活動報告

Activity Reports

センターの活動報告です

国際シンポジウム「曲亭馬琴をめぐる三つの提題─白話文学・演劇的表象・ベトナム文学」(2011年12月15日)

報告者・報告タイトル:
神田正行氏(明治大学)
「化政天保期の「江戸作者」馬琴」
クリスチャン・ベーリン氏(ロンドン大学SOAS博士課程修了、大阪大学産学連携助教)
「寛政・享和期に於けるジャンル開発と馬琴の役割─ドラマ性と演劇性をめぐって」
川口健一氏(本学)
「馬琴と阮攸─二つの作品をめぐって─」

12月15日(木)、本部管理棟2階中会議室で、比較日本文化部門+国際連携推進部門共催によって表記の国際シンポジウムが開催された。

神田氏は、馬琴が『南総里見八犬伝』を書くにあたって、中国白話小説である『八仙伝』をモチーフにしたと主張してきた先行研究に対する文献学的で根本的な批判・検討を展開された。ベーリン氏は、馬琴の作品群が、版元の要請・演劇的表象への挑戦・そして普遍的なドラマ性にもとづいていかに変遷してきたかという野心的な読みを示された。そして川口氏は、明末・清初の『金雲翹伝』の翻案にみる馬琴とベトナムの阮攸(げんゆう)との比較文学的考察を示された。神田氏の文献学研究の徹底による論証と、豊富な黄表紙を用いたベーリン氏の表象分析という、対照的な方法論。そして、国際的な文学研究を視野においた川口氏の問題提起。いずれも手堅い方法にもとづきながら、文学研究のエッジを横断する刺激的な報告であった。馬琴の文学的営為は長大かつ膨大であるが、ポイントを得た三者の報告によって、俗説・通説とは異なる馬琴像がうかびあがったといえよう。さらに討議では、八犬伝と水滸伝との関連、山東京伝と馬琴との交錯、そして稗史小説をめぐる歴史と文学との関わり、翻案という営為が持つ意匠など多岐にわたる論点をめぐって意見が交換された。参加者は15名と少なかったのが残念であったが、国際文学研究のスリルと醍醐味に満ちたシンポジウムであった。(比較日本文化部門+国際連携推進部門)

研究会の 写真 (PDFファイル)

研究会の ポスター (PDFファイル)

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