活動報告

Activity Reports

センターの活動報告です

国際日本研究センター 比較日本文化部門主催 第2回研究会「アルゼンチンの日本意識の変化」(2016年10月20日)


 比較日本文化部門「第2回研究会」として、石田智恵さん(日本学術振興会特別研究員PD)とマティアス・チアッペさん(アルゼンチン国費留学生、本学留日センターに留学中)に報告をしていただいた。筆者は国立ラプラタ大学の客員研究員としてアルゼンチンに滞在した際に多くの日系人に世話になった。研究会を企画する立場になり、アルゼンチンでの経験から日系人について取り上げようと考えた。
 文化人類学者の立場からアルゼンチンの日系人研究をされている石田さんは、「アルゼンチンにおける『日本』の表象・言説と『日系japonés/nikkei』の位置」というタイトルで報告を行った。アルゼンチンの日系コミュニティの歴史や構成にはじまり、日系人が抱える二重性(アルゼンチンからは「日本的」、日本からは「アルゼンチン的」とみなされる)、アカデミズムにおける日本や東洋への関心の変遷を取り上げた。石田さんはその他にも、「日本・日系」に関する文学者や、現在のアルゼンチンにおける日本文化への関心など話題を広げ、内容の充実した報告だった。「日系人」の立ち位置は日本研究からもアルゼンチン研究からも微妙にずれたところにあり、そのことは、日系人研究がアルゼンチン、日本双方の地域研究を架橋する可能性を持っていることを示しているのだろう。石田さんに続いて、本学留日センターに留学中のマティアスさんが文学研究者として、現代日本文学へのラテンアメリカ文学の影響について歴史的な流れを報告した。これまでは日本人の文学研究者が日本文学とラテンアメリカ文学の関係について考えることが多かったが、マティアスさんの発表を聞いて、いよいよラテンアメリカ出身者の中から、同じテーマをめぐって議論できる研究者が誕生しそうだと確信した。石田さんが日本からアルゼンチンに向かったように、マティアスさんはアルゼンチンから日本へやってきた。二人の報告はまるでコインの表と裏のようで、双方向に声が響き合う研究会になった。(久野量一)

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ポスター (PDFファイル)

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