活動報告

Activity Reports

センターの活動報告です

社会言語部門主催・公開研究会「紐帯としての日本語~『日本』を離れた日本語」

日時:2014年 7月 3日
発表者:降幡正志氏(東京外国語大学)
    河路由佳氏(東京外国語大学)
場所:研究講義棟103教室


7月3日に社会言語部門の主催で「紐帯としての日本語~『日本』を離れた日本語」公開研究会を開いた。昨年度まで三年間、国際日本研究センターの教員が中心となって進めてきた科研プロジェクト『<紐帯としての日本語>日本人社会、日系コミュニティ、「日本語人」』(基盤(B)23310176 研究代表者:野本京子センター長)の研究成果を報告することも目的としている。

一人目の報告者は降幡正志氏で、「インドネシアの新興産業都市における日本語・日本コミュニティ-首都ジャカルタ近郊チカラン市のケース」というタイトルで発表された。日系企業が数多く進出する産業団地で、日系企業への就職を目指して日本語教室に通う人々とその教室での様々な実践が詳しく報告された。

チカランの日本語教室「AYUMI」は、本学卒業生の設立したもので、開設当初は日本語を教える「普通の」語学学校だったが、企業風土にあわせたビジネスマナーなどを教えるようになり、就職に有利なスキルを身につけることを学校の特徴としている。
日本企業の求める人材像と現地の人々の求めるものに精通して初めて用意できるものであろう。

二人目の報告は、河路由佳氏による『現代パラオにおける日本語-人々による日本語使用とその学習の諸相』であった。パラオはかつて日本統治を経験し、現代パラオ語の中には多くの日本語由来の語彙が含まれていることでも知られているが、いまも日本人に人気の観光地でもあり、日本との縁は浅からぬ国である。

統治時代を経験した人々の、それを伝え聞いた継承言語としての、そして観光産業に従事する人々のもの、と様々な日本語の獲得と使用の事例が伝えられたが、中でも観光業に関わる人々の話し言葉に特化した日本語の獲得は印象的であった。

今回の報告は現地日本語社会の中でも「学習」や「獲得」に焦点が当てられたが、それぞれのニーズに合わせた目標や方法が見られ日本語教育研究はそれらバラエティに柔軟に対応する「謙虚さ」が必要だと考えさせられた。
(前田達朗)

公開研究会 写真 (PDFファイル)

公開研究会 ポスター (PDFファイル)

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