◆編者:鈴木玲治・大石高典・増田和也・辻本侑生
◆書籍名:焼畑が地域を豊かにする――
◆刊行日:2022年3月31日
◆書籍概要:
山を焼いて耕作地を切り拓き、作物を育てる焼畑。草木の灰や焼いた土から生じる養分は、肥料になります。日本では高度経済成長期に衰退しますが、その火は現在まで途絶えることはありませんでした。なんといま、焼畑を復活させる地域が増えています。
「環境破壊」だなんて、とんでもない!化学肥料や除草剤が不要、作物はおいしく育ち、カーボンニュートラル。在来野菜を活かした食・森づくり・地域おこしとも結びつきながら、現代によみがえっているのです。
「古くて新しい」焼畑の魅力と可能性に迫ります!
◆著者等からのコメント:
日本国内各地で復活・再興の動きが活発化している焼畑を紹介しつつ、その魅力や現代的な意義について考える一冊です。新潟、山形、静岡、福井、高知、島根、宮崎、熊本の焼畑実践者やグループからの寄稿と滋賀県長浜市で15年近く続けている滋賀県長浜市での焼畑の試行錯誤からわかってきたことがまとめられています。
第3部の事例研究で詳しく取り上げられる滋賀県長浜市での焼畑には、東南アジア(インドネシア、タイ、マレーシア、ミャンマー)やアフリカ(コンゴ民主共和国、カメルーン)の焼畑を見てきた研究者(わたしもそうですが)が何人も参加していて、おのずと比較地域研究にもなっています。
農学、生態学、文化人類学、農村社会学などに関わる学術的な内容を含みますが、海外のものも含めて、焼畑への誤解がひどい日本の一般社会向けにわかりやすく、「ですます調」で仕上げました。(おそらく)世界初の焼畑マンガもお楽しみください。
◆目次:
◎第1部 焼畑は「環境破壊」か――みなおされる現代の焼畑
1 今、なぜ焼畑なのか? 新たな可能性を紡ぎだす試み 鈴木 玲治
2 焼畑の現代史――「消滅」から継承・再興へ 辻本 侑生
3 焼畑は「よくわからないけれど面白い」 大石 高典
◎第2部 全国にひろがる焼畑の輪――焼畑が豊かにする地域
4 伝統の継承と復興
4-1 継続は力なり――宮崎県椎葉村 焼畑蕎麦苦楽部 椎葉 勝
4-2 焼畑から森づくりへ――静岡県「井川・結のなかま」の活動 望月 正人・望月 仁美 聞き手・構成:大石 高典
4-3 蕎麦屋と焼畑――静岡県 焼畑蕎麦にあこがれて 田形 治 聞き手・構成:大石 高典
4-4 焼畑実践の魅力 ――静岡県静岡市 井川における実践から 杉本 史生
5 焼畑カブのブランド化
5-1「焼畑あつみかぶ」ブランド化の軌跡――山形県鶴岡市 温海地域 中村 純
5-2 焼畑を活用した資源の循環利用で持続可能な森林づくり――山形県鶴岡市 温海地域 鈴木 伸之助
5-3 「灰の文化」が育む赤カブ栽培――新潟県村上市 さんぽく山焼き赤かぶの会 板垣 喜美男
6 村外者、移住者と焼畑実践
6-1 「遊び」で続けた30年――福井市味見河内町 福井焼き畑の会 福井焼き畑の会 聞き手・構成:辻本 侑生
6-2 7世代先の森づくり――熊本県水上村 水上焼畑の会 平山 俊臣
7 教育・研究と焼畑実践
7-1 焼畑は山おこし・村おこし――高知県吾川郡仁淀川町 山口 聰
7-2 焼畑再生という試みのちいさな幾きれか ――島根県仁多郡奥出雲町 面代 真樹
7-3 創造=発明作業としての焼畑 焼畑は骨董技術ではない――島根県仁多郡奥出雲町 小池 浩一郎
(コラム)焼畑のやり方として書籍にはまとめられていない、あるいは発明かもしれない焼畑の技法 小池 浩一郎
◎第3部 山を焼く、地域と学ぶ――滋賀県⻑浜市余呉町
8 余呉の焼畑プロジェクトと「火野山ひろば」 増田 和也
9 余呉の焼畑を発展的に受け継ぐ 黒田 末寿
10 暮らしを支えた「原野」――女性たちの語りにみる焼畑と山の草地利用 島上 宗子
11 焼畑と土壌・昆虫・植物 鈴木 玲治
12 在来品種「余呉のヤマカブラ」を選抜採種する 野間 直彦
13 焼畑のヤマカブラを食べ継ぐ――おいしさに気づき、変化をめざして 河野 元子
14 結節点としての焼畑――外部者の関わりが生み出す可能性 増田 和也
(コラム)野ウサギ、ワラビ、サシバ舞う「くらしの山野」――子らと先人は出会う 今北 哲也
【番外編】漫画でわかる! 大学教員が焼畑をはじめてみた 原作・火野山ひろば/漫画・西村 佳美