この度、MIRAI生の小林美奈さんが、以下のとおり研究成果を発表しました!

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発表日:
 2023/06/11

区分:
 口頭発表

発表した学会:
 第23回日本抗加齢医学会総会・日本抗加齢医学会プログラム・抄録集

題目名:
 中国人高齢者患者の在宅酸素療法から見えた日本における外国人患者との医療コミュニケーション

概要:
 【目的】在住外国人の増加につれ外国人の高齢者患者も増えている。超高齢化が進む中、日本の在宅医療は、外国人患者との医療コミュニケーションが重要な課題になっている。本研究は、在宅酸素療法を受けている在住中国人高齢者患者を対象に、外国人患者との医療コミュニケーションについて調査を行い、その問題点及び影響要因を明らかにする。
 【方法】医師、看護師、酸素供給業者、介護士、患者とその家族など多くの人が関わる在宅酸素療法について、事例研究、インタビュー調査などを実施した。事例研究では参与観察の事例で、在宅酸素療法の患者で在住中国人高齢者4人と日本人高齢者2人の事例を用いた。インタビュー調査では事例研究の後に気付いた問題点に対して、関連分野の医療関係者6人を対象に、半構造インタビュー調査を行った。なお、本研究の目的と内容を対象者へ事前に口頭で説明し同意を得ており、参加者を匿名化し第三者に特定されないこととする。
 【結果】①日本語を話せない中国人高齢者患者(3人/4人中)の在宅酸素療法は医療コミュニケーションができていない状況で治療が行われている。②日本人高齢者患者(2人/2人中)が積極的に治療に取り込むに対して、中国人高齢者患者(3人/4人中)は治療に不理解、不協力。③中国人高齢者患者(4人/4人中)は自分のかつて中国での経験で日本での治療を判断している。④医療従事者(3人/6人中)は意思疎通がうまくいかない中国人高齢者患者からハラスメントをうけている。
 【結論】外国人患者との医療コミュニケーションは、その影響要因が様々であり、患者自身の文化背景及び医療背景に影響されることは明らかである。この医療コミュニケーションの問題は、患者自身の治療過程及び患者のQOL に影響するとともに、医療従事者にも精神的なリスクをもたらし、医療全般にもマイナスな影響を与えている。日本における外国人患者との医療コミュニケーションは、超高齢化社会に対応するための地域医療・地域包括ケアシステムの推進においても改善すべき課題である。

発表内容を研究しようと思った動機など:
 日本の在宅医療の現場で起きた外国人患者との医療コミュニケーションの問題は、わかりにくい、研究の作席が少ない、報告も少ない。この問題は外国人患者の健康維持と医療従事者のメンタルケア、日本の医療体制にかかわる重要な課題だと考え、博論の中心テーマとしている。今回、東京外国語大学の世界言語社会専攻の地域研究の成果をあえて医学会で発表する試みをした。医療従事者からも関心を寄せられ、注目をいただいた。