組織再編構想案の基本概念

2000年3月6日

地域・国際講座 組織再編構想検討グループ

T.本構想案が生まれた経緯

 本案は、本委員会での議論、地域・国際講座でのアンケートと議論を通じて生まれた。 = 大学をめぐる社会環境、本学が直面している問題、解決すべき課題などに関する本委員会と講座でのこれまでの議論を踏まえており、提起された全ての問題に応えている。 = 先験的に立てられた主義・原理に基づいていない。 = 現実に則しており、また無理がない。

 

U.原則

1.本学は世界の様々な言語と文化の研究教育の拠点である。グローバル化時代(=英語)における異文化(=多言語)理解の場である。⇒(本学の存在意義、明確な外大像)

2.言語・文化・地域研究の柔軟な連関を図る。「ディシプリン」の名の下に学問研究・教育の領域・区分を固定化することをしない。⇒(学問論、本学の独自性)

3.専攻語別の学生定員固定化は不合理である。現在のような一律の専攻語別選抜を廃止して課程[学部]ごとにそれぞれ独自に定める。⇒(変動する社会状況と少子化時代における学生定員の柔軟化、95年改革の限界克服) 地域文化課程[学部]においては、課程[学部]一括選抜方式をとり、新入生は入学後に専攻語を選択するものとする。言語・情報課程[学部]においては、現行通り入試を専攻語別に行う。

 

V.地域・言語と分野のマトリックス

主題による領域間の自由な連関・結合が可能でなければいけない。

 

W.入試における専攻語別選抜の廃止

1.各言語に対する社会的需要は計測不能であり可変的であるがゆえに、専攻語別の定員固定化は不合理である。(地域文化課程[学部]においては)入学後に選択を自由化することで、社会的需要に対してより柔軟に対応できる。

2.課程[学部]単位で定員を設定することで、学生定員の見直し(学生定員削減、留学生枠拡大、社会人枠拡大など)に対してより柔軟に対応できる。(教官定員については後述)

3.言語の区分に基づく現行の課程を廃止できることとなり、カリキュラム編成(特に地域科目)が合理化され、言語と地域の2つの基準に基づくことが可能となる。またこれによって、講座が名実ともに基本的な運営単位となる。

4.(地域文化課程[学部]においては)専攻語選択以前に一定の猶予期間を設け、その間にさまざまな形のオリエンテーションを行うことで、学生が問題意識に基づいて専攻語を選択できるようになる。

 

X.課程または学部への分割の可能性

1.言語の教官が以上の原則に同意するならば、高橋原案が実現可能になる。

2.言語の教官が言語別入試に固執するならば、入試定員を専攻語別の定員枠(言語)と一括選抜の定員枠(地域文化)の2つに分ける。 言語:専攻語別 地域文化:一括、入学後選択

3.専攻語の教育開始時期をどうするか。 言語:入学後直ちに開始する。 地域文化:入学後一定期間をおいたのちに選択する。 その場合、専攻語教育の学年を、言語と地域文化で一年ずらす。

4.分割するレベルを学部にするか、単一学部の課程にするかは事務と協議しながら検討していく。(別紙参照)

5.分割の際に各課程[学部]の学生定員をどうするかは検討課題とする。

 

Y.言語教育

1.(a)英語、(b)専攻語を必修とする。現在の英米語は (a) に一本化する。その他に、選択科目の副専攻語を設ける。(これにより学部全体で英語教育が格上げされる)。

2.英語の授業には

(a)英語による授業、

(b)英語教材を用いた授業(授業は日本語による場合あり。現在の前期英米専攻語の多くがここに移行することとなろう)

の2種類を設ける。(これにより英語教育の充実、FJ共学の実現が本格的に可能となる)。

3.専攻語については、(地域文化学部[課程]においては)入学後に学生が選択するものとし、第一志望、第二志望、第三志望を出させ、しかるべき方法で決定する。

 

Y.カリキュラム

1.教官、学生、カリキュラムの関係

2.地域文化課程[学部]においては、「地域と分野のマトリックス」に基づいて、体系的で有機的連関をもったカリキュラム編成が可能になる。

3.カリキュラム編成にあたっては講座単位のカリキュラム委員会、全学規模のカリキュラム委員会がこれにあたる。カリキュラム委員会と各講座では学問状況をにらみながら一定期間ごとにカリキュラムの中身について議論する体制をつくる。

 

4.入口と出口

 

Z.教官配置

1.基本原則として、各言語の教官定員基礎単位は、言語・情報、総合文化、地域研究の専任教官3名と外国人教師1名の計4名とする。これによりいわゆる「欠陥語科」は解消される(ただし言語、地域によっては1単位での教官が複数になる可能性も残すなど状況に応じて柔軟に対応する)。 また志望学生数により教官単位を2単位とすることもありうる。ただし履修状況に応じて数年ごとに見直しを行う。

2.当面25言語(英語が減)とするが、将来的には拡充の可能性も考える(アフリカなど)。

3.言語単位に所属しない教官の配置については、全学的観点と履修コースの観点から検討する。定年退官や辞職の場合には機械的に後任を採ることをせず、その都度、配置を検討する。(これにより定員配置が柔軟化され、非常勤の管理も合理化される)。

4.一般理論的な科目については大学間の連携による単位互換を積極的に利用する。

 

[.言語単位所属教官の言語持ちコマ数 1言語1クラスの場合には、現行の専攻語コマ数による限り、1年次、2年次で合計12コマの授業となる。その場合、専任教官が各自最低2コマを持ち(2×3=6コマ)、残りの6コマについては非常勤講師(2コマ)と外国人教師(4コマ)が担当する。(基本的に現状維持か負担軽減となる) ただし、1学年の専攻語コマ数は検討課題とする。

 

\.言語間の選択希望者数のアンバランスにどう対応するか。

1.各言語についてクラス数(学生数)に上限を設け、希望者がこれを越えた場合には何らかの方法で選抜を行う。

2.言語によって希望者がゼロもしくはきわめて少数の場合には教官間で負担率が不平等となるが、これは認める。(社会人教育、大学院教育へのシフトによって不平等をある程度減少させることが可能だろう)。(この点は本学の理念そのものと関わる点であり、社会に対するメッセージでもある)。

 

].本構想のメリット

1.この構想の下で、「学部・大学院一貫制に伴う組織再編検討結果」の合意事項すべてが実現できる。またこれまで議論されてきた問題(学生定員、大学院との連携強化、一貫制導入、英語教育充実、外国人教師の配置、社会人教育拡充、卒業研究と指導教官制、FJ教育、日本語研究教育の拠点化=日本語学館構想など)もすべて無理のない形で実現できる。

2.大学院の再編、大学院との一貫制に柔軟に対応できる。

3.本構想によることで、95年改革を踏まえつつ、同時にその限界面(曖昧な課程制、硬直的なコース制など)を無理のない形で克服していくことができる。

4.受験生も含め、対外的に外大像が明確となる。

5.対文部省との交渉において、われわれの立場を堂々と主張できる。