活動報告

Activity Reports

センターの活動報告です

国際日本研究センター 比較日本文化部門・国際連携推進部門共催研究会(2015年 6月19日)

発表者:沼野恭子氏(東京外国語大学大学院 総合国際学研究院)
日時:2015年6月19日(土)17:40-19:10
場所:東京外国語大学府中キャンパス 管理事務棟2F 中会議室

本学大学院総合国際学研究院の沼野恭子氏を講師に、比較日本文化部門・国際連携推進部門共催の研究会を開催した。

講演は「物語はどのように作られるか―ボリス・ピリニャークと日本」というタイトルで行われた。

  ボリス・ピリニャーク(1894-1938)は、1920年代前半はソヴィエト文学界を牽引する作家であったが、その後、執筆した作品によって「反ソ的」として弾劾され処刑された人物である。

沼野氏はピリニャークの過去に書かれたものを組み合わせるコラージュ等、斬新なポストモダン的手法について言及し、また革命後の生命力のあらわれとしての本能や性への関心という潮流を体現する作家として、ロシア文学史に位置づける。このボリス・ピリニャークは現代日本において必ずしも知名度が高いとはいえないが、1920年代には日本語訳の作品も多数あり、1926年と1932年の二度に渡って来日しているという。

沼野氏は日本来訪に関わるピリニャークの短編「物語がどのように作られているかという物語」(1926年)と『日本印象記』(1929年)を取りあげ、彼の日本の私小説へのあり方や文壇への拒否感、「東洋」(東)への距離感を説得的、魅力的に読み解いていく。

また来日中の秋田雨雀、小山内薫、田山花袋、谷崎純一郎、米川正夫らとの交流や、近年の海外の研究者によるピリニャークへの着目の紹介なども大変興味深かった。

1920年代は日本社会も「現代社会への転形期」といわれる時代であり、同時代性といったものを考えさせられた刺激的かつ示唆に富む講演であった。

当日は学外からの研究者やロシアからの留学生も参加し、講演後は熱心な質疑応答が交わされた。
(野本京子)

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ポスター (PDFファイル)

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