日本学術振興会
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史資料収集



日印関係史研究のための雑誌マイクロフィルム化作業完了

報告者 松本脩作
大東文化大学非常勤講師
21世紀COE「史資料ハブ地域文化拠点」フェロー



このたび、「日印協會々報」(1909-1954)、「印度甲谷陀日本商品館館報」(1927-1934)、「日印協会甲谷陀日本商品館館報」(1935-1937)のマイクロフィルム化作業が完了した。明治以後の日印関係史を研究する際の貴重な資料となろう。これらの雑誌の完全なセットを所蔵している図書館はどこにもなかった。また今回初めてその所蔵が確認された号もある。

「日印協會々報」は1909年に創刊され1944年まで続き、第二次大戦後の占領期には「日印経済協会会報」と名前を変えて刊行された。さらに戦前の誌名に戻り、1952年から1954年まで続いた。その後「印度 India」という誌名に変わるが、今回のマイクロフィルム化事業は1954年までの期間をカバーしている。

第一期(戦前期)は、インドが英領植民地であるという特殊な環境におかれていたが、双方にとって政治経済上の重要な相手であった。執筆者には日本の政治家・実業家・知識人に加えて、インド人やインド関係の外国人も多数見られる。また日印間の人の往来や諸懸案を相当に詳しく記録している。創刊号から第8号までは今回初めてその所在を確認できた。

注目すべきことは、この時期に完全な英語版が刊行されていたことである。1911年から1927年までに15冊の英語版(Journal of the Indo-Japanese Association)が刊行されている。海外への情報発信に努力した跡が見られる。

第二期(主に占領期)には、協会の名前が日印経済協会に変更されている。日本戦後復興期の日印関係を見る上で貴重な資料であろう。この時期の雑誌は協会にのみその所蔵が確認されるもので、フィルム化による保存・公開は意義あるものと思われる。

第三期は短い期間ではあるが、協会がかつての名称に戻った時期のものである。この時期から戦後の日印関係の新たな展開が見られる。

カルカッタの「日本商品館館報」(1927-1937)は市場開発のために商品館という特殊な形をとったマーケティング活動の記録ともいえるものであるが、日本商品の陳列だけではなくインドの政治・経済・社会・文化などの情報を日本国内に伝える役割も果たそうとした。日印関係史の中では注目すべき歴史的存在である。その刊行物として興味ある遺産と見ることができよう。