【研究費の枠組み】国立民族学博物館共同研究(若手)
【研究期間】2016-2018年度
【研究代表者】大石高典(東京外国語大学現代アフリカ地域研究センター)
【研究目的】
本研究は、現代の日本を含む世界各地における狩猟を、消費の視点からとらえることを目的とする。狩猟は、文化人類学や日本民俗学では、これまで伝統的な生業として捉えられることが多かった。しかし、ブッシュミート交易など農山村地域から都市圏への獣肉供給の需要増大に伴う商業狩猟に加えて、その延長上に国際的な市場流通を視野に入れた産業狩猟も見られるようになってきている。そこで、(1)近年、とくに国内で獣害対策の観点から見直されている狩猟と野生獣肉(ジビエ)の活用をめぐる現場の取り組みを民族誌的な一次データをもとに検討するとともに、(2)世界各地における野生獣肉の流通・消費の事例と比較することで、日本における野生獣肉消費をめぐる動向をグローバルな状況のなかに位置づける。とくに、消費者による野生獣肉の消費のありかたの変化が、解体や分配の方法、狩猟法(狩猟道具や動物の殺し方)、精肉方法とその背景にある衛生概念、流通にかかわる組織の編成、食物や環境に関する人々の意識を変容させている可能性に着目し、海外の関連事例との比較を試みることで、国内における取り組みの独自性と潜在的な問題点について考察を深める。
【研究会の開催】
2016年10月15日(土)13:30~18:00(国立民族学博物館 大演習室)
大石高典(東京外国語大学)「共同研究の趣旨説明―目的・方法・ねらい」
全員「自己紹介と共同研究への期待・提案など」
全員「今後の計画についての討議」
2016年10月16日(日)13:30~18:00(国立民族学博物館 大演習室)
安田章人(九州大学)・「猟師としての実践研究からみた日本における狩猟と獣肉消費」
比嘉理麻(沖縄国際大学)・「ブタとの関わりと断絶――沖縄における豚肉の大量消費と養豚場排斥運動」
総合討論:消費からみた狩猟研究の理論と方法
2017年1月28日(土)13:00~18:00(国立民族学博物館 第4演習室)
「総合地球環境学研究所持続可能な食の消費と生産を実現するライフワールドの構築(FEAST)プロジェクト」共催
大石高典(東京外国語大学)「趣旨説明と獣肉に関する研究の動向」
田村典江、小林舞(総合地球環境学研究所)「ローカルフードシステムの視点から考える狩猟肉利用」
高柳敦(京都大学)「野生動物の価値と野生動物利用-野生動物文化の形成へ-」
William Kamgaing TOWA(京都大学)「Evaluation of Mammal abundance and Bushmeat Hunting patterns to Enhance Sustainability in Central Africa: A comparative analysis from two Communities in Southeast Cameroon」
討論:野生動物管理と持続可能な獣肉利用
2017年1月29日(日)10:00~12:30(国立民族学博物館 第4演習室)
「総合地球環境学研究所持続可能な食の消費と生産を実現するライフワールドの構築(FEAST)プロジェクト」共催
大石高典(東京外国語大学)「1日目の論点整理と2日目への導入」
兵田大和(同志社大学)「京都近郊における獣害管理と都市住民による狩猟の可能性と問題点」
総合討論:現代日本における獣肉利用の新しい担い手との協働と課題
2017年7月29日(土)10:00~17:00(国立民族学博物館 2階 第7セミナー室)
「第8回マルチスピーシーズ人類学研究会(科研「種の人類学的転回:マルチスピーシーズ研究の可能性」)」共催
近藤祉秋(北海道大学)、合原織部(京都大学大学院)「Industrialization of Deer Hunting in Nishimera, Miyazaki」
大石高典(東京外国語大学)「アフリカ都市住民の動物蛋白源嗜好性――コンゴ共和国ブラザビルの事例」
John Knight(Queen’s University Belfast)「Hunters and the meat–animal association」
山口未花子(岐阜大学)「西表島のイノシシ猟の地域比較――肉の嗜好と捕獲・止め刺し・解体方法」
総合討論
2017年12月16日(土)13:00~18:00(国立民族学博物館 第3演習室)
大石高典(東京外国語大学)「趣旨説明:獣肉をめぐる犬と人の関係」
立澤史郎(北海道大学)「屋久島のシカ肉ビジネスに見る森-人-犬関係」
大道良太(大道自動車)「狩猟者から見た日本の狩猟犬事情」
合原織部(京都大学)「椎葉村における猟犬、猟師と獣肉――猟犬の死をめぐる考察から」
藪田慎司(帝京科学大学)「コメント」
池谷和信(国立民族学博物館)「コメント」
総合討論
2018年1月28日(日)13:00~17:30(国立民族学博物館 第3演習室)
大石高典(東京外国語大学)「趣旨説明:獣肉利用の現代的変容と倫理」
服部志帆(天理大学)・小泉都(京都大学)「屋久島における狩猟と野生動物利用の変容――1950年代と現代の比較から」
田村典江(総合地球環境学研究所)・小林舞(総合地球環境学研究所)「日本の主要都市における獣肉食についての消費者アンケートの調査結果報告(仮)」
安井大輔(明治学院大学)「消費社会における食の倫理について――肉食や狩猟に関する議論を中心に」
総合討論
2018年6月30日(土)13:00~17:30(国立民族学博物館 第1演習室)
全員「『農業と経済』ジビエ特集号について執筆者解題と合評」
高橋美野梨(北海道大学)「標準化の国際政治:EUの公衆衛生観念の域外伝播を事例に西欧的価値の国際規範化を考える」
小林舞(総合地球環境学研究所)「ブータンにおける肉食の罪を巡る文化と食の主権に関する考察」
総合討論
2018年7月1日(日)9:30~12:00(国立民族学博物館 第1演習室)
野林厚志(国立民族学博物館)「民博における共同研究会と成果出版の過程」
全員「野林厚志編『肉食行為の人類学』第4部(仮)の合評」
大石高典(東京外国語大学)「共同研究会の成果とりまとめに向けて」
2018年10月6日(土)13:00~17:30(国立民族学博物館 大演習室)
大石高典(東京外国語大学)「趣旨説明:狩猟管理・獣肉交易(消費)の規制をめぐるガバナンス(制度・文書・官僚主義)と諸アクター」
野林厚志(国立民族学博物館)「異文化接触の中の狩猟活動:台湾社会を事例として」
戸田美佳子(上智大学)「カメルーンの森林資源マネジメントに関する現状報告:現金収入源に着目して(仮)」
総合討論 大石高典(東京外国語大学)・全員「これまでの議論の整理と来年度の出版計画に向けてのブレーンストーミング」