4月5日(日)、東京外国語大学アゴラ・グローバルにて2025年度入学式が行われました。大学院入学式でMIRAI4期生の伊瀬知が新入生に向けて歓迎のあいさつをしました。
新入生のみなさん、これから一緒にがんばりましょう!
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新入生の皆さま、ご家族の皆さま、ご入学おめでとうございます。このような晴れやかな日に立ち会うことができ、大変嬉しく思います。
先ほど学長から、キャリアの選択肢を1つに絞りきらず、大学院での研究活動が、研究以外の場面でどのように活かされるのか考えておいてください、とのお話がありました。ではここでみなさんに質問です。 みなさんがこれから大学院で身につける知識やスキルを将来、どのように社会に役立てていきますか。
入学式の日にもう将来の話!?と驚かれるかと思いますが、私たちの専門である人文社会科学研究は何か技術を世に出して社会をよくすることはできません。では、私たちの研究や研究を通して得たことは、どう活かすことができるのでしょうか。
私は日本語教師として働く中で、日本語学習者の漢字学習を改善したいと思い、大学院に入学しました。先行研究を読んだり、収集したデータを分析したり、自分の研究に専念する日々を過ごしていました。しかし、目の前のことにのめり込めばのめり込むほど、社会から切り離された感覚になりました。卒業して社会に出たとき何ができるようになっているか体感が得られず、これでは大学院に入った意味がないんじゃないかとモヤモヤしていました。
そんなとき、学内で池間島でのワークショップの募集がありました。池間島は宮古島の離島の1つです。このワークショップの目的は何か具体的な調査の成果を得ることではありませんでした。 私たちに求められていたことは、島の方々と関係を構築しながら、社会課題である消滅の危機にある方言や文化について解決法を考えることでした。過疎地域の方言や文化は私の研究とは直接関係がありません。でも、何かできることを考えたいと思い、思い切って参加してみることにしました。
ワークショップには、異なる分野から大学院生が集まりました。私たちは様々な年代や立場の方に方言についての思いを聞き、方言を残すにはどうしたら良いか真剣に考えました。その中で一番印象に残っているのは、島の国語の先生から、「そんな風に考えられるんだ」という意外な言葉が返ってきたことです。授業と同じような感覚で何気なく述べた意見が、相手の新たな視点になったことに驚きを感じました。この現地での対話は、専門外の場でも自分が役に立てることを教えてくれました。
大学院で自分の専門性を高めることも、もちろん大切です。でも、それだけではなく、専門分野から自ら飛び出して、未知の世界に飛び込んでいくことも必要だということに気づきました。外に出なければ、研究をしている自分の価値を実感することはできませんでした。
現代の社会課題は複雑で単純に解決ができないと言われています。社会を少しでも良くするためには、既存の分野、境界を自ら越えていき、様々な人と協働できる力が必要です。この力はどんなキャリアを選んでも必要な力です。この力を大学院で身につけることが、私たちの研究やスキルを社会に還元していくことに繋がるのではないでしょうか。
これから、「これは自分の研究に関係ないしな」とか「これ、あんまり知識ないしな」と思うことがあると思います。でも、そんなときこそ、躊躇せず、気軽に挑戦してみてください。研究室では得られない発見がそこにはあります。
挑戦の先に何が起きるか、どんな新しい自分に出会えるのか、予測できないことを楽しみましょう。
これから、みなさんと一緒に学び合えることを楽しみにしています。 本日は本当におめでとうございます。ありがとうございました。
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東京外国語大学2025年度入学式 https://www.tufs.ac.jp/NEWS/trend/250405_1.html