山田祥子

私が執筆した卒業論文のテーマは、ラテンアメリカにおける貧困層の子どもに対する教育である。私がラテンアメリカ地域に興味を持つようになった最初のきっかけは、高校時代のアメリカ留学だった。滞在中にラテンアメリカ出身の学生らと交流を深めていくうちに、この地域にある貧富の格差を改めて感じ、興味を持った。そして大学入学後、この貧困問題に大きく関わりがある教育について学びたいと考えるようになったのである。

上記のような考えから取上げた文献は、Teaching Children of the Poor: an ethnographic Study in Latin America である。この文献はBeatrice Avalosにより編集され、1986年にカナダの国際開発研究センターから出版されたものである。本書の目的は教育の改善であるが、外的要因にのみ目を向けた従来の研究では、その目的は果たせないと批判している。そして小学校での退学や留年の原因を探るためには、教育の内側である教室での実際の出来事を研究し、問題点を明らかにする必要があるとしている。ボリビア、チリ、コロンビア、ベネズエラの4カ国において行なわれた研究では、学校や教室での出来事を決められた観点にそって観察、描写し、その記録を分析するという民族誌学的方法が用いられた。この研究から著者らは、子どもの退学、留年に対し、教師に大きな責任があると結論付けている。そして学校教育の問題解決に向け、教師の教育に対する意識や知識を高めるような課題を提案している。

本書に関し評価すべき点は、研究で行なわれた観察により、ラテンアメリカにおける初等教育の現場の実状、そして子ども達がそこで直面する問題が明らかにされた事が挙げられるだろう。しかし導き出された結論については疑問が残った。本書を通し、教師の意識や知識のみならず、労働環境、賃金、カリキュラム、学校や教師に対する親の姿勢などの問題も、良質な教育の実践の妨げとなっているように感じられたのである。本書の目的を考えると、提案された教師にのみ焦点を当てた課題は充分ではなく、学校を取り巻く状況をより根本から変えていくような策が必要であるように思われた。

卒業論文に取り組むにあたり、文献を読みきる事ができなかったという昨年度の反省点を活かす事ができなかった。今回も夏合宿前になって慌ててしまう結果となり、計画的に文献を読み進めていくことが大切だと痛感した。また、私は論点を読み取る事が苦手であったため、同じ段落、同じ章を何度か読み返す必要があった。日ごろから、日本語の文献を読む際にも意識するよう心がけておくと良かったのかもしれない。