今回お招きしたのは、京王観光の長谷圭悟さんです。
現在推進されているサステナブルツーリズムの最前線について、具体的な事例をふんだんに交えながらお話しいただきました。
「消費する観光」から「社会を良くする観光」へ
オーバーツーリズムが社会問題となる中、観光には地域の環境や文化を守る「持続可能性(サステナビリティ)」が強く求められています。
しかし長谷さんはさらに一歩踏み込み、「観光が世界をより良くする」という力強いメッセージを投げかけられました。
特に印象的だったのは、サステナブルツーリズムに「教育」を掛け合わせるという試みです。
単なる見物で終わる観光を、地域の社会課題解決に主体的に関わる「きっかけ」へと価値転換させる。
ビジネスの枠組みを使いながら社会に変化を生み出そうとする、長谷さんの情熱が伝わる内容でした。
専門家であり、かつ開拓者であること
長谷さんは、旅行会社の実務家であると同時に、大学の研究者でもあります。
2つの肩書きに加えて長谷さんが大切にされていたのが「開拓者(パイオニア)」という肩書きでした。
新しい世界を切り開く方法として、1つの専門領域を突き詰めるやり方もあるでしょう。
これはひたすら深く深く掘り下げることによって、未知の世界へと到達しようとする掘削的アプローチと言えます。
一方、長谷さんが示してくれたのは、その深く掘った穴の中に留まるのではなく、一度地上へ出て、別の領域へと歩き出し、2つの領域を掛け合わせようとする方法でした。
実際、長谷さんは、理論と実践を行き来したり、教育と観光といった異なる領域を組み合わせたりすることを意識的におこなっておられます。
長谷さんのような深く掘った穴を横に繋げる手法は、掘削的アプローチに対して、架橋的アプローチと呼べるかもしれません。
複数の領域を繋ぐことで、新しい世界が拓かれる
1つの専門領域に邁進することで拓かれる道もあれば、複数の領域を渡り歩くことで初めて切り拓かれる「未知の世界」もあります。
専門領域を垂直に掘り進める掘削力を、異なる領域を繋ぐ架橋のために使ってみる。
そうすることで、自分の研究が社会の思わぬ場所で誰かの役に立つ。
人社系博士学生の新たな開拓者像を感じさせてくれる、全3回のシリーズを締めくくるにふさわしい講演となりました。