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ドイツのアフリカ研究の紹介

2022年1~3月

村橋勲特任研究員がドイツ・バイロイト大学の先進的アフリカ研究プロジェクト「アフリカ・マルティプル(Africa Multiple)」への参加を終えて、3月12日に帰国しました。ドイツでは、バイロイト大学だけでなく、他のアフリカ研究センターも訪問しました。ここでは、アフリカ・マルティプルの概要とドイツのアフリカ研究について簡単に紹介します。

アフリカ・マルティプル(バイロイト大学)

ドイツ、バイエルン州にあるバイロイト大学は、1975年創立の公立大学です。アフリカ研究センター(IAS)は大学創立時から設けられており、大学図書館に所蔵されているアフリカ関連図書の数はドイツ国内では2番目の規模となる。また、バイロイト市内にあるイワレワハウス(Iwalewahaus)は、アフリカのコンテンポラリーアートやプレゼンの発表などを行う大学施設です。*Iwalewaは、ナイジェリアのヨルバ語で「内なる美」を意味する。

バイロイト大学は、2012年に学際的なアフリカ研究推進センターである先進的アフリカ研究バイロイトアカデミー(Bayreuth Academy of Advanced African Studies)を設立した。そして、同研究センターのアフリカ・マルティプルプロジェクトが、2019年からドイツ研究振興協会(DFG)のエクセレンス・クラスターに選ばれたことで、ヨーロッパのアフリカ研究センターとして大きな影響力を持つようになっている。本プロジェクトの目玉のひとつとして、フェローシップ制度が挙げられ、毎年、アフリカ、欧米、アジアから人文学・社会科学の若手アフリカ地域研究者を公募している。たとえば、2019-2020年は30人(アフリカから14人、アジアから2人)、2020-2021年は24人(アフリカから8人、アジアから2人)、2021-22年は11人(アフリカから5人、アジアから2人)、2022-23年は15人(予定、アフリカから7人、アジアから0人)となっている。フェローに選ばれた研究者が、1~10ヶ月間、バイロイトに滞在してさまざまなプログラムに参加することになる。

本プロジェクトは、Knowledges, Moralities, Learning, Arts&Aesthetics, Mobilities, Affliationsといったリサーチセクションに分かれており、各セクションに教授、ポスドク研究者、博士課程研究者などが参加している。アフリカ研究を再設計するという目標が示すように、各セクションは同じ専門分野の研究者だけから構成されるわけではなく、複数の分野の研究者から構成されており、アフリカ研究における新たな枠組みや理論構築を目指していると言えるだろう。

各セクションの中には、さらにそれぞれの教授が担当するコロキウムがあったり、特定の研究トピックの下で集まる若手研究者のグループが存在していたりするため、プロジェクト全体の構造は複雑かつ多層化している。また、プロジェクト全体で一年間の中心的テーマが設定されており、そのテーマに関連したセミナーなども開催される。たとえば、2021-2022年はMedialities、2022-2023年はSpatialities、2023-2024年はTemporalitiesがプロジェクト全体の年間テーマとなっている。さらに、本プロジェクトは、アフリカの協定校との協力体制も強化することを狙いとしている。協定校としては、ラゴス大学(ナイジェリア)、ワガドゥグ大学(ブルキナ・ファソ)、モイ大学(ケニア)、ローズ大学(南ア)があり、これらの大学が行う各研究プロジェクトも本プロジェクトの関連セミナーとして開催されている。

本プロジェクトは、オンライン化されたワーキングペーパーを始め、すでに数多くの成果出版物を出版している。詳細はこちら

なお、村橋特任研究員が参加していたグループは、Mobilitiesであり、主に、人文地理学、人類学、歴史学、政治学を専門とする研究者が参加している。グループのセミナーの他、ホスト教員であるアンドレア・ベーレンツ教授(人類学)のコロキウムに参加した。本プロジェクトには、仏語圏のアフリカ研究者も多く参加するため、セミナー(オンライン)によっては英語・仏語の両方で行われている。

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【他大学のアフリカ研究センター】

村橋特任研究員がドイツ滞在中に訪問したアフリカ研究センターとして以下の2つを紹介する。いずれもフランクフルト・アム・マインにある。

フロベニウス研究所(Frobenius Institute)

1925年設立のドイツでもっとも古い人類学の研究機関。民族誌、写真、壁画などの膨大なコレクションで知られている。コレクションの一部は、オンライン化されているためウェブサイトを通じて、実際の写真を見たり、その使用許可を申請できる。ヨハン・ヴォルフガング・ゲーテ大学と提携しており、さまざまな研究プロジェクトの他、民族学博物館などと展示開催を行っている。

ヨハン・ヴォルフガング・ゲーテ大学(ゲーテ大学フランクフルト)アフリカ研究センター(Goethe University Frankfurt, ZIAF)

2003年に設立された学際的なアフリカ研究センターであり、人文学、社会科学に関するさまざまな研究プロジェクトが実施されている。

【ドイツアフリカ学会(VAD)】

ドイツでは、ドイツアフリカ学会の学術大会が2年毎に開催されている。

2022年大会は、Africa-Europe: Reciprocal Perspectivesと題し、2022年6月7日から10日の期間においてフライブルク大学主催の下、フライブルクで開催される。初の完全ハイブリッド形式での学術学会となるため、日本からのオンライン参加も可能である。参加希望者は、事前の参加登録が必要となる。