活動報告

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国際日本研究センター 社会言語部門主催講演会研究会報告「『紐帯』としての日本語~ 「日本」を離れた日本語」(2015年6月26日)

講演者:窪田暁氏(奈良県立大学専任講師)、高嶋朋子氏(東京外国語大学非常勤講師)
日時:2015年 6月26日(金)17:40-19:10
場所:東京外国語大学府中キャンパス 研究講義棟104室

JSPS科研費(B)23310176 「<紐帯としての日本語>」の研究成果を基に社会言語部門主催で公開研究会を開催した。

この講演会は科研の成果報告を兼ねたシリーズの4回目となるもので、二つの講演が行われた。

本学非常勤講師の高嶋朋子氏「引揚者の経験から見ることばの紐帯について―奄美出身台湾引揚者を対象に―」は、内地以上に「日本語(「」国語」)の推進が焦点化した外地に居住経験を持つ人々、具体的には奄美出身台湾引き揚げ者のことばをめぐる経験を調査したものである。

1930年代頃から1953年の日本復帰前後までの奄美においては、標準語による紐帯が強いられつつも、当時の地域社会を形成する人々を紐帯したシマグチということばの存在が大きかったこと、日本統治下の台湾における「標準語に近い言葉」による紐帯を経験した奄美出身台湾引揚若年層にとっては引き揚げ後にそのシマグチによる紐帯とどのように向き合うかが、戦後社会への参与に直接的につながっていったのではないかということなどが報告された。

奈良県立大学専任講師の窪田暁氏による「ドミニカ共和国における日系人の言語使用の実態について」はドミニカ共和国の日系人の言語使用や言語習得の実態を把握し、国内の2世・3世を含めた、移民にとっての言語の存在を故郷との紐帯という視点から考察したもので、ドミニカの日系人移民の言語使用、言語維持の実態について、言語能力、意識、継承の側面から明らかにしたものである。

その結果ドミニカ日系移民には日本語への強いこだわりがあり、特に1世にとっては日本語を故郷に重ね合わせ、日本語を維持することで日本とのつながりを維持しようとする傾向があることなどが報告された。

遅い時間の開催であったが、熱心な聴衆との意見交換が活発に行われた。
なお、今回まで計4回開催した同研究会の記録をブックレット5号として来月、刊行する予定である。
(坂本惠)

写真 (PDFファイル)

ポスター (PDFファイル)

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