MIRAIプログラム・コーディネーターの青井です。
10月21日から22日にかけて、RA協議会第11回年次大会に参加してきました。
今年度の開催地は熊本。会場となった熊本城ホールでは、くまモンがお出迎えしてくれました。

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RA協議会は、リサーチ・アドミニストレーション業務に関わる人たちの情報交換の場です。
私が担当している博士学生支援も、研究活動を活性化するリサーチ・アドミニストレーション業務の一環として位置づけることができます。
昨年度は初めて年次大会に参加し、人社系博士学生を対象とするメンタリングの意義と重要性についてのポスター発表をしました。

 ▼RA協議会第10回年次大会の参加レポートはこちら
 人文科学分野における研究マネジメントの伴走支援

前回と同様、今回もMIRAIプログラムでの実践を紹介するために、ポスター発表にも申し込みました。
ポスターのタイトルは、「本がひらく異分野対話:博士学生を対象とした読書会の実践報告」です。

東京外国語大学多文化共創イノベーションリーダー育成プログラム(MIRAI)では、不定期に読書会を開催しています。
分野横断的な協働を通じて、複雑な社会課題を解決できる博士人材の育成を目的とするこのプログラムですが、本学の博士学生の多くは交流範囲が研究分野内にとどまり、学内での学生間交流も研究室を越えにくい状況にあります。
MIRAIプログラムでは、これまでにも異分野交流のためのポスターセッションなどを開催してきました。
しかしお互いの研究について知り合う機会とはなるものの、その先のより深いテーマについての対話を生み出すには、ポスターでは限界があると感じています。
例えば、研究で突き詰めたい究極の問いは何か、研究を通じて社会や世界をどう変えていきたいのか、といった問いは、互いの研究について深く理解するために有効なテーマだと考えられますが、初対面でいきなり話し合うには大きすぎるテーマです。

対話を促進する媒介として本を活用することを思いついたのは、MIRAI生を対象としたゼミがきっかけです。
自身のキャリア設計について、なかなか内省する機会が持てないMIRAI生に、本を通じて互いのキャリア観を交換し合う場を設けようと考えました。

※当日使用したmiroは、こちらからご覧いただけます。

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読書会と言うと、本が中心となりがちです。言い換えると、その本に何が書かれているのか、著者の意図をできる限り正確に理解することを目指すのが、従来の読書会でした。

しかしここで重視したのは、互いの意見や感想を共有し合うことでした。
本を読んだことで何を考えたのか、著者の言葉をどんな風に読んだのか、ときには自分の経験も織り交ぜながら、研究者のキャリアについて思うところを交わしあってもらいました。

本を媒介とすることで、対話はどのように変わるのでしょうか。私は、次のような効果が期待できると考えています。

  • (1) 本を紹介することが糸口になるので対話を始めやすい
  • (2) 本があることで、抽象的・本質的なテーマについても考えを深めやすい
  • (3) 著者の意見を引用・要約することで、自身の意見や感情を出しやすい

本学での実践例としては、MIRAI生を対象としたゼミしかまだありませんが、所属や肩書き、業種の垣根を越えた交流が、本を媒介にすることで可能になるのではないかと考えています。
その考えは、今回のポスター発表を経て、より確かなものになりました。

ポスターセッションでは、北海道大学、京都大学、琉球大学、東京都立大学など、多くのURAの方々に加えて、岡山大学図書館や医学系出版社の方にも興味を持っていただきました。
図書館や街の本屋での実践や、論文執筆技能トレーニングへの応用など、読書会の新たな展開の可能性の示唆をたくさんいただくことができました。
今回のポスター発表が、異分野間交流のための読書会が開かれるきっかけになっていると嬉しいです。

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なお今回は本を起点とした交流の実践を紹介しましたが、キャリア開拓支援の取り組みに対しても多くの関心をいただきました。
理工系と比べてアカデミア志向が強い人社系博士学生に対しては、従来のキャリア開拓支援が有効に機能しないことが多々あります。
次回はその試行錯誤についても紹介できればと思います。