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研究成果

井上直美【調査研究報告】「グローバル市場で求められる『責任あるサプライチェーン』とは? ―世界の日系企業 800 社アンケートから読み解くギャップとリスク―」

2019/03/01

◆発表者:井上直美

◆発行日:2019年3月

◆発表タイトル:グローバル市場で求められる『責任あるサプライチェーン』とは? ―世界の日系企業 800 社アンケートから読み解くギャップとリスク―

◆概要:

本稿は、アジア経済研究所が欧州、アフリカ、ASEAN、南西アジアで事業運営を行う日系企業を対象として実施した「日系企業の責任あるサプライチェーンに関するアンケート調査」結果を、人権デューディリジェンスのプロセスに即して分析を試みた。世界の日系企業が取り組む「責任あるサプライチェーン」の現状を把握し、日系企業が「責任あるサプライチェーン」を実現するためにはどのような方法が有効であるかを考察した。分析結果からは日系企業が取り組む「責任あるサプライチェーン」の現状とグローバル市場から求められる責任ある企業行動にはギャップが存在することが明らかになった。世界の日系企業は、人権リスクを正しく評価し「責任あるサプライチェーン」を実践することで、グローバル市場における競争力を高められる一方、その努力を行わなければ、グローバル市場における競争力を落としてしまう恐れがある。

分析の結果から明らかになった要点は次の3つである。第1に、日系企業の責任あるサプライチェーンへの取り組みの現状として、責任あるサプライチェーンを実践するには自社のオペレーションが人権に与える影響への理解が不足している。自社の事業と人権の関係を正しく把握し理解して対応することによって多くの利点を得られる一方、認識不足のまま放置することは人権リスクが将来のビジネスリスクにつながる恐れがある。第2に、日系企業はビジネスと人権の観点を事業に組み込むことで競合優位性を高められるポジションにあり、責任あるサプライチェーンの実践を目指すことが、企業にとって利点になることである。第3に、日系企業が責任あるサプライチェーンを実践するためには、積極的にステークホルダーと協働し、エンゲージメントを活用することが有効である。また、リソース不足など様々な課題を抱える企業は、公的支援による詳細な情報や相談窓口の提供等への期待が高く、公的機関の果たす役割が大きい。以上の点から、「責任あるサプライチェーン」を実現するためには、企業内外の様々なリソースを活用しステークホルダーと協働し、効果的な人権デューディリジェンスを行うことが有効であることが結論づけられた。

なお、当該分析結果を2018年12月21日に開催したアジア経済研究所専門講座「グローバル市場で求められる『責任あるサプライチェーン』とは?――世界の日系企業800社アンケートから読み解くギャップとリスク――」にて報告した(プログラムは別添のとおり)。国連ビジネスと人権フォーラムにおける最新の動向を交えながら、日本企業の責任あるサプライチェーンの実現について、企業・労働組合・メディア・政府からの専門家とパネルにて議論した。本稿はその議論および参加者からのフィードバックを踏まえて執筆したものである。