ご卒業おめでとうございます!

2020.03.25

林佳世子学長からのお祝いメッセージ

ご卒業、ご修了、本当におめでとうございます。心からお喜び申し上げます。

この度は、予期せぬ新型コロナ・ウイルス感染拡大を受け、皆さんの卒業式・修了式を本学で行うことができませんでした。本当に残念でなりません。本来であれば、仲間とともに、先生方や後輩たちに見送られ、晴れの日が祝われるはずでした。例年になく早い満開の桜の下での明るい卒業式・修了式だっただろうと思うと、一層心残りです。

しかし、このようなときだからこそ、私たち大学関係者一同から皆さんへ、その門出を祝う気持ちはひとしおです。皆さん一人一人が笑顔でこの日を迎え、さらにこの先長く、皆さんの笑顔が続いていくことを心から願ってやみません。

学生たちをこれまで支えてこられたご家族の皆さまにも、心からお喜びを申し上げます。卒業式・修了式の日に本学でお目にかかり、卒業・修了をご一緒に祝うことができなかったことは本当に残念ですが、本学での学びを終え、社会に旅立つ学生たちの姿を、ともに見守っていただければと願っております。

さて、上に「予期せぬ」と書きましたが、こうした事態を、私たちは本当に予期できなかったか、という点はやがて、問われていくことでしょう。日本や世界で多くの人が罹患し、人命を失われている事態を前に、あの時、こうしておけば、、、と思うことはつらいことですが、それは避けては通れません。「予期せぬ」「想定外」という言葉からは、昨年の台風被害も連想されます。さらには、もちろん、9年前の東日本大震災と原発事故のことが、苦い記憶とともに思い起こされます。「予期」や「想定」のための努力は、当然、国や組織が責任をもって行うべきことですが、その一方で、こうした事態に接するなかでは、国や組織を超えて、一人一人の個人が、必要な知識をもち、責任をもって判断し、行動することの重要性も痛感されます。

現時点では終焉のシナリオの見えない新型コロナ・ウイルス感染ですが、ここまでの展開は象徴的です。もの、人、情報がグローバルに行き来する時代がこの拡大を生んだことが確かな一方、それへの対応では、あくまで国単位での解決が「想定」され、それぞれの国の市民を守ろうとする力が強力に働いています。しかし、すでに境界が曖昧になりつつあった「国」という単位のなかで、「市民」とは誰なのかは、もはや明確ではありません。

こうした混乱の中で、真に問われるのは、人間一人一人が持つ力、たとえば問題を多角的にとらえる想像力と、確かな判断力です。想像力と判断力の質は、いかに多様で確かな知識を持つかによって決まります。皆さんは、本学で、世界の多様性・複雑さと、その一方で、そこに生きる人々が同じ人間であるという当然のことを学びました。私たちは、皆さんが、こうした知識を支えに、新しい時代に生きていく逞しさとしたたかさを、身に着けて下さったものと確信しています。

どうか、一人の人間として、社会の中でしっかり立ち、自分を信じ、自分の道を生きてください。母校は、いつも皆さんを応援しています。

2020年3月25日

東京外国語大学長 林佳世子

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