「おそようございます」という言い回しが
使われるようになって久しい。
ここでちょっと形態論的な考察をしてみる。
下敷きとなった表現:
おはようございます
お- はや -う ございます
これを下敷きにして、
「はや(い)」を「おそ(い)」に
取り替えると、こうなる筈である:
*おおそうございます
お- おそ -う ございます
でも、日本社会に広がった言い回しは
そうなっていない。
この背景としては、人々が新しいキャッチーな
表現を作るとき、必ずしも形態論的な妥当性を
考慮しないということと、
ドラえもん→ホリエモン→チチエモン
のような「置き換え replacement」、
「書き換え overwriting」とでも言えるような
(新)語形成の手法が、(混成語(blend)の一種では
あるけれども、)幅を利かせはじめているという
ことであろう。
おはようございます +
おそ(い)→
おそようございます
というように。
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「しゃべり場」
のパロディーとして、
男性型脱毛症(AGA)について語り合う場のことを
「ハゲり場」
と言う。
これも、形態論的なことを考慮すれば、
しゃべる:しゃべり (終止形:連用形)
ハゲる :ハゲ
となって、
*ハゲ場
としなければならないが、
人々は、それを選ばず、本来の連用形ではない、
「ハゲり」を選んでいる。
この事例の場合も、形態論的妥当性を追い求めるのではなく、
「置き換え・書き換え」によって(新)語形成が
行われたと見れば、説明できる。
しゃべり場 +
ハゲ(る) →
ハゲり場
そもそも、「ハゲる」「場所」を意味させたいのではなく、
「ハゲ」について「しゃべる」「場所」を意味させたいのであるから、
当然と言えば当然なのかも知れない。