2008年台湾立法委員選挙後のコメント

東京外国語大学
小笠原 欣幸

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【視点】 実績見えぬ与党に厳しい審判

(朝日新聞掲載 2008年1月13日朝刊)


 民進党の敗北は,昨年5月の党内予備選の段階ですでに決まっていたと言ってよい。議員半減という極限の状況で現職同士が公認獲得をめぐり熾烈な戦いを繰り広げ,勝者も敗者も傷つき致命的なダメージを負った。国民党も予備選挙をやるにはやったが,さまざまな取引や裏工作など水面下の処理が多かったので,傷口はあまり広がらずにすんだ。
 独立を目指す急進的な台湾ナショナリズムに傾斜した民進党は,生活に密着した問題の解決を求める住民の期待を裏切った。実績をアピールできなかった与党に選挙民の厳しい審判が下った。穏健な中道路線を唱える謝長廷氏を総統候補に選んだが,党の看板は依然として陳水扁総統であったため変化を打ち出せなかった。
 民進党が地盤の南部で議席を落としたので,総統選は国民党の馬英九陣営に弾みがつくことは間違いない。馬氏は台湾化路線を掲げているが,今回の選挙で中国意識の強い議員が増え,台湾意識が強い選挙民は危機感を抱く。謝長廷陣営はそれをばねに態勢の立て直しを図るだろう。国民党は馬氏の台湾化路線に不協和音がでないか,民進党は謝氏が主導権を握れるかどうかが焦点となる。
 民進党が劣勢を挽回するため,住民の支持が強い台湾名義での国連加盟の賛否を問う住民投票の成立に全力を傾けるだろう。住民投票に神経をとがらせる米中など国際社会への影響は大きい。(聞き手・西村大輔=台北)

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・2008年台湾立法委員選挙情勢(その1)は こちら
・2008年台湾立法委員選挙情勢(その2)は こちら

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