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2023年12月16日〜22日に池間島ワークショップが行われました。本記事では全体の振り返りとして、ワークショップの内容と参加した学生の感想をご紹介します。

宮古島市池間島にて約1週間、消滅の危機に瀕する方言や伝統文化や社会についての聞き取りをしながら、以下5つの活動の実体験をすることを目的としたワークショップに参加しました。

① 話者やコミュニティーとの関係構築

② 言語使用実態・言語意識に関する情報の収集

③ 多様な言語資料の収集と整理

④ 伝統的生活の社会的・文化的情報の収集

⑤ コミュニティーのニーズ・課題の調査および課題解決法の考察

このワークショップは、本学中山副学長と池間島で言語調査を長年行ってきた大野先生により主催され、参加者はMIRAI生の宮本、小林(美奈)、小田、石川と、修士課程在学中の伊瀬知、米村でした。

池間福祉センター(きゅーぬふから舎)に場所をお借りし、主に池間方言話者である男性2名、他にもコミュニティの方数名に方言および地域の習慣、歴史、文化等を教えて頂きました。その他、公民館で行われている学童、池間小・中学校を訪問しました。

今回のワークショップには、言語学と社会学が専門の院生が参加しており、互いの専門性を活かし、助け合いながら調査を行うことができました。毎日夕食後にその日の発見をシェアしたり、次の調査の方向性を話しあう中で、それぞれの興味関心が異なり、あらゆる視点からの意見交換ができたことはいい経験になりました。また、民家を借りて一緒に共同生活をする中で、生活面でも協力できたのはフィールド仲間ができたようで心強かったです。

<大まかな日程>

午前午後
12/16 (土) 移動(東京→宮古島)
12/17 (日) 聞き取り調査 島散策、買い出し
12/18 (月) 聞き取り調査 島散策、買い出し
12/19 (火) 聞き取り調査 協力者の方に島を案内してもらう、小学校訪問
12/20 (水) 雪塩ミュージアム(宮古本島) 買い出し
12/21 (木) 聞き取り調査 公民館訪問、協力者を招いての食事会
12/22 (金) 聞き取り調査 移動(宮古島→東京)

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島内を案内してもらっているところ

<参加者から一言>

宮本

私は沖縄本島と台湾の子どもの貧困問題や地域づくりに関する研究を行っているため、池間福祉センターの代表者およびスタッフ2名、学童のスタッフ1名から聞き取りを行うことができ、沖縄小離島の厳しい現実や土着の知恵を学ぶことができとても良かったです。池間島をまた訪れたいと思います!

石川

私は言語学を専門としていますが、自分の知らない言語を聞き取り、一から分析する体験は初めてでした。宮古語池間方言は日本語と同じ日琉諸語の一つで、日本語と共通する点もある一方で違う点も多くあります。それを知り、分析することは、自分の今後の研究の糧になったと同時に、「心が震える」(つむぬふりーうい:池間方言でワクワクすることを表す表現)経験でした。このように、言語の多様性に直に触れることで、言語に対する自分の関心の原点に改めて気づかされました。

小田

普段は英語を中心とした社会言語学に取り組んでおり、日本の社会言語学的トピックに関して調査するのは初めてでした。昔使われていた方言札に関心があり、聞き込みを行いました。文献で記述されている内容を読むのと、経験者から実際に話を聴くのとでは受ける印象が違った点が心に残っています。今回は研究分野の異なる参加者と一緒に調査を行う中で、それぞれの興味や得意分野を生かして協力できたのもよかったなと思います。

小林

私は日本における中国人患者との医療コミュニケーションを研究しております。今回は離島で方言の調査に加わり、言語に関わる生活環境や、習慣、そしてコミュニケーションの様子を観察しました。「方言を使う高齢者の気持ちが医師に伝わらない」、「時代とともに方言も変化する」、「高齢者患者を見守りした経験」等の話を聞くことができました。また、参加メンバーのそれぞれが、研究に対する着目点及び方法論、役割分担の姿勢も印象的でした。とても充実した楽しい一週間でした。

伊瀬知

私は日本語教育における漢字学習の研究をしています。「んぬ、すでぃがふー(昨日、ありがとう)」と話す池間方言に初めて触れ、改めて方言・言語の多様さを感じました。池間に住む方々との関係を構築しながらする調査は、自身の研究の可能性を広げる経験となりました。異分野の参加者と互いの視点や調査方法を吸収しながら、臨機応変に進めていく過程も勉強になり本当に濃厚な時間でした。

米村

私の専門は現代日本語(共通語)で、普段は家か大学で研究を行うことがほとんどです。そのため、フィールド調査という、現地に赴き、その土地の文化に触れながら、地元の方々との交流を通じて調査を進めていくという過程一つ一つが新鮮でした。雑談から面白いテーマが浮かんだり、新たなことを知れたりと、フィールド調査の醍醐味を少しながら知ることができたように思います。

これから参加者それぞれからの調査報告エッセイも投稿する予定ですので、そちらも楽しみにしていてください。