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研究成果

大石高典【研究発表】「人類学の知を子どもと共有するために――狩猟採集民バカ・ピグミーに学ぶワークショップを通して」

2019/08/25

◆発表者:飯塚宜子、園田浩司、田中文菜、大石高典

◆発表日:2019年8月25日

◆発表場所:日本環境教育学会・第30回年次大会(山梨)

◆発表タイトル:人類学の知を子どもと共有するために――狩猟採集民バカ・ピグミーに学ぶワークショップを通して

◆要旨:

「人と自然」は近代思考的な二分法ではなく、連続的な関係性のなかに存在するという思考法を学ぶことは環境教育の大きな役割である。社会・政治経済・文化・宗教的活動といった人の様々な文化的営みが、自然と不可分に存在してきたことを示す膨大な事例は、人類学や地域研究など現場の科学に証されてきた。環境倫理学においても、そのようなシステムの全体性に学ぶことが議論されてきた(鬼頭 1996) 。
本実践では、地域社会に根ざした、自然と不可分な文化的営みに、児童らがどのように触れることで、 自文化とは異なる自然観や暮らしに対する認識が広がるかを探求してきた。具体的には、カナダ先住民、アンデス先住民、カメルーン先住民、そしてモンゴル遊牧民らの社会・文化を日本の市民や児 童らが学ぶ各2時間のワークショッププログラムを人類学者らと開発し、日本の教室で実践してきた。ある時代・地域における個別の行為は、当該社会の文脈のなかで個別の意味を持つ。他者理解を目的とするフィールドワークにおいて人類学者は、特定の場面や状況に身を置くことにより行為の意味を理解する「状況的な学習」(レイヴ&ウエンガー1993) に巻き込まれる。そこでは他者との相互行為を通して、 自文化と切り離せない自らの経験や身体性に照らしつつ解釈を構築していく。このような特徴を有するフィールドワークを疑似体験してもらう方法として、われわれは教室のなかで行う「演劇手法」を導入した。
本発表では、アフリカ中部の熱帯雨林において狩猟採集を生活世界の基盤としてきたバカに学ぶ実践事例を取り上げる。児童らは豊饒な熱帯雨林を想像させる空間すなわち教室で、多様な生態的知識を持つバカに「なって」みて、遊び、狩猟し、ゾウを倒し、 獲物を公平に分配し、 最後に精霊ジェンギに出会う 。この演劇への参加を通して、 学習者はバカが暮らす森をどのように意味づけていったのか、またその学習がどのように達成されたかを実証的に示すために、 ①学習者がアンケートに記述した「 自らの考え」のテキスト分析と、 ②動画資料に記録された学習者とファシリテーターらの会話の分析、から検証を試みる 。

• 鬼頭秀一『自然保護を問いなおす』1996 ちくま新書
• ジーン・レイヴ、エティエンヌ・ウエンガー 『状況に埋め込まれた学習』1993 佐伯眸訳、産業図書

◆キーワード:人と自然、文化の多元性、構成主義、フィールドワーク、演劇手法による教育