9月卒業式・学位記授与式挙行

2018.09.27

2018年9月27日(木)、2018(平成30)年度9月卒業式・学位記授与式が行われ、学部学生28名(言語文化学部13名、国際社会学部15名)、大学院総合国際学研究科博士前期課程17名、博士後期課程(2018年4月~9月)14名の計59名が卒業・修了しました。

立石博高学長式辞

 今日、本学をご卒業・修了される皆さん、日本人学生と留学生の皆さんに、学長として東京外国語大学を代表し、心からお祝い申し上げます。社会人として広く世界に巣立っていく皆さん、また、さらなる学究の意欲に燃えて進学される皆さん、それぞれの皆さんの新たな門出にあたり、贐(はなむけ)の言葉を述べさせていただきます。

 今日、言語文化学部あるいは国際社会学部を卒業される皆さんのなかには、海外留学などのために留年されたかたもおられると思いますが、4年半で卒業されるかたは、2014年4月に入学されています。その入学式で、私が皆さんにお話ししたことを覚えていらっしゃるでしょうか。

 この入学式式辞のなかで私は、本学の英語名称が、《Tokyo University of Foreign Languages》ではなくて、《Tokyo University of Foreign Studies》であることを心にとめておいていただきたいとお願いしました。そして、21世紀グローバル社会の諸課題に応えるために「外国研究Foreign Studies」にいそしんで、人文学、社会科学、自然科学、応用科学の諸学問領域を横断する「総合知global knowledge」を身につけていただきたいと力説しました。というのも、グローバル社会ではローカル(地域社会)とグローバル(地球社会)の課題が密接に絡みあっており、総合的かつ地球俯瞰的な視野をもつことが不可欠であるからです。

皆さんが、本学での日々の学びを通して、卓越した言語運用能力とコミュニケーション力を身につけられ、現代社会のさまざまに錯綜する複雑な仕組みを分析し、物事を的確に判断する力をもっていると、それぞれに自負されることを願ってやみません。今日から社会に巣立つ皆さんが、「総合知global knowledge」を駆使されて、地球社会のさまざまな課題に果敢に取り組む、地球市民Global Citizenとして活躍されることを心より期待します。

 さて私は、地球市民という言葉を申しましたが、端的に言ってそのための要件は、今からおよそ70年前に国際連合総会で宣言されていると言えます。つまり1948年12月10日、総会決議として「世界人権宣言Universal Declaration of Human Rights」が採択され、人権宣言の全30条は、すべての国のすべての人が享受すべき基本的な市民的、文化的、経済的、政治的、そして社会的権利として規定されたのです。当然のことですが、地球市民Global Citizenとして活躍しようとする人びとは、この世界人権宣言の内容を熟知しなければなりません。

 さいわいに詩人の谷川俊太郎氏が平易な日本語に訳されていますので、ここでいくつかの条文を紹介したいと思います。

 第1条 みんな仲間だ

 わたしたちはみな、生まれながらにして自由です。ひとりひとりがかけがえのない人間であり、その値打ちも同じです。だからたがいによく考え、助けあわねばなりません。

 第2条 差別はいやだ

 わたしたちはみな、意見の違いや、生まれ、男、女、宗教、人種、ことば、皮膚の色の違いによって差別されるべきではありません。また、どんな国に生きていようと、その権利にかわりはありません。

 第19条 言いたい、知りたい、伝えたい

 わたしたちは、自由に意見を言う権利があります。だれもその邪魔をすることはできません。人はみな、国をこえて、本、新聞、ラジオ、テレビなどを通じて、情報や意見を交換することができます。

 第25条 幸せな生活

 だれにでも、家族といっしょに健康で幸せな生活を送る権利があります。病気になったり、年をとったり、働き手が死んだりして、生活できなくなった時には、国に助けをもとめることができます。母と子はとくに大切にされなければなりません。

 第30条 権利を奪う「権利」はない

 この宣言でうたわれている自由と権利は、ほかの人の自由と権利をこわすために使ってはなりません。どんな国にも、集団にも、人にも、そのような権利はないのです。

 本学の本部管理棟や研究講義棟のエントランスには、この世界人権宣言第1条冒頭を本学で専攻語として提供する世界の27言語で述べた垂れ幕を大きく掲げています。なぜそのようなことをしているかの理由を、ぜひ皆さんと共有したいと思います。毎年12月10日は「世界人権の日」とされていて、日本でも、この日に先だつ1週間は人権週間となっていますが、地球市民Global Citizenとして、世界の各地で活躍されようとする皆さんには、この世界人権宣言を人権パスポートPassport for Human Rightsとしてつねに携えてもらいたいと思います。そして、いまはまだ人類の夢であるこの人権宣言の実質化に向けて、果敢に挑んでいただきたいと願っています。

 最後に一つお願いがあります。本学のOB・OG組織である東京外語会の活動に加わっていただきたいということです。東京外語会は、「東京外国語大学と連携し、外語大ブランドをともに高めていく」同窓会組織です。国立大学法人を取り巻く環境には、たいへんに厳しいものがあります。今日卒業される皆さんにも、皆さんの先輩方とともに本学にとってのステークホルダーとして本学の発展のためにご協力とご支援をお願いしたいと思います。

以上、皆さんのご活躍を祈念して、学長の式辞とさせていただきます。

2018年9月27日   国立大学法人東京外国語大学長 立石博高

学位記授与
Peace and Conflict Studiesコース修了生と担当教員ら
立石学長式辞
吉田学部長祝辞
青山研究科長祝辞
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