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Research Activities研究活動

研究プロジェクト

言語喪失の動態の研究:沖永良部若年層話者における言語消滅メカニズムの解明

中山 俊秀(東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所)

【研究課題】言語喪失の動態の研究:沖永良部若年層話者における言語消滅メカニズムの解明
【研究費の枠組み】基盤研究(B)
【研究期間】2020年4月1日 〜 2024年3月31日
【研究代表者】中山 俊秀(東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所)
【研究分担者】横山 晶子(東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所)、冨岡 裕(東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所)
【研究目的】

本研究は、奄美・沖永良部島の消滅危機言語コミュニティーにおいて、伝統知を失いつつある若年層話者の文法知識と運用能力、言語選択・使用のパターンを包括的に調査・記述し、そこに観察される体系性を言語に対する意識・心的態度に関連づけつつ多角的に分析する。それにより言語消滅プロセスの動態の把握とその変化を生み出すメカニズムの解明をめざす。本研究を通して得られる研究成果は、近年そのニーズが急激に高まっている言語再活性化活動を効果的に設計するための基盤的知見となる。


【研究成果報告】

本研究は、消滅の危機に瀕している奄美・沖永良部島の言語コミュニティにおける若年層話者の文法知識と使用実態の調査を行い、消滅危機言語の消滅変化の動態とメカニズムを解明することを目的としている。 本年度の研究では、文法知識・言語能力に特に焦点を当てつつも、言語使用、言語意識の3つの領域での研究基盤づくりも進めた。若年層話者の文法知識・言語能力については、基本語彙や基本文構造の知識を測るための聞き取り調査を行い、言語知識の世代間の差異の明確化を進めることができた。また、自然談話データの収集を行い、文の生成・理解能力に留まらない言語運用能力面での言語能力についても基本的な分析ができた。日常の中での言語使用の実態に関しては、社会言語学的アンケート調査およびインタビュー調査を行い、社会的関係性や場面による言語選択のパターンなどについての予備分析を行なった。言語意識の実態把握については、アンケート調査およびインタビュー調査をとおして、伝統言語とその使用に対する意識や感情的態度、伝統言語と日本語に対する言語意識の違いに関するデータの収集を進めた。 総じて、本年度の研究により、若年層話者の文法知識・言語能力、言語使用の実態、および言語意識に関する調査、分析基盤を構築することができ、消滅危機言語の消滅変化の動態とメカニズムの解明に向けて重要な研究の進展があった。今後は、これらのデータを基に、より高度な調査・分析を進めていくことが期待できる。