ウズベキスタン民族誌映画『神授の花:フェルガナの女性とイスラーム』を上映、トーク・セッションを実施

2023.08.01

2023年7月22日(土)、アゴラ・グローバル プロメテウス・ホールにおいて、TUFS Cinemaウズベキスタン民族誌映画『神授の花:フェルガナの女性とイスラーム』上映会を開催しました。

本作品は、ウズベキスタン共和国フェルガナ州の一村における、神授の花(ハナズオウの一種)と呼ばれる樹木の開花を祝う春の祭礼の模様を記録した映像人類学作品です。

本編上映後には、本作の制作リーダーで中部大学人文学部の和崎聖日准教授による「基層文化としてのゾロアスター教」と題する講演、出張先のカザフスタンからZoomで参加した、本作制作者の1人でウズベキスタン科学アカデミー歴史研究所民族誌学・人類学センター長のアドハム・アシーロフ教授による「中央アジアにおけるイスラーム教と自然信仰の混淆」と題する講演、本作の脚本・翻訳に携わった本学の木村暁准教授による「ハナズオウの神授の花たるゆえん:子音置換と奇蹟譚と」と題する講演、そして、中東地域をフィールドとする人類学者で、民衆イスラーム論の第一人者である上智大学総合グローバル学部の赤堀雅幸教授による「神と聖者と男と女:イスラーム聖者崇敬の支え手」と題する講演が行われました。このうち、アシーロフ教授の講演はウズベク語で行われ、和崎准教授が日本語に逐次通訳しました。

講演後の質疑応答では、神授の花の儀礼にみる自然信仰、ゾロアスター教、イスラーム教の諸要素の混淆、当該儀礼の地域性、儀礼でふるまわれる食事の意味、儀礼において女性の果たす役割、儀礼において使用される言語(ウズベク語、タジク語、アラビア語)、聖者崇敬や聖者廟参詣の様態と性格、儀礼と政治とのかかわり、神授の花の呼称の原義やハナズオウの宗教的意味などが取り上げられ、4名の登壇者がそれぞれの問題に詳しい解説を加えました。こうした活発な質疑応答は来場者の関心の高さをうかがわせるとともに、本上映会が世界諸地域の社会・文化への理解を深めるというTUFS Cinemaの目的にかなう機会になったことを物語るといえます。赤堀教授からは、中央アジアを含むイスラーム地域を対象とする映像人類学が、将来性と魅力にあふれた開拓途上の学問分野として、若手研究者の参入を待っているとの指摘もなされました。

本上映会は、本学の中央アジア専攻や他専攻の学生たちの協力と200名を超える多数の来場者の参加のもと、盛会のうちに全日程を終了しました。

和崎聖日氏講演
アドハム・アシーロフ氏講演
木村暁准教授講演
赤堀雅幸氏講演
Q_Aセッションその1
Q_Aセッションその2
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