新型コロナワクチンについて

2021.06.08

ほけせん便り218号
東京外国語大学 保健管理センター
学校医 山内康宏
2021年6月1日

ワクチンによる予防接種は、感染症の原因となる病原体に対する免疫ができる体の仕組みによって、感染症による病気への免疫をつくり、またその免疫を強くします。ワクチンは病原体(ウイルス・細菌等)そのもの(弱毒化・不活化)やその構成成分など(蛋白質成分・蛋白質の遺伝情報であるRNAやDNA)をもとに作ります。これまでのワクチンは病原体の一部の蛋白質を投与し免疫を作る仕組みでしたが、今回の新型コロナワクチンは蛋白質を作る遺伝情報であるRNAを注射して免疫を作る仕組みです。

一般にワクチンに期待される効果には、①感染そのものを防ぐ「感染予防」、②感染しても症状が出るのを防ぐ「発症予防」、③症状が出ても重症にならない様に「重症化予防」、④多くの人が免疫を持つことで社会全体が守られる「集団免疫効果」があるとされています。今回の新型コロナワクチンでは、現時点で新型コロナ感染症の「発症予防」効果と「重症化予防」効果があることが分かっています。感染予防効果については十分に明らかにはなっていませんが、最近では感染予防の可能性も報告されています。また、現状では集団免疫効果があるか否かについてはまだはっきりしていません。

現在、わが国で予防接種法における接種の対象となっているワクチンは、ファイザー社と武田/モデルナ社の2種類のワクチンです。何れのワクチンも海外での大規模な臨床試験により、発症予防効果が、ファイザー社のワクチン(3週間隔で2回接種:12歳以上)で約95%、武田/モデルナ社のワクチン(4週間隔で2回接種:18歳以上)で約94%であり、高い有効性が確認されています。

接種を受けることが出来ない人は、明らかに発熱している人(通常37.5℃以上)、重い急性疾患にかかっている人、本ワクチンの成分に対し重度の過敏症の既往歴のある人、上記以外で予防接種を受けることが不適当な状態にある人とされています。また、抗凝固療法を受けている人、血小板減少症または凝固障害(血友病など)のある人、過去に免疫不全の診断を受けた人、近親者に先天性免疫不全症の方がいる人、心臓、腎臓、肝臓、血液疾患や発育障害などの基礎疾患のある人、過去に予防接種を受けて、接種後2日以内に発熱や全身性の発疹などのアレルギーが疑われる症状がでた人、過去にけいれんを起こしたことがある人、本ワクチンの成分に対して、アレルギーが起こるおそれがある人は注意が必要とされています。

ワクチンの接種に伴う副反応は、注射した部位の痛み・疲労・頭痛・筋肉や関節痛等がみられることが報告されており、これまでの他の予防接種(例えばインフルエンザ)より副反応は出やすい状況です。特に1回目より2回目に副反応が出る可能性が高いことも言われています。ワクチンによる発熱や痛みに対しては、必要な際には解熱鎮痛剤を服用するなどで対応しますが、激しい痛みや高熱等症状が重い場合や症状が長く続く場合は、医療機関の受診が推奨されます。また、稀な頻度で、アナフィラキシー(急性のアレルギー反応:皮膚症状・消化器症状・呼吸器症状が急に起こり血圧低下や意識レベルの低下)が発生することも報告され、接種会場や医療機関ですぐに治療(薬の注射や点滴・内服等)を行うことになります。

現在は、高齢者を対象としたワクチン接種が進んでいる現状ですが、今後は高齢者以外の対象者の接種が進んでいく状況になると予測されます。是非、皆さんも新型コロナワクチンの予防接種を前向きにご検討ください。

新型コロナウイルス感染症に対する予防接種については、厚生労働省の「新型コロナワクチンについて」をご確認いただき、ワクチン接種に関する情報を入手されることをおすすめします。特に「コロナワクチンナビ」もわかりやすいサイトとなっていますので、ご確認ください。また、現在の新型コロナワクチンに関する情報は、首相官邸HPの「新型コロナワクチンについて」にも掲載されていますので、ご覧ください。

何かご不明な点などありましたら、保健管理センターまでご相談ください。

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