学部・大学院の組織改革に関する議論について

2000年3月8日

地域・国際講座 組織改革検討グループ(仮称)

文責 高橋(正)  

3月1日の講座会議で、中野さんを中心としたカリキュラム検討グループとともに、増谷、丹羽、吉田、高橋(正)から成る組織改革検討グループが設けられました。組織改革検討グループはこれまで数度にわたって会議をもち、去る3月6日に開かれた学部・大学院改革推進委員会において「組織再編構想案の基本概念」(高橋が執筆)と概念図(丹羽が作成)を提出しました(添付資料)。この日の委員会では組織改革が主たる議題となり、総合文化の教官を中心に作成された「亀山案」(添付資料)と、高橋案の2つが議論されました。この議論を通じていくつかの論点が浮かび上がり、また3案の対立点もかなりの程度明らかになりました。そこで、地域・国際講座において、これまでに提示されている改革案(野間案、亀山案、高橋案)についての議論を深めていくための材料として、3月6日の改革推進委員会で出された論点、対立点を整理しておきたいと思います。アンケート第二ラウンドへの回答の際に参考にしていただければと思います。

 

T.単一学部か、複数学部か

・野間案:外国語学部と先端国際学部の2学部制

・亀山案:広域言語学部、世界文化学部、国際政策学部の3学部制

・高橋案:言語・情報課程[学部]と地域文化課程[学部]に分ける。ただ単一学部での複数課程か、それとも複数学部かはアプリオリに決定せず、さまざまな要因を考慮した上で決める。 なお、学長は複数学部制への移行を強く希望している。

(1)学部、学科の名称をどうするか

・学長、野間教授などは、対文部省、あるいは社会に対して新しさを強調するためには斬新な名称がきわめて重要だと強調している。いずれにせよ、学部構成が最終的にどのようになろうと、外国語学部という現在の名称は検討の対象にする必要があろう。

(2)どのように分割するか

・野間案では、現在の総合文化講座所属の教官を言語と国際の2つの学部に振り分けることを考えている。これに対して、亀山案は、総合文化講座の独自性を強調しており、言語と総合文化ではメンタリティが違うので一緒にはやれないとしている。また現在の地域・国際との合同にもきわめて消極的である。

・亀山案では、現在地域・国際講座に所属している歴史学(稲田)、教育学(小沢)、社会学(千田)、考古学(小川)の人文系4ポストを世界文化学部に移すとしている。

・高橋案では、言語が独立することに特に反対はしないが、総合文化と地域・国際が別の学部に分かれることには反対している。ただ、3月6日の改革推進委員会での議論の後、総合文化の教官(特に文学系)の意向がそうであるならば、3学部に分かれることもやむを得ないかとも思い始めている。ただ、その場合、現在の亀山案のように歴史学などを世界文化学部へと移籍させることは絶対に認められず、むしろ逆に、文化人類学、思想などは地域研究へと合流すべきであると考える。

(3)複数学部の場合にどのような問題が起きるか

・複数学部にすると、各学部の内部に課程を設けなければならない。そのため、地域・国際が独自の学部になった場合には内部に複数の課程を設けなければならなくなり、なんらかの形で工夫しないと学部運営上制約が生まれることもありうる。

(註) なお、「課程」とは、教官の所属と学生の所属が切り離されている場合をいい、これに対して、両者が同一の所属となる場合には「学科」となる。95年改革での前進面として、学科制から課程制への移行があるとされており、これを逆行させることは好ましくない。それゆえ、複数学部となった場合には、学部内部の区分は、「学科」ではなく、「課程」となる。

(4)先端国際学部(野間案)、国際政策学部(亀山案)の中身 ・両者とも、かなり具体的にその性格と中身(学部と学科の名称も含め)について論じている(両案の該当個所を参照)。もしも現在の地域・国際講座を独立学部とする場合、どのような性格のものにするのかは、両案を視野に入れながらカリキュラム検討グループでの議論とも連動させつつ講座として議論する必要がある。

 

U.入試の選抜方式をどうするか

・野間案:外国語学部では主専攻語別、先端国際学部ではディシプリン別選抜。

・亀山案:学部ごとに、「選択専攻語」(現在の専攻語)別。

・高橋案:言語・情報課程[学部]においては専攻語別、地域文化課程[学部]では課程[学部]一括。

 

V.言語教育をどうするか

・野間案:外国語学部では、主専攻語(週5時間×3年+α)+副専攻語(英語)(週3時間×3年+α)+第三言語(週2時間×1年+α)。先端国際学部では、英語(週4時間×3年+α)+選択言語(週2時間×1年+α)。

・亀山案:週8コマを必修とし、専攻語と第2外国語の配分は各学部の裁量に任せる。例えば、広域言語学部では専攻語(6コマ)+第2外国語(2コマ)。世界文化学部では専攻語(5コマ)+第2外国語(3コマ)。国際政策学部では専攻語(4コマ)+第2外国語(4コマ)。最低必修の週4コマは現在と同様に学部横断的に行う。

・高橋案:両課程[学部]とも、英語+専攻語(6コマ)。地域文化課程[学部]では、入学後一定時期をおいた後に言語を決定する。専攻語は両課程[学部]で共通に行うものとし、言語・情報の1年生と地域文化の2年生が同じクラスで履修する。

(註)なお、それぞれの案では各言語の名称は「専攻語」「選択語」など異なるが、煩雑さを避けるため、ここでは現在の「専攻語」の名称で統一した。

 

(1)入学後選択制をどう考えるか ・選択制にした場合、志望者が極端に少ない言語が出てくる可能性がある。こうした事態をどう考え、どのように対処するか。富盛学生部長は、隣接している言語(東南アジアなど)は再編成する可能性も検討すべきだとした。

・志望者が言語によって不均等となり、志望者多数のところは選抜を行うことになれば、言語間でのヒエラルキーが生まれることになり、これは非常に問題であるとの意見が出された。

・選抜を点数によって行うこととなると、点数をとりやすい科目に集中するなどの好ましくない傾向が生まれる。現に、駒場ではこうした現象が見られる。

(2)専攻語教育をどのように行うか

・野間教授は、学部横断授業については絶対に認められないとの立場に立っている。その論拠は必ずしも明確ではないが、学部横断的に共通授業として組むことは、これまでと何も変化していないとの印象を社会に与えることになるからだという。また、在間教授は、亀山案のように学部間でコマ数が異なる場合には共通授業は無理であるとしている。

(3)専攻語の位置づけをどうするか

・野間案、亀山案とも、程度こそ異なれ、国際政策学部(先端国際学部)では専攻語と比較して英語の比重が高まるとされている。これに対して、高橋案では、すべての課程[学部]で専攻語と英語の位置づけは同じとしている。なお、学長も英語を最重視するという考えを表明している。

・専攻語のコマ数については現在の6コマよりも少なくすることもありうる。その際には、よりインテンシブな教育方法を検討するの工夫が必要となろう。またこれとの関連で、ビデオやコンピュータを利用した自学自習のシステムも視野に入れる必要がある。

・上村教授は、高橋案でも発想がいまだ専攻語に縛られているとしている。