢を取ります。
圧迫の深さとテンポ:傷病者の胸が5センチ沈む様に強く、早く圧迫を繰り返します。圧迫のテンポは1分間に100~120回です。可能な限り中断せず、絶え間なく行います。
⑥ 胸骨圧迫だけを続ける
コロナ禍で成人への蘇生の際は、このまま胸骨圧迫だけを継続し、人工呼吸を行いません。
コロナ禍でない状況なら、胸骨圧迫(30回)と人工呼吸(2回)を組み合わせて行います。
⑦ AEDを使用する
AEDを使用して、音声メッセージに従う。AEDを使用する場合も、やむを得ない場合を除いて、胸骨圧迫をできるがけ絶え間なく、続ける。
⑧ 心肺蘇生を続ける
蘇生は到着した救急隊員と交代するまで続けることが大切です。効果がなさそうに見えても、諦めずに続けて下さい。
⑨ 救急隊の到着後に、救急隊員に引継いだ後は速やかに石けんと流水で手と顔を十分に洗う。
傷病者の鼻と口にかぶせたハンカチやタオルなどは直接触れない様にして破棄するのが望ましい。
何かご不明な点などありましたら、保健管理センターまでご相談ください。
参考HP:
日本医師会_救急蘇生法_「心肺蘇生法の手順」
https://www.med.or.jp/99/cpr.html
新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえた市民による救急蘇生法について
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000632828.pdf
救急蘇生法の指針2015
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000123021.pdf