トップINDEX>研究室

研究室

 

ラテンアメリカと聞いて、皆さんは、雪を頂いたアンデスの山々に抱かれて暮らすインディオ、あるいは鬱蒼としたアマゾン熱帯雨林に住む色鮮やかな鳥や珍しい獣、さらにはどこまでも続く広大な大草原パンパを馬で疾駆するガウチョの姿などを思い浮かべるかもしれません。でも意外なことに、現在ラテンアメリカの人口の7割以上は都市に住んでいます。そしてこの都市の住人の多くが、ファベーラ、ポブラシオンなど国によってさまざまな名前で呼ばれる貧困地区で暮らしています。小生の研究テーマは彼ら都市下層民です。

試しに、書店の本棚に並んでいるラテンアメリカの歴史書をどれでも一冊手にとって開いてごらんなさい。そこには、インディオ文明の時代に始まり、16世紀の征服期とその後の植民地時代を経て19世紀初頭独立を達成し、以後、独裁と革命をくり返しながら現在に至るラテンアメリカ諸国の歴史が、モクテスマ、アタワルパ、ピサロ、コルテス、ボリバル、サンマルティン、フアレス、ディアス、サパタ、サンディーノ、ペロン、ヴァルガス、カルデナス、カストロ、アジェンデ等々の著名人、英雄の名とともに叙述されていることが分かるでしょう。

それに対して小生は、19世紀の独立から現在に至るラテンアメリカ諸国の歴史を、都市の下層民に焦点をあてながら、今までとは異なった形で描いてみたいと考えています。その一つの見取り図が、「排除と統合 近代ラテンアメリカ都市のエリートと民衆」(『南から見た世界 5 ラテンアメリカ』 大月書店 1999年)です。

『チリ 嵐にざわめく民衆の木よ』(大月書店 1991年)は、軍事独裁下にあった南米チリを舞台に「民衆の木」のざわめきを、その木の葉一枚一枚の立てる無数に異なった声を聞き分けようとしながら、日本の読者、とりわけ学生諸君に伝えたいとの思いで書きました。発行年は少し古いですが、中身は今でも新しいと思っています。

 

 

著書

『チリ 嵐にざわめく民衆の木よ』 大月書店 1991年

 

研究論文

「チリにおける都市貧民」『東京外国語大学論集』35 1985年

「チリ・ポブラドーレスによる土地占拠運動」「人的移動にともなう都市及び農村の変容 ─ 国際比較の観点から」文部省特定研究報告 No. 11 東京外国語大学海外事情研究所 1987年

「軍政下のチリ左翼 ─ 知識人による思想的、理論的革新の試み」『東京外国語大学論集』37 1987年

「軍政下のチリ都市民衆」『ラテンアメリカの都市と農業』 アジア経済研究所 1988年

「サンティアゴ市における都市空間の形成 ─ 社会階層による居住地区の分離を中心に」「都市におけるエスニシティと文化 理論的枠組みと事例」文部省特定研究報告 No. 12 東京外国語大学海外事情研究所 1988年

「軍政下チリ社会の変化」『アジア・アフリカ研究』1989年第2号

「ポブラドーレスの世界(1)」「都市におけるエスニシティと文化 理論的枠組みと事例」文部省特定研究報告 No. 13 東京外国語大学海外事情研究所 1989年

「ポブラドーレスの世界(2)」「地域紛争(コンフリクト)と相互依存(1) ─ 地域紛争の今日的意味と分析枠組」文部省特定研究報告 No. 15 東京外国語大学海外事情研究所 1991年

「チリにおけるポブラドーレス研究の展開」『アジア経済』 1991年4月

「ポブラドーレスの声 チリ都市下層民の証言をめぐって」『アジア経済』1992年4月

「軍政下チリのポブラシオンにおける演劇活動」「地域紛争(コンフリクト)と相互依存(2) ─ 事例研究の観点から」文部省特定研究報告 No. 16 東京外国語大学海外事情研究所 1992年

「ラテンアメリカにおける都市下層民の運動をめぐって」「地域紛争(コンフリクト)と相互依存(3) ─ 国際社会の変動との関連」文部省特定研究報告 No. 17 東京外国語大学海外事情研究所 1993年

「都市下層民の運動」『ラテンアメリカ 政治と社会』新評論 1993年

「ラテンアメリカ都市下層民の宗教意識 ─ プロテスタンティズムを中心に」「グローバリゼイション(世界化)と国民国家の再編 ─ 分析枠組みの再検討」 文部省特定研究方向 No.22 東京外国語大学海外事情研究所 1994年

「貧者の宗教」『アジア経済』1995年9月

「アジェンデの革命」『講座世界史 10 第三世界の挑戦』 東京大学出版会 1996年

「19世紀チリ・エリートの民衆観 ─ ペオンの国外流出をめぐる論争を中心に」 「ポストコロニアル状況における地域研究 (2)」 文部省特定研究報告 No. 22 東京外国語大学海外事情研究所 1998年

「チリにおける歴史学研究」 『歴史学研究』 No.715 (1998年10月)

「『労働者』と『下層民』 ─ チリ都市民衆の2類型」 『Quadrante』 東京外国語大学海外事情研究所 No.119993月)

「排除と統合 ─ 近代ラテンアメリカ都市のエリートと民衆」『南から見た世界 5 ラテンアメリカ』 大月書店 1999年

「エリート文化・民衆文化・大衆文化 ─ ソロバベル・ロドリゲスのチリ民衆詩論によせて」『東京外国語大学百周年記念論文集』 東京外国語大学 1999年

「『南米のパリ』を夢見て ―ビクーニャ・マケナのサンティアゴ改造計画― (上)」『QuadranteNo. 3 20013月)

 

書評

「P・カンスタブル; A・バレンスエラ 著  『敵対する国民:ピノチェト支配下のチリ』 」 『アジア経済』

 

時評

「チリ ─ 抵抗の人々」『世界』 1988年11月号

「チリにおける労働組合運動」『日本労働研究雑誌』 No.387 1992年2・3月号

「チリ断章」『季刊民族学』No.62 1992年秋

「『コロンブス500年』と私たち」『Al Sur』 Vol.1 1992年

「ピノチェト逮捕」『世界』 1999年2月号

「ロンドンでのピノチェト逮捕劇」『アルスール』 Vols.6-7 1998-1999年

「ピノチェトは裁かれるか」『世界』 2000年3月号