室町時代の日明外交と能狂言
- 刊行
- 著者等
- 西原大輔(著)
- 出版社
- 笠間書院
内容の紹介
8曲の能狂言を、室町時代の東アジアの国際関係の中に位置づけ、外交の視点から読み解いてゆきます。従来、能や狂言は美しい伝統芸能であり、政治とは無関係だと考えられてきました。しかし、世阿弥ら能の作者は、パトロンである足利将軍の政治的意向を汲み取りながら能を作っていたのです。
第1章 《白楽天》――華夷秩序を拒絶
第2章 《放生川》――朝鮮撃退の祝賀能
第3章 《唐船》――遣明船再開の予祝
第4章 《呉服》――外交方針転換を賛美
第5章 《善界》――混血二世の葛藤
第6章 《岩船》――日本中心型華夷観
第7章 《春日龍神》――最高聖地としての日本
第8章 狂言《唐相撲》――異国趣味の政治学 (目次より)
著者のコメント
西原大輔(大学院国際日本学研究院/教授)
世阿弥が生きていた頃、明朝では永楽帝が権力を握り、中華思想的な対外拡張政策を推し進めていました。世阿弥が仕えた3人の将軍は、それぞれ異なる外交姿勢でチャイナと向き合います。3代義満は親明派、4代義持は嫌明派、6代義教は経済的利益を重視した妥協派と言えるでしょう。能の作者は、時々の将軍の意向に沿う形で、《白楽天》《放生川》《呉服》《唐船》などの曲を作りました。今日の東アジア情勢を念頭に置く時、「歴史は繰り返す」という言葉が思い起こされます。