第96回ASCセミナーは、『日本におけるアフリカ人留学生招致――その現状と課題』と題し開催します。リサーチしてみてわかったことなどを日本の留学生政策を踏まえて、その現状と課題の話をASCセミナーとしてお話します。
現代アフリカ地域研究センター長の武内教授とリサーチアシスタントとして王キヨ氏、劉瀟瀟氏(東京外国語大学大学院共同サステイナビリティ研究専攻)、そしてコメンテーターとして高橋 基樹氏(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科教授)が登壇します。
海外からの留学生を雇用希望の方々や少しでも興味のある方は是非ともご参加ください。
◆題目: 日本におけるアフリカ人留学生招致――その現状と課題
◆要旨:現代アフリカ地域研究センターは、アフリカからの留学生招致に力を入れてきました。現在、そのためにご寄付を呼びかけており、近々クラウドファンディングも開始します。なぜアフリカから留学生を招く必要があるのでしょうか?また、日本にはどのくらいのアフリカ人留学生がいるのでしょうか?本セミナーでは、日本の留学生政策を踏まえて、アフリカ人留学生招致の現状と課題についてお話しします。あわせて、リサーチアシスタントの協力で調査した中国の状況も紹介します。
◆講演者:
武内進一 氏:東京外国語大学現代アフリカ地域研究センター長
王キヨ 氏・劉瀟瀟 氏(東京外国語大学大学院共同サステイナビリティ研究専攻(リサーチアシスタント)
◆コメンテーター:高橋基樹 氏(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科教授)
◆日時:2024年11月18日(月) 17:40~19:10(日本標準時)/ 8:40~10:10(グリニッジ標準時)
◆場所:ハイブリッド 対面(東京外国語大学 研究講義棟 227教室)& オンライン(Zoomミーティング)
◆使用言語:日本語
◆参加費:無料
【参加をご希望の方は、こちらより事前にお申し込みください。】もしくはQRコードより事前申し込み願います。
定員:対面200名 ・ オンライン300名
申し込み〆切:2024年11月18日(月)正午 ※ 定員に達し次第締め切らせていただきます。
※ Zoom情報は事前登録の際に登録したメールアドレス宛てに返信メールとして送られます。
◆共催:東京外国語大学 大学の世界展開力強化事業(アフリカ)
【開催報告】
第96回ASCセミナーは、対面20名、オンライン70名の参加がありました。多数の質問が寄せられ、時間の関係で答えられないものも多くありました。以下、簡単ですが、いただいたご質問のうち、お答えできるものについてお答えします。
日本は、個々の大学の受入窓口が、留学希望者の学部入学/大学院進学の資格審査を個々に対応していて、個々の大学が試行錯誤しながら対応しているというのが現実だと思います。日本の大学が入学/進学資格を確認するにあたり、留学を志す人たちに不利益にならないように、かつ正しく確認するために、何か効率的な方法が東京外国語大学や京都大学として何かございましたら、個別の国限定でもかまいませんので、教えてください。
→セミナーでもお答えしましたが、協定校との間に信頼関係を築くことができれば、この問題はかなり軽減されます。特定の教員でも、国際交流担当職員でもいいのですが、誰か一人信頼関係を持ってコミットしてくれる人が先方にいると、だいぶ状況が変わると思います。
留学生をめぐっては、「交流」という言葉が頻発するのが現状だと思います。「交流」や「親善」などというのはかなり以前から(国などによって)強調されている点だと思いますが、理想ばかりが強調されて、現実が追いつかない、ということが、金銭面以外で何かありますでしょうか。例えば、admissionに関するノウハウについては現場の個々の大学任せで、国による具体的な方針や方法(資格確認も含めて)の提示が不十分で困っている、などということはありますか。
→おっしゃる通り、留学生交流を進めようとすれば、様々なノウハウやマンパワーが必要になります。大学の教員や事務部門のスタッフが減少する中で、国際交流担当者の負担が非常に増えていることは大きな問題です。
アフリカ某所での個人的な実体験として、教育システムや学位や職位その他の考え方、事務手続きの慣例などについて日本との違いがあるように感じます。受け入れ側は、日本の教育システムを「スタンダード」として、さまざまな書類を所定のやり方でこまごまと提出するように求めることで、留学生が来日するハードルが高くなっているということはないでしょうか?
→そのような側面は十分留意する必要があると思います。そうした事態が起きている可能性が高いです。
今日のような場に、留学生を受け入れるための窓口として、手続きを引き受ける事務の方がいらっしゃらないことは、特に問題ではないのでしょうか。文科省や国が掲げる理想に、個々の大学という現場がついていけないのと同じように、教員の方だけが理想やポリシーをおっしゃっていることに、事務の方々はついていけない、ということはないでしょうか。
→留学生受入れは、教員側と事務側がうまく連携を取らないと進みません。幸い、セミナーには学内の留学生受入れに関するお仕事をなさっている職員も参加してくれました。教員だけではうまく行かないという点は、肝に銘じています。
留学生の受け入れ、特に高度人材の育成を考えたときに出口戦略に疑問を持っています。獣医・工学では大学の講師や省庁関係者が日本で学位を取得し本国へ戻るパターン、博士の場合には学位を取得した大学で教職につくパターンが多いように見受けます。これについて、文系分野での状況はいかがでしょうか?また、どのような形が理想的だとお考えでしょうか?(分野にもよると存じますので括るのは良くないですが...)
→出口戦略について、十分議論されてきたとは思えません。ABEイニシャティブについて、2019年TICAD7の横浜行動計画は、期待される効果として「日本企業への就職支援」を挙げていますが、日本企業への就職に日本語がネックになっています。
South Africa-Japan University Forum (SAJU)同様にケニアガーナ といった、アフリカ人日本留学経験者の同窓会がありますが、このネットワークは、今後アフリカ諸国の学生、研究者が日本の大学や研究機関を留学先の視野に入れる中で、有効に活用されるべきではないかと思っております。現在すでに、実施されている活動や、今後の展望について、ご教示いただけたらありがたく思います。よろしくお願いいたします。
→留学経験者のネットワークは非常に大切だと思います。JICAでは最近になって着手されてきたようですが、大学でも組織的に進めるべきだと思っています。十分にできていないのが現状ですが。
(2024年11月20日時点)