活動報告

Activity Reports

センターの活動報告です

パレスチナで何が起きているか――ガザ51日間戦争と〈イスラーム報道〉 2014年12月16日

講演者:岡 真理 氏(京都大学大学院人間・環境学研究科 教授)
日時:2014年12月16日
場所:研究講義棟2階226室
    

昨年7月から8月にかけての「ガザ51日間戦争」で、イスラエルはパレスチナのガザ地区に対してTNT火薬にして推定20キロトンの爆弾を使用した。

広島型原爆が推定18キロトンであることを考えれば、空前の破壊と殺戮がおこなわれたといえる。岡真理さんはこの「ガザ51日間戦争」について、その破壊と殺戮の規模、死者数(パレスチナ側の死者2158人、うち民間人1460人)、イスラエル側73人(イスラエル国防軍66人、民間人7人)、攻撃対象が国連施設・病院・人口密集地域・民間人であったことなどの事実から、その輪郭を描いたあと、「日本のマスメディアは出来事をいかに〈カヴァー〉したか」という観点から、次の点を指摘した。

すなわち

1)出来事の発端
2)戦争はいつ始まったのか
3)エジプト提案の無条件停戦案についての報道ぶり
4 「人間の楯」をめぐるハマース非難に偏した報道、

などの争点である。

それはさらに次の点から詳しく説明された。すなわち、日本のマスメディアがイスラームを〈カヴァー〉する振る舞いにおける、

①「占領」という歴史的文脈の捨象、
②出来事の発端である、イスラエル人3少年の誘拐・殺害の強調(イスラエルの占領継続の企図の隠ぺい)、
③報道されない封鎖の暴力の存在、
④イスラエルにおけるレイシズムについての報道の欠如、
⑤日本と国際社会は何をなすべきか、

である。こうした争点について、映像資料もふんだんに紹介しながら、岡さんは日本のマスメディアによる〈イスラーム〉の"隠蔽と支配"を厳しく問いただした。

日本と国際社会はイスラエルによるジェノサイドや戦争犯罪についての不処罰を繰り返している。しかも日本政府は昨年5月に「日本、イスラエル包括的パートナーシップ協定」を結んでいる。そして、こうした日本政府と日本社会の態度の根底には、植民地主義に対する認識の欠如があると指摘した。

パレスチナの現実と、〈イスラーム報道〉と現代日本とのつながりを明晰に論じた講演であった。参加者は本学の学生を中心に50名余り。講演もその後の討論も、予定の時間を大幅に上回るほど、充実した、そして白熱した時間であった。(友常勉)

写真 (PDFファイル)

ポスター (PDFファイル)

 English page