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Research Activities研究活動

研究プロジェクト

アフリカにおける紛争の性格変化の基層―暴力噴出メカニズムの解明に向けて

武内進一(東京外国語大学現代アフリカ地域研究センター)

【研究課題】アフリカにおける紛争の性格変化の基層―暴力噴出メカニズムの解明に向けて
【研究費の枠組み】日本学術振興会科学研究費基盤研究(B)(課題番号16KT0046)
【研究期間】2016年度~2019年度
【研究代表者】武内進一(東京外国語大学現代アフリカ地域研究センター)
【研究分担者】渡邊祥子(日本貿易振興機構アジア経済研究所)、佐藤章(同)、津田みわ(同)、佐藤千鶴子(同)
【連携研究者】網中昭世(日本貿易振興機構アジア経済研究所)、児玉由佳(同)、土屋一樹(同)、牧野久美子(同)、平野克己(同)、福西隆弘(同)、工藤友哉(同)、阪本拓人(東京大学大学院総合文化研究科)
【研究目的】

 冷戦終結以降、アフリカで国内紛争が頻発したことを受けて、アフリカの紛争に関する研究が蓄積されてきました。しかし、紛争を引き起こす社会的亀裂の在処や暴力表出のメカニズムといった紛争研究の最も基礎的な領域については、なお大いに研究の余地が残されています。本研究は、紛争の原因となっている主要な社会的亀裂について分析し、それが暴力の発現に結びつくメカニズムを解明することを目的としています。

 アフリカにおける社会的亀裂やその暴力表出との関連を問う紛争研究は、重要な今日的意義を有しています。その理由は、近年のアフリカにおける紛争について、性格の変化が指摘されているからです。アフリカでは1990年代に大規模な紛争が頻発しましたが、2000年代に入ると紛争発生件数や犠牲者数は減少しています。一方で、選挙暴力の頻発、土地や水など資源制約に由来する紛争の激化、テロリズムの伸張など新たな特徴が指摘されています。また、南アフリカにおける労使紛争の激化や移民を標的とするゼノフォビアなど、新たな形の暴力が現れています。

 こうした紛争の性格変化がなぜ生じたのでしょうか。その答えを仮説的に示すなら、冷戦終結後の民主化、急速な人口増、イスラーム主義、新自由主義的経済政策などによってアフリカ社会における亀裂のあり方が変容し、その影響を受けて紛争の性格が変化したと考えることができます。アフリカの紛争はほとんどの場合国内紛争であり、国家の統治や国家・社会関係に関わる問題を分析することの重要性は従来から強調されてきました。近年の紛争の性格変化を理解するためには、アフリカ社会の構造変容や、それによってもたらされた亀裂の変化を分析し、それが暴力的に噴出するメカニズムを解明する必要があります。

 本研究では、先に述べた仮説的見解に立脚して、紛争の性格変化に重要な影響を与えたと考えられる4つの要因に注目します。第1に、政党です。冷戦終結後、アフリカで民主的制度の導入が進むなかで、政党は日常的に人々を組織化し、その動員に重要な役割を果たしてきました。第2に、資源です。急激な人口増により、アフリカでは土地や水をめぐる資源制約が厳しさを増しています。第3に、宗教です。近年のアフリカではイスラーム急進主義の影響が顕在化していますが、アルカーイダや「イスラーム国」など域外勢力との関係のみならず、在地のイスラームの変容について分析する必要があります。またキリスト教原理主義勢力の動きも無視できません。第4に、労働です。新自由主義的経済政策やグローバル化が労使関係や労働移動に与えた影響、そしてその紛争との関わりについて研究する必要があります。本研究ではこれら4つの要因を中心に分析を進め、亀裂のあり方とその歴史的変化、そして紛争へと至るメカニズムを解明したいと考えています。

 社会的亀裂に焦点を当てる本研究は、アフリカの紛争に関して相対的に不十分だった研究領域に対する重要な貢献となるでしょう。また、北アフリカの専門家を含むアフリカ地域研究者が研究チームの中核となっているため、アフリカ全体を対象とした議論が可能となります。特にイスラーム急進主義に関わる紛争を分析する際など、異なる地域の専門家が協働する意義は大きいし、紛争発現のメカニズムをアフリカ全体で比較検討できると考えています。


【研究会の開催】

日時:2017年6月26日(月)15時~17時
場所:東京外国語大学本郷サテライト8階会議室
報告者:坂井信三(南山大学)
報告タイトル:西アフリカのムスリム社会における宗教性と世俗性――セネガルとナイジェリアにおけるライシテとシャリーア

日時:2016年11月25日(金)15時~17時
場所:日本貿易振興機構アジア経済研究所 C24会議室
報告者: 榎並ゆかり(同志社大学大学院博士課程、龍谷大学非常勤講師)
報告タイトル:新興交易ディアスポラのトランスナショナル・コミュニティ形成における女性の役割―広州、ドバイ、NYにおけるムリッド女性の活躍

日時:2016年11月14日(月)14時~17時半
場所:日本貿易振興機構アジア経済研究所 C22会議室
14:00~15:30
報告者 モハメド・オマル・アブディン(東京外国語大学特任助教)
報告タイトル:スーダンにおけるイスラーム主義の変遷
15:40~17:30
報告者 私市正年(上智大学総合グローバル学部教授)
報告タイトル:1990年代内戦を潜り抜けたアルジェリアの政治的安定化の構造―サハラ・サーヘル地域の不安定化の背景を考える―