活動報告

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追悼・原節子「原節子を想起する――戦前の映画から」講演イリス・ハウカンプ 「夢と希望のはじまり――1937年、国際的映画スター・原節子」(2015年12月21日)

2015年秋に訃報が報道された原節子さんを追想して、講演と映画上映会「原節子を想起する――戦前の映画から」が企画された。

講演はイリス・ハウカンプ講師(ロンドン大学SOAS,本学招へい教員)の「夢と希望のはじまり――1937年、国際的映画スター・原節子」。

講演のあと、原節子さんを国際スターにひきあげた『新しき土』(ドイツ語タイトル『侍の娘Die Tochter des Samurai』1937年)が上映された。
『新しき土』を博士論文であつかったイリス講師は、講演のなかで、戦後の小津安二郎作品への出演によって、原節子は世界でもっともよく知られた女優のひとりとなったが、原節子の銀幕デビューは1930年代半ばであること、何よりも話題の国際合作映画への出演によってスポットライトを浴びたことを指摘した。

さらに、原節子の映画スターとしての個性と国家プロジェクトとが意識的につくりだした構造をたどり、ナショナリズムがますます強くなっていく時期に、原節子が「最初の国際的映画スター」となることで、国家的なプロジェクトと国際的にアピールしようという国家の欲望とのあいだの相互作用について論じた。

そして結論として、映画スターとしての原節子は、近代、軍国主義、戦後民主主義、そして過去への追憶にとらわれている現在の日本といった、戦前・戦中・戦後の日本社会の劇的で多様な変化のいずれとも、親和的な関係をたやすく結んでいったこと、その魅力は、戦前の国家‐映画プロジェクトが創られたときにはじまったと論じた。

『新しき土』はドイツ人監督のファンク版と伊丹万作による日本語版の二種類がある。
現在流通しているのはファンク版だが、それがオリエンタリズムに満ちた「日本」表象であることから、これを批判して伊丹万作版がつくられた(ただし、伊丹版はめったに上映されていない)。

このように、『新しき土』は映画史上の興味深い論点を多く抱えている。

なお企画には府中市の近辺の方々を中心に100人を超える参加があった。
寄せられたアンケートでは、参加者は10代で国際スターとなった原節子の映像を十分に堪能されたようである。

なおこの企画は読売新聞でも事前にとりあげられ、当日はNHKの「クローズアップ現代」の取材班による取材も受けた。(友常勉)

写真 (PDFファイル)

ポスター (PDFファイル)

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