11月11日に、今年度第7回(秋学期第1回目)のゼミが開催されました。

今回のゼミは、Aグループの吉武さん・小林さんの進行で、以下の2つの議題が取り上げられました。

【議題】

① 市民の知とは何か ? 逆にアカデミアの知とは何なのか ? (何のためにあるのか ?)

② 研究者は自分の研究を金銭的利益に繋げなければならないのか ? 頻繁に言われる「研究の社会への還元」とは何なのか ?

上記の議題の背景として、この数ヶ月の間に、「研究と社会との接点」について考えさせられるような講演会が開催されていたことがありました。

1つは、9月に開催された宮野公樹先生(京都大学)のご講演。

「専門領域を超える問いの立て方」と題する講演でした。

宮野先生のご講演のポイントとして、Aグループの二人は以下の2点を挙げています。

  • 本来あるべき「学際」はそれぞれの分野 (=村) が境を超えて交流することではない。
  • どの分野も目指しているところはほぼ同じであり、出発点が異なるだけである。

もう1つは、11月(このゼミの前週)に開催された松山桃世先生(東京大学)のご講演。

「サイエンスコミュニケーションの意味・価値を考える」と題して、ご自身が開発された「ひみつの研究道具箱カードゲーム」のご紹介も交えながら、お話くださいました。

Aグループの二人は、松山先生のご講演のポイントについて、以下のように述べています。

  • 市民は科学・技術を「自分事」として認識する必要がある。
  • 多様な市民との対話の場を設ける必要がある。
  • 「市民の知」の具体化が研究現場でのイノベーションに繋がる。
  • 現状では研究と社会との繋がりは企業との繋がりに限定されており、金銭的利益 (商品化) への落とし込みに重きが置かれている。
  • 人文科学の役割は、技術が実装されたときに生じる問題を予測・解決することである。
  • 研究者の自己満足は悪いことなのか ?

ゼミでは、吉武さん・小林さんから、上記2つの講演会について短く紹介があった後、最初に掲げた2つの議題について、MIRAI生全員を巻き込んだディスカッションが繰り広げられました。

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以下、Aグループの振り返りコメントです。

本学の mirai や TReNDセンター の他にも「学際」や「共創」の問題を取り扱っている人たちや組織があり、9月ならびに11月に行われた外部組織の講師による二つの講演を通して、研究・学際の意味について再考した。ディスカッションにて出てきた各人の意見を基に、上記二つの議題に対する回答を一通り提示するならば、①「アカデミアの知は市民の知やデマを是正するファクトチェックの役割を有する」と言え、②「アーカイブ機能に代表される長期的な目線で研究の効果を待ち続ける必要がある」と言える。二つ目の議題は "ナンセンス" な質問であるが、ナンセンスな問題であるからこそ mirai の場で投げかけるに値する問題であると思った。(吉武)

「市民の知」と「アカデミアの知」を対立概念として扱うと、研究者はあたかも市民の外にいる存在かのようになってしまうという問題がある。今回のMIRAIゼミで指摘されたことは、まさにその矛盾をつくものだと思う。しかし、市民は研究やアカデミアの世界を身近に感じておらず、「自分たちとは別の世界」かのように捉えられてしまっていることが無いとは言えない。研究の出発点が身近な問題からであることは多いし、個人的にはむしろそうあるべきだと思うのだが、実際にはそれが伝わっていないということだろう。アカデミアと社会との接合面という観点ではその出発点を共有するのが良いアプローチだと思うが、これらについての検討は今後のMIRAIゼミで重ねていきたい。(小林)