報告・スタディツアー「南アジア地域のムスリム」

2015年1月3日から10日にかけて、本学で南アジア地域を専攻する学生8名を対象として実施された、インド北部およびアラブ首長国連邦でのスタディツアー(引率・露口哲也)について、報告いたします。

本スタディツアーの目的は、南アジア地域のムスリムを取り巻く環境を知ることです。同地域のムスリムをとりまくローカルあるいはリージョナルな紛争や摩擦については、日本でも関心が比較的に高まっていますが、その一方で「宗教対立」や「過激主義」などにかんする表面的なイメージだけが先行しがちです。そのような見かたでは捉えきれない、現地の多面的で複雑な実情を理解することは、同地域を専攻する学生にとって、とても重要なことです。

インド国内では、デリーを経由してアヨーディヤーおよびラクナウーを訪問しました。

アヨーディヤーにはバーブリー・モスクの破壊跡があります。この都市は、ヒンドゥー教の聖地の一つで、巡礼客が多く訪れる一種の門前町の様相を呈していますが、ムガル帝国初代皇帝バーブルの時代にモスクが建設されました。ところが、ヒンドゥー・ナショナリズムが高揚する中1992年、このモスクは破壊されてしまいます。破壊されたモスクの跡地は、現在では、ヒンドゥーの参拝客が訪ねる巡礼の焦点という様相を呈しています。まさにヒンドゥーとムスリムの宗教対立を象徴する極めてセンシティブな対象だけに、警備は非常に厳重です。訪問した学生たちも、パスポートとヴィザのコピーの提出を警察に要求され、カメラ、時計その他の持ち込みを禁じられ、さらには見学用の通路で計4ヶ所の検問を通過させられました。

ラクナウーではバスをチャーターし、緑豊かな新市街を横目に旧市街、とくにバラー・イマーム・バーラー、チョーター・イマーム・バーラーなどイスラームの歴史的建造物が集中する一画を見学しました。

UAEではドバイに訪れました。南アジアというよりも中東または西アジアに位置するドバイは、近年では、パキスタン人の新たな活躍の舞台にもなっています。

市内でのフィールドワーク後、ドバイのメディア・シティーに本部を置く、パキスタン最大の民放GEO TV の放送局を訪問。マネージャーのフマーユーン・サギール氏より、同テレビ局の現在の状況や活動、パキスタンにとってのドバイの役割、ドバイにおけるパキスタン人の状況などについて、講義を提供していただきました。また、局内部をご案内いただき、ウルドゥー語によるテレビ放送の現場を見学することができました。

南アジア地域のムスリムの現実の社会生活を見るためには、まだまだ訪れるべき多くの場所がありますが、限られた時間の中では、中身の濃い有益なフィールドワークが実施できたといえます。

2018年9月

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