TReNDセンター(※1)が主催する『社会の中のAI研究会**』**(※2)では、

12/13(15:00-16:30)に、西垣通東大名誉教授をお招きし講演会を開催します!!

TReNDセンターでは本講演会に向けて、博士後期課程学生を中心にした勉強会(読書会)を発足しました(※3)。

10/5に第1回会合を、5名の博士後期課程学生+1名の教員で開催しました。

第2回は10月中旬に開催します。参加希望者はMIRAI推進室まで!!

第1回報告

①話題提供

【この会で深堀しておきたいことの提案】

  • 『新 基礎情報学 ―機械をこえる生命』(2021年、NTT出版)が参考文献か?
  • 情報と人間(生命・主観)をどう捉えられうるのか?
  • 人文系の研究では、情報や意味はどのような問題として共有されているのか?
  • 生物と無生物を分けるもの:心の自律性・意味づけの主体でありうるか
  • 西垣先生の問題意識から、人文系研究の中で語られていない「問い」はあるのか?
  • 情報技術の発展の中で捉えている情報と、人文学で考える対象とする情報との差異は、それぞれの研究分野の発展に貢献することができるのか?

【講演会を企画したきっかけ】

  • MIRAI生の長谷川さんより西垣先生をお呼びしては?と提案があった。長谷川さんはTReND センターの研究者としてスタッフと共に企画に参加。
  • AIの研究トピックに外大の研究シーズを絡めると、アカデミアどころかより広い世界とつながることができると思った。
  • 四大学連合ポストコロナ社会コンソーシアム「AI、フェイクニュース、情報があふれる社会」に参加し、情報技術の上にフェイクという意味を乗せていることに注目した。AI・情報処理という技術の枠組みに、人社系の考える情報・意味を掛け合わせていくと面白いかもと感じた。
  • 西垣通名誉教授:日本で一番早く人工知能の研究に着手した研究者、1980年代の後半には、日本でいち早くAIがもたらす効果を論じた本研究分野の第一人者。
  • 西垣先生の講演会までに、参加者各自が、自分の専門的視点から面白い深掘りのポイントを見つけられるように、勉強会も同時に開催することとした。

②ディスカッションで出た意見:AIについてどういう観点が面白い?

  • 一番身近なAIは機械翻訳。使う前は、機械に翻訳はできないだろうと思っていたが、使い方次第であり、下案作りにはAI機械翻訳がとても便利だった。
  • SFはAIが量産された世界を描いている。人間とAIの対立場面を見ても、人間ではなくむしろAIの方に感情移入をすることがある。人間の感情は、対象が人間かAIかという観点では語れないと思った。
  • AI自身に意味は乗らないと考えられているが、AIとの関係性の中でも人間は意味を感じてしまう。
  • 人間同志は意思疎通ができていると思っているが、人間同士でも意思疎通ができていないシチュエーションはある。人間の理解には解釈の余地があり、片方の人間がまったく相手を理解していない場合でも、もう片方の人が反応を柔軟に解釈をすることで、その関係が成立してしまう。
  • 人間の意味理解も、絶対的な意味が存在しているわけではない。観察者が二人の関係性の中の観測結果を見ているので、関係性の数だけ意味は生じうる。
  • 例えば、アートの価値は「物」にあるのか?実は作品の背後にあるもの(作者など)にアートの意味を見出しているようにも思える。その場合、AIの作るアートには価値があるのか?
  • 医療の現場では、AIは人間のツールにすぎない存在。そのため事故が起こるとその法的な責任はメーカーと使用者である人間にあり、人間は技術の進歩を目指す。
  • AIをツールとして利用する場合、AIを人間が支配している構図に見えるが、AIが出す回答に人間の行動が従い続けることで、逆に人間がAIに支配されているという見方もできる。
  • 技術の進歩に対する研究者の責任の問題がある。AIの便利さを追求して技術開発が進んだ結果、自立型兵器を作りうる技術が生み出されてしまうことはとても難しい問題だ。
  • ここまでの議論をまとめると、AIを考える視点としては「技術の発展」、「AIをツールとして取り込む世界の中で安心できる社会制度の構築」、「AIが社会の新たな局面に参加してくることで見えてくる人間性の考察」というアプローチが考えられる。
  • 従来から、「生命があるものは尊い」という価値感がある。今後、人間とAIの関係が深まり位置付けが変化する中で、人間との関係が発展し「生命があるものは尊い」が変化することがありうるのか?
  • 人間性は知性にある。医療技術などの知性は、目的に対する最適解の対応関係が存在する知性であり、人工知能はその中で発展してきた。ただし全ての知性はそのような対応関係の構図が成り立つものではなく、あくまでも人工知能は知性一般の部分集合。人工知能だけが突き抜けていくなかで人間の他の知性はどう追いついていくのか?

(※1)TReNDセンター(学際研究共創センターの通称)

外大の研究と社会をつなぐ枠割を担いたいという願いの下に設立されたセンター。

様々な社会課題を取り扱う分野横断的なテーマを取り扱い、「特定の研究分野や所属を超えた研究者の交流」を生み出す活動をしています。

(※2)『社会の中のAI研究会』では、「AI」や「情報」をキーワードに「人間や社会に生まれる意味・価値」といった概念を再考していく連続講演会シリーズを開催します。

(※3)TReNDセンター勉強会

  • 今の自分の専門研究分野の中での議論の枠に縛られない自由な探究・研究活動をしてみたい研究者が集う場
  • 研究活動を、自分の興味や関心を、今の研究フィールドの外に発信するための場所を探している研究者のベースになる場
  • 相互に繋がり新しい研究活動を創発させることに関心がある人たちとのつながりを作りたい研究者の交流の場