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研究プロジェクト

カラハリ狩猟採集民の持続可能な識字活動の基盤

中川 裕 (東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院)

【研究課題】カラハリ狩猟採集民の持続可能な識字活動の基盤
【研究費の枠組み】挑戦的研究(開拓)
【研究期間】2022年06月30日 〜 2027年03月31日
【研究代表者】中川 裕 (東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院)
【研究目的】

アフリカ識字活動はカラハリ狩猟採集民をいわば置き去りにしてきた。それには彼らの音韻的特異性・文化的特殊性・現実的諸事情が識字教育の障壁となったという経緯がある。一方で、現在のカラハリ狩猟採集民たちは母語を文字で綴ることを望み、当事国政府もそれを奨励し始めた。本研究は、新しい着想により、母語話者を中心とする現地関係者たちと協働することで、社会に馴染み持続しやすい識字学習インフラを考案し発展させる。この実践のために、世界最大級の音素対立を表記するアルファベット系正書法を設計する。また、「この極限域において、文字で母語を書き綴る営みにはどんな現象が起きるか?」という新しい文字学的問題を探求する。

【キーワード】コイサン / 正書法 / 識字 / 音韻論


【研究成果報告】

今年度の主な研究実績は次の点に要約できる。(1)ボツワナ現地におけるグイ語話者3人の協力者を選定し、彼らのスマホに、本プロジェクトが開発したグイ語正書法キーボードアプリGuiKeyのインストールをした。(2)彼らとの間でWhatsAppを使ったテキスト送信と音声メッセージ送信による正書法実習の準備を開始した。(3)グループ|Gui-||Gana writersを開設した。(4)日本滞在中のグイ語とガナ語(ギョム方言)話者を対象に、集中的な正書法習得のための集中ワークショップを実施し、継続中。(5)このワークショップの過程で、グイ語とガナ語の両言語に適用可能な正書法バージョンを開発した。(6)試運転中の正書法教材であるツイッターボット、Spellinguiのコンテンツを新しいバージョンの正書法に刷新した。(7)現在編纂中のグイ語辞書(項目数3000強)のすべての見出しに、新しい正書法による表記を加え、正書法インデクスを付け加えた。(8)次の正書法教材を作成した:(i)90子音および10母音、6声調メロディーの綴り分けを解説する音節・基礎語・固有名詞・例文・童歌によるオンライン冊子(20ページ)、(ii)6つのフォークロアの朗読用正書法教材(14ページ)、(iii)グイ・ガナの伝統的生活の写真や動画を描写する正書法による文章を母語話者と共同作成した(50ページ)。(iv)接辞・接語・不変化詞の文法的要素の正書法表示によるリストを作成した。 以上に加えて、京都大学ASAFAS高田明研究室との共同作業で、ひとつの物語をもちいた「紙芝居」の制作を進行中。